goo blog サービス終了のお知らせ 

MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

#2793 で、アベノミクスは結局失敗だったのか?

2025年04月07日 | 社会・経済

 第45回衆院選で民主旋風を受けた野党第一党の民主党が圧勝し、初めて非自民を中心とする民主党政権(鳩山由紀夫内閣)が誕生したのは2009年(平成21年)のこと。しかしそのおおむね2年後、東日本大震災などの混乱を経て2012に野田佳彦内閣が倒れ、首相に返り咲いた安倍晋三氏の下で第2次安倍政権がスタートしました。

 そして、そのタイミングでアウトライン示された一連の経済政策が、広く知られるようになった「アベノミクス」というもの。(最終的に)2013年にまとめられた「日本再興戦略」で全体像が示されたアベノミクスは、①大胆な金融政策、②機動的な財政出動、③民間投資を喚起する(規制緩和などの)成長戦略の三つを(いわゆる)「三本の矢」として、経済成長を目指すという内容です。

 日銀と連携し大胆な緩和策をとった金融政策を中心にデフレ脱却を目指したそのスタンスは、安倍氏のやや強引ともとれる政治スタイルと相まって評価が分かれるところですが、(良くも悪くも)平成ニッポンを語るうえで避けては通れない大きなインパクトを残したのも事実です。

 混迷する世界経済の中で、日本経済の(唯一ともいうべき)拠り所となったアベノミクスとは一体何だったのか? 3月6日のネット金融メディア「Finasee」に、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が『「アベノミクスで非正規ばかりが増えた」は本当か? 批判する人が見落としている二つのデータ』と題する一文を寄せているので、今回はその中における指摘を少し追ってみたいと思います。

 バブル崩壊後の日本政府や日銀の対応が後手に回り、結果、円高デフレが放置され不況を長引かせたことが10年以上の長きに亘る「失われた時代」を生み出した。歴史に「IF(イフ)」はないが、この時期に(リーマン・ショック時にアメリカが打ち出したような)大規模な金融緩和や財政政策が行なわれていれば、日本は長いデフレに突入することはなく、「就職氷河期世代」も生まれなかったのではと考えると残念でならないと永濱氏はこの論考に綴っています。

 こうした長いデフレから脱するために打ち出されたのが、2012年に発足した安倍晋三内閣の下での経済政策「アベノミクス」。アベノミクスは、「①大胆な金融緩和」「②機動的な財政政策」「③民間投資を促す成長戦略」という三本の矢で構成され、異常な状態にあった日本経済を正常化すべく、景気回復と雇用の創出を目的としていたと氏は話しています。

 氏によれば、日本が苦しんでいた長期のデフレは、バブル崩壊後の需要の大きな落ち込みによって生じた「需給ギャップ」に起因していたとのこと。企業の生産設備や労働力、技術力をフル稼働した際に生み出される経済の供給能力と、実際の需要との間の乖離によるものだったということです。

 そこでアベノミクスが目指したのは、このように足りない需要を、金融・財政政策を中心にしてつくり出し、需給ギャップを埋めることで景気を回復させ、物価を緩やかに上昇させようというもの。結果的には金融政策が中心となったが、当初は財政政策も加えて効果を高めるというのがアベノミクスの考え方だったと氏は説明しています。

 第一の矢の「大胆な金融緩和」は、それまで日銀が「1%を目途」としていた物価安定目標に代わって「2%のインフレ目標」を掲げ、「極端な円高・株安の是正」を進めるものだった。第二の矢の「機動的な財政政策」は、公共事業や減税などにより経済活動を活性化させようというもの。そして、第三の矢の「民間投資を促す成長戦略」は、端的に言えば日本のビジネス環境を整え投資をうながすものだったということです。

 この「三本の矢」に関しては、私(←永濱氏)自身は(当時の政府は)やれることはそれなりにやったと見ているとのこと。しかし、第二の矢は早すぎる消費増税で引き締め過ぎたことで失敗、第三の矢は進められるところは進んだものの、十分ではなかったというのが氏の指摘するところです。

 アベノミクスに関しては、評価をする人がいる一方で、批判的な見方をする人も(それなりに)多い。しかし実体経済を見ると、極端な円高・株安が是正されたことで輸出は増加したし、国内の設備投資も増加。雇用の増加にも大きな効果が出ていると氏は一定の評価をしています。極端な円高・株安の是正で内外の需要が増え、製造業や建設業を中心に雇用が増加した。アベノミクス以降、雇用の増加は顕著となり、正社員の数も増加し、賃金も上昇しているということです。

 アベノミクスに批判的な立場の人からは、「雇用が増えたといっても非正規ばかり。全然恩恵などなかった」といった声も聞かれるが、データを見ればそれが間違いであることがわかる。実際に正社員の推移を見ると、最初は女性の正社員が増えて、次に男性も増え始めていると氏は指摘しています。

 賃金に関しても、アメリカなどで使われる時間当たりの賃金で見ると、アベノミクス後に上がっていることが分かる。アベノミクスによって正社員が増加し、(トータルでは)求人倍率なども上り賃金も上昇したわけだが、(しかし中には)十分に恩恵を受けることができなかった人もいるというのが本当のところだろうということです。

 確かに、少しばかり経済データが上向いても、(就職氷河期世代など)苦しんでいる人が幸せにならなければ意味がありません。氷河期世代の非正規で働いていた人たちはそもそも賃金が低いため、たとえ多少賃金が上がったとしても、その金額は決して十分ではなかったはず。アベノミクスによって求人倍率自体は全都道府県で1.0を超えたものの、地方にいる就職氷河期世代にとっては都会に暮らす人ほどの波及効果はなかったかもしれないと氏は最後に話しています。

 人手不足が深刻化する中、新卒採用の増加や初任給アップといった、若い世代への追い風が強まっている。政策的には、この令和日本で50台を迎えた氷河期世代の将来不安を解決するためにも、さらなる経済の活性化と彼らへの支援策の充実が必要になってくるのではないかと話す永濱氏の指摘を私も興味深く読んだところです。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。