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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯564 2025年に向けた跳躍

2016年07月17日 | 社会・経済


 「2025年問題」という言葉があるそうです。

 今からおよそ10年後の2025年の日本は、1947〜49年に生まれた団塊の世代が75歳を超えて一斉に後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類がその歴史上経験したことのない「スーパー高齢社会」を迎えます。

 社会保障費は現在(2014年現在)との比較で約3割増えるという試算もあり、年金や医療、介護などの需要が高まって、財源確保や介護・医療従事者の不足などが大きな問題になると考えられています。

 2020年の東京オリンピックが終わった後の日本の社会は、一体どのような姿に変わっていくのでしょうか。

 例えば、現在と同水準の人口規模を維持できるのは、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏と、愛知・沖縄・滋賀のみと予測されています。青森・岩手・秋田・山形・福島の東北各県や中四国の大半の県などは、軒並み1割以上人口を減らす見込みです。

 地方の過疎化や高齢化が一層進む中、都市部においても各地でかつてのベッドタウンであった近郊ニュータウンや老朽化したマンションの空洞化が深刻になり、空き家率も20%を超えると考えられています。

 半ば打ち捨てられたような郊外のマンションや団地などへ、中国の貧困層のみならず、東南アジアでも賃金が安いベトナムやカンボジア、バングラデシュなどからの外国人労働者がまとまって住むようになり、日本語が通じないエスニックな街区が形成されているかもしれません。

 実際、1970年代に時代の先端を行く(当時あこがれの)高層住宅として入居が進んだ東京板橋区の高島平団地の高齢化率は、現在50・2%に達しているということです。1万5000人あまりの住民のうち約7600人が65歳以上であり、既に2025年以降の日本社会を体現していると言えるでしょう。

 地域紙「高島平新聞」の調べでは、現在、同団地には約900人の外国人が住んでおり、団地の子供の6.5人に1人は外国人だということです。そして、こうした状況は高島平ばかりの問題ではなく、首都圏近郊の(老朽化した)公営住宅や公団(UR)住宅においては普通に見られる姿だとされています。

 人間も生き物ですので、高齢になれば疾病などにかかるリスクも高まります。生涯医療費の推移のデータからは、年間必要医療費が75~79歳でピークを迎え、生涯の医療費の約半分が70歳以降に必要とされることが見て取れます。

 高齢化の進展により既に一般会計の3割超を占めるにまで膨らんでいる社会保障給付費ですが、そのうちの国民医療費だけをとっても2008年度の34.8兆円から2025年には52.3兆円に、老人医療費も11.4兆円から24.1兆円にまで増加するというのが厚生労働省の試算です。

 次に介護を見てみます。要介護(要支援)になるリスクは75歳から急激に上昇し、85~89歳では、約半数が要介護の認定を受けているということです。

 厚生労働省の推計では、今後の年齢構成の高齢化に伴い、現在(2014年度)概ね10兆円とされる介護保険の総給付額は、2025年度には(必要な制度改正を行ったとしても)2倍以上の21兆円にまで膨張することは避けられないとされています。

 そうした中、現在の高齢者に最も恐れられているのが「認知症」のリスクです。

 厚生労働省のデータによれば、(軽度のものを含めれば)現時点でも少なくとも820万人が認知症を患っているということです。

 同じ割合と考えれば、2025年には現在の概ね1.5倍、1200万人以上が認知症になっていてもおかしくはありません。10年後の日本では、何と全国民の10人に1人が認知症となっている可能性があると考えれば、2025年問題の深刻さが改めて理解できるというものでしょう。

 さて、こうして見ていくと、2020年の東京オリンピック後の日本の社会に良いところなど全くなく、正に「お先真っ暗」な状況のような気がしてきます。

 このような大方の予測に対して、昨年9月に日本経済団体連合会(経団連)では「生活サービス産業が2025年の社会を変える」と題するレポートを公表し、10年後のスーパー高齢化した日本の社会を支えるための「産業界からの提案」を行っています。

 このレポートでは、企業があらゆる世代の⽣活者が快適な生活を送るためのアイデアを提案することで、国民生活の質の向上に向けたより良い変化を促すことが可能だとしています。

 また、企業は環境変化を乗り越えるための手段をひとまとまりの「成⻑産業」と捉えることで、企業自身も社会的通念を変⾰する「社会・制度のイノベーション」を促す担い⼿となり、自ら成長していくことができるということです。

 具体的には、企業が供給サイドの発想から脱却し
(1) 社会変化、世代変化に応じて変わる⽣活者のニーズを反映した製品・サービスをタイムリーに提供すること、や
(2) 日々の⽣活をより良いものに変えるきっかけとなる製品やサービスを⽣活者に提供すること、
(3) 生活者にゆとりある時間を提供し「⽣活を楽しむこと」を実現する製品・サービスを提供すること
などを、経団連はこのレポートで提案しています。

 また、そうした(新しい環境のもとでの新しい生活を築く)商品・サービスの提供のための手段として、異業種間での企業連携を進め「創造×⽣産性」で新しい産業集積を作っていくと同時に、市場を開拓していくための柔軟な政策的対応と戦略的な規制体系を求めていくことなどを示しているところです。

 レポートの指摘を待つまでもなく、確かに、社会がこれまでに経験したことのない環境に置かれるとすれば、そこに新しいニーズや市場が生まれることは必然と言えるでしょう。

 人口構成の高齢化が世界的な規模で進む中、その先頭を走る日本において企業が画期的な対応モデルを考案し世界に向けて提案することができれば、その先の大変大きなビジネスチャンスにつながることは論を待ちません。

 社会の変化の大波を民間の知恵と力で乗り越え、自らが豊かになるためのチャンスに変えていくという発想の転換が、今、求められていることなのかもしれません。

 経済界が指摘するように、2025年の到来を10年後に控え、高齢化を逆手にとって経済の活性化に結びつけていくための知恵と戦略性が政府にも、自治体にも、そして企業にも問われていると、私も改めて感じた次第です。



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