MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2420 最優先のインフラ投資とは

2023年06月06日 | 社会・経済

 地球温暖化がこの日本でも多くの人々の口の端に上る中、今年のゴールデン・ウィークも最高気温30度を超す真夏の陽気が続きました。日差しの下に30分もいれば汗だくとなる状況に、目についたコンビニに飛び込んで(エアコンの風に当たり)ひと心地着いた人も多かったのではないでしょうか。

 そこで手に取られるのは、冷蔵棚に並ぶ冷たく冷えたプラスティック製のボトルに入った飲料水。自然志向の高まりもあって、近年ではコーヒーや炭酸飲料よりも、無添加のボトル水を求める人が増えているという話も聞きます。

 一口にボトル水と言っても、棚には様々なブランドのミネラルウォーターが並んでいます。見た目からはよくわかりませんが、そこにはミネラルを多く含む地下水からの「ナチュラルミネラルウォーター」や、地下水や氷河の水などに殺菌など最低限の処理をした「ナチュラルウォーター」など、いくつかの種類もあるようです。

 先日、サバイバル系のテレビドラマ(TBS『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』)を見るともなく見ていたらと、主人公の一人が「人は何も食べなくても3週間程度は生きていられるが、水がなければ3日くらいしか持たない」と話していました。

 調べてみると、(実際)人間は体内の水分の10%を失うと筋肉のけいれんや腎不全などの循環器不全に見舞われ、20パーセントが失われると生きていけない。通常の健康状態の人でも、水を一滴も口にしなければ確かに4~5日程度で死に至るということです。

 水道の蛇口をひねれば、そのまま飲める衛生的な水が好きなだけ出てくるこの日本に暮らしていると、「きれいな水」の有難さはよくわかりません。しかし、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のターゲットのひとつに「すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセス」が掲げられていることからも、それがどれだけ大切で有難いことかは透けて見えるとことです。

 翻ってこの日本でも、貧乏自慢のひとつとして「電気やガス、電話などの公共料金を払えずに止められた」という話をよく聞きます。しかし、水道代を滞納しても水道局に元栓を止められることが少ないのは、飲料水の確保が(老若男女、誰にとっても)直接生死にかかわる問題だからなのでしょう。

 世界中の誰にとっても、生きるためにどうしても必要なこの飲料水に関し、5月3日の共同通信が『ボトル水、30年までに倍増予想 プラごみや地下水枯渇に懸念』と題する記事を配信しているので、その概要を小欄に残しておきたいと思います。

 5月3日、国連大学の水・環境・保健研究所(カナダ)が、世界でペットボトルなどに入った水の市場規模が2030年までに現在の2倍近くに増え、地下水の枯渇やプラスチックごみ問題などを悪化させる懸念があるとの報告書をまとめたと記事は報じています。

 さらに、日本を含む世界109カ国のデータなどを分析結果からは、ボトル入りの水を買えない貧しい人との間の不平等が拡大が認められ、飲み水に関する持続可能な開発目標(SDGs)達成の障壁になる可能性があることが判ったということです。

 報告書によれば、世界のボトル入り水の消費量は2021年に3500億リットルに上り、市場規模自体が過去10年で1.7倍にまで膨らんでいるとのこと。国別では米国が614億リットルとトップで、中国、インドネシアがこれに続き、日本は100億リットル弱で8位。2020年に2700億ドルだった売上額は、30年までに5千億ドルを超えると見込まれるとされています。

 消費量の増大に合わせてペットボトルのごみも急増し、2000年の1200万トンから2021年には2500万トンと2倍超に増加。また、地下水から安価に取水する例も多く、インド、北米などで飲料メーカーによる取水の悪影響が報告されている。干ばつ時に大量の取水をした例もあり、さらなる消費の伸びに伴ってこうした問題が深刻化する懸念があると記事はしています。

 さて、世界中で約20億人が安全な飲料水を入手できない状況にある中、記事によれば、報告書は「高価なボトル入りの水の拡大が飲み水問題の深刻さを覆い隠し、政府が公共水道への投資を拡大する妨げになっている」と指摘しているということです。

 公共水道により衛生的に処理されていない水が消化器などの病気になる可能性を高め、特に子どもの健康に大きな影響を及ぼしているというのは多くの専門家が指摘しているところ。確かに観光旅行で海外などに出かけても、日本のきれいな水に慣らされた脆弱な日本人にとって、ペットボトルに入ったミネラルウォーターはまさに「命の綱」と言っても過言ではありません。

 不衛生な環境はコレラや赤痢などの感染症の原因となり、結果、下痢による脱水などで命を落とす5歳未満の子どもの死亡数は、世界で毎年37万人に及ぶとされています。

 人が生きていくために、まず必要なインフラは何なのか。当間の生活を当たり前に過ごすために、(最優先で)守っていかなければならないものは何なのか。どんなに高価だったとしても、ボトルに入った「飲める水」を買わなければ生きていけない場所があり人がいることを、しっかり意識して暮らすことの大切さを私も改めて感じたところです。

 



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