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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2784 「裸の王様」にどう向き合うか

2025年03月28日 | 国際・政治

 トランプ米大統領は3月26日、米国への輸入車に例外なく25%の追加関税を課すと発表しました。もちろん日本からの輸入車もこの追加関税の対象となり、日本の対米輸出額の約3割を占める自動車産業へのマイナスの影響は避けられないところ。輸出の減少に伴って国内生産が減ると、最大で13兆円に及ぶ経済的な打撃を受ける可能性があると大手新聞各紙が報じています。

 いよいよ本格化するトランプ関税と、そこに端を発する貿易戦争。トランプ政権の高関税政策が傷つけるのは、もちろん輸出国の経済ばかりではありません。輸入品の値上がりによって、割高な商品を買わされるのは米国民も同じこと。ようやく落ち着いてきた米国のインフレが、再燃するのも時間の問題かもしれません。

 一方、こうした状況に対し、日本の石破茂首相は「(追加関税を)日本に適用しないよう強く要請している」と繰り返すばかり。「日本を例外扱いにしてほしい」という気持ちは分かりますが、自由貿易の建前から言えば、他国と連携し米国の政策(の誤り)を正していくのが本筋ではないかと思わないでもありません。

 世界経済における米国発の混乱が続く中、3月25日の日本経済新聞の経済コラム「大機小機」が、『トランプ関税の全廃に立ち上がれ』と題する一文を掲載しているので参考までに指摘の一部を残しておきたいと思います。

 このままトランプ関税が発動されれば、世界経済はスタグフレーション(景気後退とインフレの併存)に巻き込まれる。この危機を座視することなく、トランプ関税の全廃に世界中が立ち上がる時がやってきたと、コラムはその冒頭に記しています。

 大統領就任から2カ月、トランプ政権に関して鮮明になったのは、その「経済音痴」ぶりだと筆者は言います。自らを「タリフマン(関税男)」と呼んではばかることなく、「関税ほど美しい言葉はない」と繰り返すトランプ氏。貿易黒字は利益で貿易赤字は損失と思い込み、高関税で貿易赤字は減ると信じるその姿は(貯蓄投資バランスを軸とする)経済学の常識に欠けるというのが筆者の見解です。

 第1に、(関係諸国は)高関税で2国間の貿易収支の均衡はできないことを(彼や彼の支持者に)理解させる必要があると筆者はしています。そして第2に、(放っておけば)関税戦争はエスカレートするということも。鉄鋼やアルミから、自動車、相互関税へと拡大すれば、危機は深まり消費も投資も手控えられる。そうなれば、市場の波乱による逆資産効果も無視できなくなるだろうということです。

 第3に、軍拡競争しだいで債務膨張も懸念されるということが挙げられる。リーマン・ショック以来の信用危機を前に、日米の金融政策は身動きできる状況にないと筆者は言います。さらに第4に、その影響をまともに受けるのは、トランプ政権を支えた米国の社会的弱者であるということ。トランプ関税によって米国経済は傷つき、危機が経済格差をさらに広げる可能性があるということです。

 それでは、この(トランプ発の)危機をどう防ぐべきか。期待できるのは「51番目の州になれ」と迫られたカナダのカーニー新首相だと筆者はここで指摘しています。カーニー氏は、カナダ銀行と英イングランド銀行という2つの中央銀行の総裁を務めた本格的な経済学者で、「友情ある説得」が望める。マクロン仏大統領らトランプ氏に物申せる欧州連合(EU)首脳との共闘も頼もしい。国際通貨基金(IMF)や世界貿易機関(WTO)との連携もできるだろうと筆者は指摘しています。

 そして、そこで重要になるのは日本の役割だと筆者は続けます。閣僚が「日本だけは例外扱いに」と頼み込むだけでは(あまりに)さびしい。対米投資だけで「免罪符」にならなければ、政府も議会も経済界も労働組合も消費者も、そして経済学会もトランプ関税の撤廃で声をそろえる必要があると筆者は言います。併せて、アジア太平洋から欧州、グローバルサウス(新興・途上国)にまで声をかけ、自由貿易の輪を広げる動きを主導してはどうかということです。

 肝心なのは、世界各国とともにトランプ包囲網を作ること。「常識」や「理論」によってトランプ政権の高関税政策の孤立化を図り、少しずつでも米国民の理解を促していく必要があるということでしょうか。

 アンデルセンの童話「裸の王様」では、「王様は裸だ」と言った少年が世界を変えたと筆者はこのコラムの最後に話しています。日米同盟は重要だが、「裸の王様」に追従するだけでは国際信認を失う。見て見ぬふりではすまされない。日本も世界に視野を広げ、「自分さえよければいい」という姿勢から卒業しなければならないとコラムを結ぶ筆者の指摘を、私も興味深く読んだところです。



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