2月9日の日本経済新聞が、亡くなられた人に相続人がおらず(結果)国庫に入れられた個人遺産が、2023年に初めて1000億円を超えていたことがわかったと伝えています。
具体的に言うと、2023年度に相続人不在として国庫に入った財産は、トータルで1015億円。2022年度の769億円から32%、(記録が残る2013年度は約336億円だったことから)この10年間では3倍に増えている由。推計では、今後はさらに配偶者や子どものいない単身高齢者の増加が見込まれることから、(該当しそうな人は)各自で何らかの準備を進める必要があるだろうということです。
こうした状況もあって、相続時に登記されなかった「所有者不明の土地」が全国で問題化し、土地については23年4月から(国が不要な土地を引き取り国有地とする)「相続土地国庫帰属制度」が始まったと記事はしています。
資産は、一旦国庫に帰属すると使途が選べないのは当然のこと。このようなケースが増えることを念頭に、専門家は「望む使い道があれば早めに遺言をつくるべきだ」と指摘しているということです。
相続人が存在せず遺言もない場合、国や自治体のほか利害関係者が「相続財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立て、整理を任せることになると記事はしています。未払いの公共料金や税金などの債務を清算した残りが国庫に入るが、(財務省によれば)国庫帰属分の遺産の使途は明確に決まっておらず、状況に応じ何らかの歳出に充てられるとのことです。
さて、「相続人なき遺産」が近年増えている大きな要因が、単身高齢者の増加にあることは言うまでもありません。厚生労働省の2023年の国民生活基礎調査によると、65歳以上の3952万7000人のうち「単独世帯」は既に21.6%(855万3000人)に及んでいるとのこと。一方、国立社会保障・人口問題研究所の推計(2024年)推計では、一人暮らしの65歳以上の高齢者は50年には1084万人にまで増加すると見込まれており、単身高齢者のうち未婚者の占める割合は、男性で6割、女性が3割になる見通しだということです。
「独身で子供がおらず兄弟もいない」「DINKSとして稼いできたが、旦那が死んで一人残された」「実家でニートとして暮らしてきたが、親も死んで家屋敷が残された」…様々なパターンがあるとは思いますが、いずれにしても(そんな人が)そのまま亡くなられても後の整理が大変だし、まんま国庫に持っていかれるのは何よりもったいない。せめて(一部でも)お世話になった故郷(の自治体や基金など)にでも寄付してもらえれば、地域の(例えば子供たちの)ために使うことなどもできるでしょう。
そのための方法として、遺言を残して自治体やNPOなどに寄付する「遺贈寄付」があるわけですが、あまり耳慣れない言葉だけに制度的には何かとハードルが高いのも事実です。
そんな時、寄付を受け付ける(若しくは財政難に苦しむ)自治体や団体サイドが共同で専門の窓口を作り、亡くなった後のお手伝いをするシステムを運営するとか、「○○基金」「○○記念文庫」といった対応を取ることを約束して、自治体が遺言書の作成を代行するシステムを作るとか…いくつかの工夫があれば個人の遺志が活かされるケースが増えるかもしれません。
自分が死んでも世界が終わるわけではありません。次の世代のため、なにがしかの貢献をしたいと考える人は多いはず。自分が生きた「証」を後世に上手に遺す方法を、社会全体で考えていきたいものだと記事を読んで私も改めて感じたところです。
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