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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2493 長い老後を乗り切る方法

2023年11月10日 | 社会・経済

 厚生労働省が今年7月に発表した簡易生命表によると、令和4年時点の日本人の平均寿命(0歳時点の平均余命)は 男性81.05 年、女性で87.09年と、前年と比較して男性で 0.42年、女性で0.49 年下回ったということです。

 平均寿命が前年を下回るのは令和3年に続き2年連続で、下回り幅はR3年よりも拡大しているとのこと。つまり、世界的な長寿を誇った日本人も、近年少しずつ短命になってきていることがわかります。

 もちろんこれには(例えば新型コロナの影響とか人口構成の変化とか)様々な要因があり、単純に傾向を語ることはできません。しかし、それにしても多くの日本人が、この先も頑張って90歳近くまで生きていかなければならない状況は長く続きそうな様子です。

 「現役」としてバリバリ働けるのはせいぜい60歳まで。その後は給料も大きく下がって後進に道を譲っていくというのが、現在のサラリーマンの一般的なライフモデルです。その後、90歳、100歳まで生きるとしたら、ひと世代にも及ぶ長い長い「老後」の生活を、私たちは維持していかなければなりません。

 「それはそれで結構つらいな…」と考えていた折、9月25日の経済情報サイト「プレジデントオンライン」に、作家の橘玲(たちばな・あきら)氏が「専業主婦のいる家庭」は確実にプアになる…小学生でもわかる「お金持ちの方程式」が示す残酷な事実」と題する興味深い一文を寄せていたので、ここにその一部を残しておきたいと思います。

 「人生100年時代」と言われるこの日本では、60歳で仕事を辞めたら余生は40年もある。20代から60代まで40年間働いて稼いだお金で、マイホームを買い、子どもを大学まで行かせ、なおかつ定年後の40年間を夫婦で安心して暮らせるなんて魔法があるわけがない。そして、1000兆円を超える天文学的な借金を抱える日本国が、すべての高齢者に十分な年金を払い続けられるとも思えないと橘氏はこの論考に綴っています。

 しかし、よく考えてほしい。60歳の定年後も仕事を続け、年収が300万円なら70歳まで10年間働いて3000万円。80歳まで20年間働けば6000万円のお金が手にはいる。「安心して老後を過ごすには、年金に加えて5000万円の金融資産が必要」といわれて途方に暮れている人がたくさんいるが、長く働くだけでこの不安は簡単に解決できるというのが橘氏の指摘するところです。

 老後問題というのは「老後が長すぎる」という問題なのだから、老後を短くすれば問題そのものがなくなってしまうと氏は話しています。解決策は、いつまでも引退せずに現役として収入を得続けるということ。もしもそれが嫌であれば、必要なお金を早めに確保しておくという方法もあるということです。

 そこで必要なのは、(シンプルに言えば)世帯収入を増やすこと。氏は、収入を増やすには大きく3つの方法があると説明しています。それは、①人的資本を大きくすること、②人的資本を長く運用すること、そして③世帯内の人的資本の数を増やすこと…というものです。

 一つ目の「①人的資本を大きくする」というのは「もっと稼げる自分になる」というもので、これは一般に「自己啓発」と呼ばれている。これはものすごく達成感があるためにとても人気のある方法で、書店に行くと自己啓発関係の本がたくさん並んでいると氏は話しています。

 一方、それに比べ、②と③はほとんど指摘されないが、実は①と同じくらいか、あるいはそれ以上に効果があるというのが氏の認識です。一番の違いは、自己啓発はうまくいかないことがある(多い)けれど、こちらは計算通りに収入が増えて失敗がない。(かみ砕いて言えば)長く稼ぎ続けること、みんなで稼ぐことで、確実に収入は増えるということです。

 まず、「世帯内の人的資本の数を増やす」のに手っ取り早いのは、「共働きをする」という方法。子育てが一段落した40歳から20年間、妻がパートで年200万円の収入があれば、60歳までの20年間で4000万円。夫といっしょに80歳まで40年間働けば8000万円にもなると氏は説明しています。

 夫1人が定年まで働いて60歳で退職して年金生活する家計と比べ、「生涯共働き」は(夫の6000万円と妻の8000万円で)80歳までに計1億4000万円もの「超過収入」を得ることができる。夫婦で「生涯共働き」は、まさに最強の人生設計だというのが氏の見解です。

 さらに言えば、大学を出た平均的な女性が60歳まで(正規に)働いたときの生涯年収はおよそ2億円。しかもこれには退職金は含まれていない。いまは65歳や70歳まで定年延長できるので、働く女性の生涯年収は2億5000万円から3億円に及ぶだろうと氏は言います。仕事を辞めて専業主婦になってしまえば、これらが全てなくなってしまう。このことの意味を、女性たちはもっと真剣に考えた方がいいというのが氏の指摘するところです。

 しかし、これは、女性だけの話ではない。「女は結婚したら家に入るのが当然」と考える男子がもし今でもいるとしたら、自分の将来を真剣に心配するべきだと氏はここで強くアドバイスしています。

 君の親友が、「僕も子育てに協力するからいっしょに頑張ろうよ」と約束して結婚したとしよう。そうすると60歳になって、(彼とは違って)1人で家計を支えてきた君は、共働きの親友に世帯収入で2億円もの差をつけられている。はっきり言ってしまえば、親友はリッチなおじ様になり、君はプアな老人だということです。

 つまり、人生100年と言われる長い人生を最後まで幸せに生きたければ、夫婦がお互い助け合って稼いでいくしかないということ。それなのに、一時のつまらぬ諍いや過ちで、将来を台無しにしてしまう人のなんと多いことか…。

 ともあれ、これからの時代は(夫婦円満で)「長く働く」「いっしょに働く」が、お金持ちになるためのキーワードになるだろうとこの論考を結ぶ橘氏の指摘を、私も(「なるほど…」と)興味深く読んだところです。



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