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小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(38)&CG

2008-08-13 00:49:36 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(38)&CG

「さよか、ほな条件を言いまっさかい覚えておくんなはれや。現金のピン札は嫌いや、古い紙幣にしておくんなはれ。それから明日、中軽井沢のホテルニュー星野に真田夫婦の名前で予約してありまっさかい、移っておくんなはれ」。
「古い紙幣にですか、分かりました。頼んでみます。それで中軽井沢ですか、ホテルニュー星野に行けばいいんですね」
「そや、ええでえ軽い沢は。ほな頼まっせ」。そして電話を切ると美保は大笑いしていた。
「全くもう可笑しいんだから、何処から聞いても関西人ね。面白かったな。それで真田はなんだって」。
「うん、やっぱり電話して確かめたみたいだ。それに古い紙幣に代えてくれって言ったら驚いていたよ。頼んでみるってさ。明日一日のんびりして十五日の朝僕等も軽い沢に行こう」。
「うん、それで標的は何処で?・・・」。京平は軽井沢の地図を広げた
「峠の茶屋から白糸ハイランドウイの滝に通じる道の中間点に空き地があってね、そこに車を止めさせて道路とは反対側に立たせる。通行車両から見えないように背中越しに立たせるんだ。
周りは雑木林で小高い丘があってね、そこまで車で入れるから、その丘から狙う。誰にも見られる事はないよ」。
「うん、でもせっかくだからお金も貰おうよ。こう言うのはどう。私が先に雑木林の中にいてお金を投げ込ませて受け取る。新しいテープを真田に投げて渡すの。そうすれば真田だって少しは安心するでしょう」。
「いや、それじゃあ危険だ。じゃあこうしよう、お金を投げ込ませて一周して戻るように指示するよ。
美保が戻ってこれるように時間稼ぎするから、テープを空き地に見える位置に置けばいい」。
「分かった、じゃあそれで決まりだね。ねえ京平さん、道路公団の作業服とヘルメット、それにラバーコーン手に入らないかしら。あれなら人に見られても変に思われないでしょう」。

「ここにあるよ、白いヘルメットに作業服なら。それに作業靴もね。じゃあ僕がやる、美保はライフルを構えて待っていてくれ。もし真田が僕が戻るより早く戻って来てしまったら美保が掃除してくれ」。
「うん、分かった」。美保は一瞬唇を噛んで瞳を輝かせた。
そして紺野は地下室から作業着と靴、ヘルメットを持って来た。
そして黒いテープを引き出しから取り出すとカッターナイフで細く切った。そして白いヘルメットに二本の線を張り付けた。
そして外に出ると物置からラバーコーンを数個持って来た。
「え~っ、どうしてそんなのまであるの」?
「うん、ここを作る時に道の入り口に目印に置いたんだ。資材を運ぶトラックに分かるようにね。それに一般車両が入ってこないだろ。
今はフェンスがあるから車もハイカーも入って来ないけど、あれを造るまでは間違えて良く入って来たからね」。
「この山はお義父さんと京平さんが手入れしているの」?
「うん、お爺さんが病気で亡くなるまではやってくれていたけど、亡くなってからは僕と父さんでしてる。下草を刈ったり雑木を切ったりね。だから林業に使う道具は全部揃っているって分けだよ。
家は元々林業が主だったから。この辺りの山も昔は殆どの家の山だったらしい。それが安い輸入材が入って来るようになってさ、売れなくなって林業を止めたんだ。それでベンシヨンを始めたんだって。いまのペンションは五年前に新築したんだ」。
「ふ~ん、私の家はね。元々会社をしてた祖父から父が継いだの。母は祇園の芸者さんだったんだって」。
「そう、それでお義母さんいつまでも奇麗なんだな。ほんと言うとさ。お義母さんに会った時にそうじゃないかって思ったんだ。
さっぱりしていていいよな。美保もその血を継いでいるからサッパリしてるんだな」。
「そうどす。アッハハハハ。ねえキスして」。
そして美保は抱き着いた、濃厚なキスをして食事の支度を始めた。
そして翌日、朝一番でインテリアの店で注文した木材がトラックで届けられた。
二人は作業服に着替えると傷んだ別荘の廊下の張り替えを始めた。美保は床を剥がした板を運んだり釘を抜いたり押さえたり、初めての大工仕事に汗まみれになりながら楽しむように手伝っていた。
そして、首に巻いたタオルが妙に似合っていた。
「京平さん大工さんみたいだね、私見直しちゃった。背広にネクタイ姿しか見てなかったからさ。男の人が汗を流して仕事する姿っていいわね」。
「え~っ、美保だってけっこう似合っているぞ。疲れたら休んでいいからね。無理するなよ生理なんだから」。
「いや~もう、平気ですよ~だ。アッハハハハッ・・・」
そんな美保の笑い声が山間に響き渡っていた。そして昼にはお握りを作って二人で庭にシートを敷き、食べていた。
「あっ、あれなあに。クマじゃないしキツネじゃないし」。
美保の見る方を見るとタヌキがのそのそ歩いて来るのだった。
「美保、友達だよ。この辺りに住んでいるタヌキだ。やっと出て来た。前は良く来てたんだ。お握りそっと転がしてごらん」。
美保は小さなお握りを転がした。するとタヌキは立ち止まった。
そして真っすぐ向かって来るとお握りを両手で持つと食べ始めた。
「え~っなに此のタヌキ、変なタヌキね。慣れている、ハハハハ・・・」。そして美保は卵焼きや炒めた野菜をそっと投げていた。
「ねえ京平さん、あのタヌキに名前はあるの?・・・」。
「そんなのないさ、まだいる筈なんだけど出てこないな」。
「え~っまだ外にもいるの。あっオチンチンがある。牡だ。見て、あの木の後ろ。ほらっ、こっち見ている」。
すると別のタヌキが大きな杉の木の後ろでじっとこちらを伺っていた。京平はお握りを強く転がした。
「あっ、出て来た。私がいるから怖いんだ。私を見るの初めてだから、慣れるかしらね」。
「すぐに慣れるよ、僕が初めてタヌキを見たのは三年前だったかな。庭で薪を割っていたら出てきてさ。置いといた弁当を盗まれて、それが初めての出会いでね。それからちょくちょく出て来るようになって、じっと顔を見ているんだ。それで菓子をやったら寄って来て、慣れるのに早かったよ。だから直ぐに慣れるさ」。
すると、奥で警戒していたタヌキも徐々に寄って来た。そして美保の投げる餌を食べていた。
「ねえあの二人に名前付けようよ。牡が松に雌が楓。決めた。松と楓にする、おいで松、楓もおいで、怖くないよ」。
美保はそう声を掛けながら餌を少しづつ投げていた。京平は笑って見ていた。
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