夫の体調記録~がんばろっ!~

お気楽夫婦だったのに・・・悪性リンパ腫と闘った夫、妻の日記

10月14日(土)【移植後22日目】

2006-11-01 03:01:57 | 夫の体調記録
10月の第1週で一つの山を越えられたところで、
第2週早々に主治医から呼ばれたり、毎日が緊迫していた。

だいたい11時か12時頃に病室に行くようになったが
この日も病棟に着くなり主治医からすぐに呼ばれ、説明を受けた。

今週はずっと貧血なので輸血を多くしていたのですが
それでも昨日はさらに輸血量を4たんいに増やされた。
今週はずっと血便が出ている。便というか血の塊だろうか?という感じの
黒いどろっとしたもの。大量な出血。

喉や鼻、気管からも出血で口中に血の塊。
表面では少しにしか見えなかったけど、
今思えばすでに気管もそうとう出血し
見えない体内にはそれらが詰まっていたのだろうか?


それでも救いは白血球が移植後19日目で1200になり3日間続いたこと。
が、14日(土)になって白血球が170に落ちていた。


主治医が緊迫した勢いで早速私を別室に呼び
昨夜から現在の状態を説明した。

【1】血球貪食症候群;

ついこないだ、苦しい最中だけど骨髄検査をしたばかり。
その結果、マクロファージが増えていた。
異常に増えたマクロファージは赤血球や白血球、血小板を貪食するという
悪さをする。
なぜマクロファージが増えたかといえば
炎症が由来だろう、と。
それは生着に伴うものと
腸管(下痢)や敗血症などの感染が理由で炎症している、と。

その対処として、ステロイドの大量療法をやった。
それ自体には効果があり、生着となった。
反面、この合併症として
消化管出血と高血糖になった。

このステロイドの維持療法をしたが
結果として「二次性生着不全」となった。

この二次性生着不全には
再移植かもう一度ステロイド大量療法が考えられるが、
アカオさんには再移植はできないので
もう一度ステロイド大量をするのが現在の処置として選ぶ、と。
ただ、それには出血のリスクがある、とも言われた。
なので輸血を常にしながら行う、との説明でした。


【2】肝不全;

これに関しては、血漿交換を2回続けて行い、自力の数値をみたかったので
一日空けて3回目を昨日しましたが、
結局自力での回復の兆しがない、と。
ビリルビンが下がりきれない。
そのために腹水と意識障害。

腹水を抜いても、血管が脱水しているのでまたすぐたまるので
このまま辛くても我慢してもらう方がいいのだけど
あまりに腫れすぎて痛みがあるということと、
肺も圧迫され呼吸が苦しくなることから
今日、腹腔穿刺をし、腹水を除去ましょう、とのことでした。
一日当たり1~2リットル目安で。

【3】腎不全;
尿は出ている。
決して改善というわけではないが、悪化はしていない、という。

【4】酸素化障害;
血液の肺への流れ込みによる誤嘆性肺炎の危険性も考えられる。
 →呼吸不全のリスク
   →人工呼吸器が必要かもしれない。



以上の説明で、まったく目の前が真っ暗になってしまった。
なんでこんな最悪な状態が次から次へと襲ってくるのか、
嘘でしょう?と誰に言うこともできないこの現実。。。
とにかく冷静にならなければ、
アカオさんの前で泣くわけにはいかない、
動揺してる姿を見せるわけにはいかない、
と、自分に言い聞かせながら
すぐさま病室に入った。

思わず涙が出そうになるのをこらえながら
「今日はお腹が張って苦しいだろうからって、
 腹水を抜くそうだよ。これから針刺して1リットルくらい抜くんだって。
 少しは楽になるといいねー。」
なんて明るく言い聞かせる。
白血球が下がったなんて、なかなか言えない。
本人は辛く苦しい最中でも生着しつつあることを
生き抜く望みとし、
肝不全による意識混濁での苦しみや
大量出血での苦しみや、呼吸困難の苦しみの中でも
踏ん張って、頑張っているのだもの。。。

その姿がけなげすぎて、涙が出てきてしまう。

すでにもう水も飲めない状態だし、水を欲しがらない状態だった。
どんなにか辛いのか、、、想像できない。
痛々しいその姿。
いつからだったか、、、ここ2,3日前からだったか、
細くなった腕や足だったが、
手がさらにコツコツに骨と皮だけになっていた。
握る手があまりに細くなりすぎて、
あまりの衰弱ぶりに悲しみがどっと出てきた。

同時にその頃からあまり羽ばたきはしなくなった。
これは、、、もしかして痙攣する体力さえないのでは?
そんな風に思えた。
それに、あれほど背中が痛い、と言っては
お腹が張って苦しいのにベッドサイドにしがみついて
いっしょうけんめい横向きになったりして動いていたのに、
それさえもしなくなった。
背中の痛みも感じなくなったのか、そんな体力もなく
衰弱しきっているのか・・・?

そのくらい、やせ細り衰弱していた。
それなのに、水が漏れているせいで
お腹はパンパンに膨れ上がっている。
もうはちきれそうでかわいそうなくらい。
おへそが伸びきって、まるでおへそじゃないみたい。
膨れ上がるお腹は益々水がたまって膨れてるのかと思うほどに
旨まであがっていている。
浮腫みは、足先もだ。

私は
足指や足裏をもんだり、
背中に手を入れてこぶしでぐるぐるしてマッサージしたり
腕や脚をなでてさすったりしていた。
足の裏をもみ時は
「アカオさんの肝臓や腎臓が良くなりますように」と言いながら。



腹腔穿刺は上手にいったようでした。
血圧を測りながら行うのですが、スムーズにいきました。
1ℓの予定が、まだいけそうなので1.5ℓになりました。
もう少し抜いて欲しい、と思いましたが
いきなり大量に抜くのも危険らしいので
今日のところはこの程度、とのことでした。

主治医がおっしゃるには
腹水を抜いたのに血も混じっているようです、とのこと。
確かに赤かった。
つまりやはり体内で出血していてそれがお腹にも流れている、と。
血便で出てきた以上にもっと出血してるんだろう。


夕方にはそれも終わって
大量の輸血が順番に続けられる。
赤血球、血小板。
血漿も。

ステロイドも多くなる。

次から次へと点滴交換に看護婦さんがやってくる。

そんな中、夕方担当の看護婦さんと私が
余談を話ながら二人で笑っていたら、
アカオさんもそんな二人の笑い声の後に
看護婦さんを見ながら笑っていた。「アハハハハ・・・」と。

え~?思わず、私達もまた笑った。
「アカオさんが笑ってるぅ~(笑)」と。

声を出して素直そうな目をして看護婦さんにつられて
一緒になって笑うアカオさん、
意味は解らないはずなのに、私達の談笑に一緒になって笑ってる。
私は嬉しくなった。
「看護婦さんが優しく明るいから楽しくなったのですねー、ありがとう」
と言ったら
看護婦さんは
「そんなことないですよー。
 アカオさんはやっぱり奥さんがいいんですよねー?」と冷やかしたら

「んんーっ?」と、すっとぼけた拍子抜けの声。

思わずナイスリアクションで
私も看護婦さんも大笑いしちゃいました。

アカオさんったら、意味解ってないのか、
それとも本当にいつものおとぼけで笑わせようとしたのか。。。

最後の笑い声と笑顔でした。


その後、夜の制限時間まで私はずっと居ましたが
アカオさんとは手を握りしめたり、
アカオさんの胸に顔を近づけると、アカオさんは私の頭を抱いてくれました。
でも、、、寝てる時が多かったかな。
だけど私の頭や背中に腕を回してくれているその腕は温かかったし、
胸も温かく広く優しかった。
今でもその体温が感じられます。忘れられません。

口中は、血の塊でいっぱいだし、
便をもよおしてるのか血の塊なのかわからない状態だし、
呼吸も音がして荒いし苦しそうで
本当に全身かわいそうな状態でしたが、
でも温かく優しいアカオさんでした。
もう喋ることもできず、返事と相槌だけだった気がする。
看護婦さんに「ありがとう・・・ございまし・・・た」と言うのも
やっとやっとで、でも頑張って言おうとしている。
そんな姿は13日までだったかな。

水もほとんど欲しがらない、少しスプレーで口中を湿らす程度。
部屋の電気はあまりつけず、暗くして静かに過ごす。
ドアを閉めて二人の時間、、、私はそばにいて手を握り
脚をさすり、足をもみ、、、それしかできない。
祈りながら、静かに過ごした。
今思えば泊り込めば良かったかな?
何もできないし、何もすることもないけれど、
少しでもそばにいればよかった、と思う。