夫の体調記録~がんばろっ!~

お気楽夫婦だったのに・・・悪性リンパ腫と闘った夫、妻の日記

もしかしたら、、と言われた週の様子

2006-10-22 00:28:14 | 夫の体調記録
4日(水)に近親者が集まってから
明日が読めない深刻な日々でしたが、
アカオさんの強い意志はしっかり保てているし
明るい兆しさえ感じた。
それが証拠に腎機能も改善気味とのことで
尿も便もよく出ている。


相変わらず腹水がたまったままで
お腹がパンパンに腫れているのが心配。
そのために呼吸も圧迫されて苦しそうだし、
横になることすら辛く苦しい(当然一人では横になれない)。

この週は、意識が朦朧とする中、私に
「早く!早く!・・・」

「早く、帰ろう。早く支度して。早くしないと!!
 こんなところにいたら病気になっちゃうよ。
 早くして、早くぅ~・・・」

「なにやってるんだよ!なんでわからないんだよ!
 早く帰ろう!早くして!」

ひたすら焦っていた。
それも必死な顔で。
自分は焦って早くここから出て行こうとしたいのに
私が何もしないことがもどかしそうで
目を三角にして泣きながら怒っていた。
それも自分が動きたいのに動けない。
体力がないからベッドの手すりを必死に持って
自力で体を起こそうとするのに
それさえできない自分へのもどかしさ。
そのために悲しそうに「なんでこんなに言ってるのに解らないんだ、
早く帰らないと・・」と必死に訴えかけてくる。

何が【早く】なのか?

たぶん
早くお店を開けなければ、という意味と
早くトイレに行きたい(もよおしそうだから早くトイレを)という知らせと
早く家に帰ろう、という3つの【早く】を言っていたのかもしれない。

病魔が体内で襲ってくるのが本能で感じるのだろうか、
このまま無抵抗のままでは病魔にやられてしまうから
早く逃げよう、というそんな必死な姿だった。そんな気がする。

その泣きじゃくりながら「早くぅ~」という訴えが
日に日に必死に、日に日に強くあらわれてきた。
でも、それは私と二人でいるときだけだ。
看護婦さんや先生が来ると
急に静かになって穏やかにしている。

早く逃げようというのがばれないように、
病院側に気を遣っているのだろう、きっと。
つまり早く病室から逃げたいのは必死なんだろう。
妻の私にだから本心のわがままを言うのだろう。


ある時、とても興奮して「早く!」ともがき訴えるので
酸素が少なくなったらしく
看護婦さんが飛んできて
「アカオさん!どうしましたか?!」と聞かれたら
駄々をこねているのをふだんは気を遣って隠しているのに見られたからか、
「この人がうるさいんですぅ~」と
人差し指を突き刺して私を指した。
「おいおい、私のせいかよー?」と
思わず笑ってしまうお茶目なことをしてくれた。

ある時は、「早くぅ」ともがきながら訴えていたのに
主治医が来たとたん
何事もなかったように急におとなしくなって
両手を胸の上に当て、穏やかな顔で寝たふりをした。
模範患者のような静かな安らかな顔をして。
「おーい。。。まったく先生の前ではいい子しちゃってぇ!」と
思わず笑ってしまう。



それは肝不全に近い症状のために徐々に脳に襲ってくる意識障害が
体で恐怖となりわかるのだろうか、
自分の意識があるうちに、必死に私に訴えているようでもあった。

4日、危ないかもと先生に言われてから
翌日から不安な思いで病院に早く行っていたけど、
日に日に自分の意思はしっかりしている気もする。
だからもしかしてよくなる兆しかと安堵するくらいだった。
でもその意識が保てる時間が少なくなってきている、一日一日と。
夢を見ているような、うなされている時間が長くなってきている。
でも、その合間に表れる自分の意識は確かでしっかりした気力であった。
なぜなら
「大丈夫?!アカオさん!!」と言うと
「大丈夫だよ」としっかりしていた。
それに
看護婦さんが点滴や輸血を取替えに来る時も
しっかり名前を確認するし、しっかり返事するし
薬を取り替えているところも
目を見開いてしっかり見ている。


主治医が来るとその説明をしっかり聞いている。


そういえば5日に、

肝臓は薬のせいでダメージを受けているから
薬を抑えていきます。
という主治医の説明を私がアカオさんに伝えた。
肝機能が自力でアップするように
頑張ろうね!と添えて。

看護婦さんもそばにいたせいか
アカオさんがその後に言ったセリフは

「薬はいかんぞう」(薬はよくないよ)

これってダジャレ(オヤジギャグってやつですか?)です。。。


苦しいっていうのに
こんな時までいつものダジャレを言うなんて!!

思わず嬉しくなってしまいました。
やっぱりしっかりしてるじゃないか!!
アカオさんはなんて強いんだ!



それから、土曜日か日曜日だったように思うけど
主治医からの話では
体内では抹消血ではすでにドナーの細胞がほとんどになっていると聞いた。
つまりアカオさんの悪い細胞はほぼ消えて、
ドナーの新しいきれいな細胞が抹消血にある、という
嬉しいニュースだった。
あとは、そのドナーの新しい造血細胞が
アカオさんの体内で活性化してくれればいい、という
その待ちの状態だ。

その説明をした後
主治医も病室に来てくれて
アカオさんに直接説明してくれた。

そしたらアカオさんは
先生をしっかりみつめ、
「ドナーの臍帯血がアカオさんの体内にほとんど広まって
 アカオさんの血はなくなっていますよ」
という先生の話に耳をすまし、真剣によく聞いていて、
「そうですかー。赤ちゃんの血がなくなったんですかー。」と
きちんと先生に復唱して確認で聞いた。
口内炎のために言葉がはっきりしないのと、
意識障害の影響で話が難しかったのか勘違いしてたので
先生が
「違いますよ。赤ちゃんの血が増えて
 元々あったアカオさんの悪い細胞はなくなってますよ」
と言ってさらに説明を加えていた。

アカオさんはうなづきながら必死に先生の話を
丁寧にきちんとしっかり聞いていた。

その一生懸命に先生の話を理解しようとする姿が
なんとも可愛らしく、またなんともせつなく思えた。

だけど、意識障害が出始めてるといわれたのに
それでもこんなにしっかりしてる。
「病気を治すんだ!」だから治療のことや体の状態について
 しっかり確認しながら毎日必死で闘っている。
だから点滴や薬が変わるときも
しっかり見ながら必死で見ていた。
自分は何をされてしまうんだろう、
しっかり薬や治療法を確かめながら、自分を守るために。


それにしても大量の種類の薬、強い薬、
本当にかわいそうになる。
どれだけ体内が荒れ、辛いことなんだろうか。
どうにしもしてあげらないもどかしさ。
かわいそうだけど、医学に治療を預けた以上
この治療法を続けなければならない、
でも化学の薬は、本当に恐ろしいほど体内に強い。
もうかわいそう、やめて欲しい、そう思う気持ちを必死で私は抑えた。

助けてあげるってどういうことなんだろう。
でも今はこの方法で助けてあげるしかない。

そんなことを言い聞かせながら
苦しそうなアカオさんのそばにいることしかできない。

ずっと寝てるだけで
自力で横向きにもなれないアカオさん。
すっかり弱まって筋力も衰えた手で
必死でベッドの手すりをつかんで
少しでも体を横にするその動きが見ていて辛い。
そして私は、痛いという背中をさすってあげるしかできない。

そういえばこの週や翌週の前半には
体が痒いといってずっと常に体をかいていた。
物凄く痒いんだそうだ。

主治医に聞くと
それも肝不全の影響かもしれない、と言っていた。
あとで看護婦さんが言っていたのは
白血球が上がる時は痒がる患者さんが多いです、とも。


6日(金)は3回目の人工透析だったけど
この日は人工透析の技師さんがニコニコした優しい顔の男性で
時々優しく声をかけてくれる人だったので
終わり際に「ではアカオさん、お疲れ様でした~」
と退室しようとしたら
アカオさんも
「バイバイ」とニコニコして手を振ったりしていた。

可愛かった。


徐々に意識障害が強く出始めているんだけど
土日月の三連休はわりと平穏だった。





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