【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会副会長 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

火神主宰 俳句大学学長 Haïku Column代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

〜特集「あれから一年」に寄稿す〜

2021年07月08日 23時14分13秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
月刊『くまがわ春秋』7月号!
 
〜特集「あれから一年」に寄稿す〜
 
◆2021年7月4日発行の『くまがわ春秋』7月号が発行されました。
◆その特集「あれから一年」に「出水の故郷から-俳句」と題する俳句並びに自注自解を寄稿しました。
◆ 編集子より「被災者だけの声・感覚だけでは不十分だ」ということでしたので、直接に被災した訳ではないのですが、お引き受けしました。
◆実は、熊本地震の折にも、いち早く、熊本地震に関する特集「クローズアップ 熊本大震災」を組んだ月刊「俳句界」(2016) 7月号に寄稿し、「震災の記録」として残しています。
 
【俳句と自注自解8句】
 
出水の故郷よりー俳句
永田満徳
 
 二〇二〇年(令和二年)七月四日、未明から朝にかけて、熊本県南部で集中豪雨が襲い、球磨川が氾濫し、土砂崩れや浸水被害が多数発生した。人吉市街地の浸水高は昭和四十年代にあった二つの水害よりもはるかに高かった。
 
一夜にて全市水没梅雨激し
 人吉市は、市街地を中心に広範囲にわたって浸水や冠水が発生した。一夜明けた五日、高校まで過ごし、見聞きしていた市内の景観は一変していた。
 
梅雨出水高さ誇りし橋流る
 私の実家のある永野町と人吉市内を結ぶ橋が西瀬橋。市内に出るには必ずこの橋を渡らなければならなかった。西瀬橋の高さは幼少時の記憶によると、途方もなく高く感じられた。今でも夢に見るが、その夢で決まって出てくるのは橋の欄干から覗き込んだ、息を飲むほどの高さである。
 
身一つもて元気と出水の故郷より
 洪水で自宅と納屋が全壊した上村雄一氏のことが気掛かりでいると、Facebook「月刊『くまがわ春秋』ファンクラブ」に、その第一報「元気です」がもたらされた。のちに、上村雄一氏はその投稿は七月七日のことであり、「避難所生活3日目で友人のタブレットを利用して投稿したものです。避難所はまだ混乱の最中で、避難者が増えている時点です。」と語っている。
 
携帯の出水警報つぎつぎに
 近年では携帯やテレビに大雨洪水警報が出るようになった。これはこれで、大変有益な情報であるが、大雨に対する注意が身近になって、けたたましく警報が鳴ると不安になる。 
 
雨音にけふも出水の悪夢かな
 水害後、梅雨の時期でもないのに、少しでも長雨になると、水害が起こるのではないかと心配するようになった。
 
球磨川の水位情報梅雨激し 
 熊本市内の私の家は高台にあって、崖崩れの心配はあっても水害の恐れはない。しかし、故郷を離れて、四十数年になっても、故郷・人吉の情報はわが身のことのように感じられる。
 
むごかぞと兄の一言梅雨出水  
 人吉在住の兄は水害被害にあった家屋の復旧を手伝った。被害状況や被災復旧を含めて、水害は言葉に言い尽くせないほど悲惨で過酷であったようで、「むごか」という一言以外にその多くを語らない。
 
前触れはいつも雨音夏出水  
 五年前の熊本地震と同じように、一度、大水害が起こると、また起こるのではないかと思うこの頃である。
 
■定期購読
月額500円で毎月お届けします。お申し込みは、下記へお願いいたします。
〒868-0015 熊本県人吉市下城本町1436-4の3号
TEL 0966-23-3759  FAX 0966-23-3759
メール info@hitoyoshi.co.jp
 
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〜季語で一句 20〜

2021年07月08日 23時09分23秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
俳句大学投句欄よりお知らせ!
 
〜季語で一句 20〜
 
◆『くまがわ春秋』7月号が発行されました。
◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
Mail:info@hitoyoshi.co.jp 
☎ 0966-23-3759
 
「くまがわ春秋」
【季語で一句】(R3・7月号)
 
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
 
麦秋(ばくしゅう《ばくしう》)「夏-時候」
山野邉茂
墓碑にはみな猿田の名字麦の秋
【永田満徳評】
「猿田」は『古事記』に登場する道案内した猿田彦でお馴染みの祭神。掲句は、季語「麦の秋」を使って、神々しい「猿田」の「名字」を持った人々が寄り合う、穀物の豊かな集落の様をうまく描き出している。               
【季語の説明】
「麦秋」とは初夏の頃の季節のこと。麦が熟し、麦にとっての収穫の「秋」であることから名づけられた時候の季語。麦の種を蒔くのは晩秋から初冬にかけてで、冬に芽を出し、春を迎えるとすくすくと育つ。やがて、麦の穂がたわわに実り、麦畑が黄金色に染まる時期が麦秋で、目でも楽しめる初夏の風物詩である。
 
鰺(あじ)         「夏-動物」
江口秋子
鯵握りこの子誰に似たんだらう
【永田満徳評】
「鯵」は大衆魚。新暦5月は鯵の美味しい季節。鯵の握り寿司を頬張りながら、唐突に「誰に似たんだらう」という疑問が起こる。掲句は日常のふとした疑念と庶民的な「鯵」とが取合わせられて、面白い。
【季語の説明】
「鰺」はアジ科に属する海魚で種類が多い。鰺の代表格は真鰺で、日本各地の沿岸に分布していて、釣り、定置網、底引き網等の沿岸漁業で漁獲される。刺身、塩焼き、フライ、干物などにして食す。「味がいい」から「あじ」だとも、鰺のおいしい季節が旧暦の3月なので、数字の「参」が使われたとも言われている。
 
花菖蒲(はなしょうぶ《はなしやうぶ》) 「夏-植物」
篠木 睦
菖蒲田の水明りして亀沈む 
【永田満徳評】
「花菖蒲」の紫は色濃く、そこに混ざって咲く白は初夏の日差しを受けてまぶしい。水を張った「菖蒲田」は空の青と菖蒲の花の色を映して美しい。「水明り」の表現がよく、「亀沈む」が絵画のようで、心惹かれる。
【季語の説明】
「花菖蒲」はアヤメ科の多年草で、ノハナショウブをもとに、江戸時代を中心に品種が育成された。6月頃色彩もさまざまな花が開く。梅雨の最中に花弁を雨粒が濡らす姿は風情がある。優美な花形が魅力で、色彩の魔術師とも呼ばれ、花色の変化に富んでいる。アヤメは花弁のつけ根などでカキツバタと区別できる。
 
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