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【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

〜 季語で一句 86 〜2023年『くまがわ春秋』6月号

2023年06月06日 12時50分56秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜 季語で一句 86 〜
◆2023年『くまがわ春秋』6月号が発行されました。
◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
・info@hitoyoshi.co.jp 
 ☎ 0966-23-3759
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R5.6月号)
立夏(りっか《りつか》)  「夏-時候」
西村楊子
アルプスの水の山積み夏来る
【永田満徳評】
「アルプス」という措辞がよく、冷やしていなくても、高山の雪解けの清涼な飲料水を思わせる。「山積み」であればなおさら、水分補給が必要になってくる「夏来る」という季語の雰囲気にぴったりである。
【季語の説明】
「立夏」は二十四節気のひとつで、野山に夏の気配が立つ、5月6日ごろ。春分と夏至の中間にあたり、昼と夜の時間で季節を分けるとき、暦の上ではこの日から夏が始まる。活気に満ちた季節の到来を感じさせる。季節が一歩進んだ感じが漂い始める。「八十八夜」も過ぎて、新緑がまぶしく、美しい時期である。
代搔く(しろかく)     「夏-生活」
西村楊子
映り込む深山ともども代を搔く
【永田満徳評】
「代掻く」は田に水を入れ、土を砕いて均平にして、水が張られた状態。谷間の棚田の田はわずかな青空を映して、とても美しい。「深山ともども」がいかにも山間部らしい代掻きの田の風景を描いている。
【季語の説明】
「代」は植代のことで、苗を植える田のこと。「代掻く」は鋤起こした田に水を張って、土を細かく砕き、田の底を掻きならし、土の表面を平らにし、肥料を土中に混ぜる作業。田植の準備ができた田を「代田」という。昔は牛や馬に馬鍬を引かせて行っていたが、近年は機械化されて、代掻く牛馬を見かけなくなった。
花水木(はなみずき《はなみづき》  「夏-植物」
杉山 満
オープンカー缶を引きずり花水木
【永田満徳評】
「缶を引きずり」に、新婦と新郎が「オープンカー」に乗って、結婚式に参列した人達をあとにして、新婚旅行に旅立ってゆく情景が見える。しゃれた明るさのある「花水木」がその情景に彩りを与えている。
【季語の説明】
「花水木」は北米原産で、日本へは明治に贈った桜の返礼として贈られてきた木。白と紅があり、4枚の花びらの先に切り込みがある。庭木や街路樹として、新緑も紅葉も赤い実も枯れ姿も四季折々楽しめる。花水木の名は水木の仲間で花が目立つことに由来する。古来の山地や雑木林に自生する水木とは別種である。
 
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「くまがわ春秋」2023年4月号 〜 「文學の森大賞」を受賞して 〜

2023年04月06日 01時59分22秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」

「くまがわ春秋」2023年4月号!

〜 「文學の森大賞」を受賞して 〜

内容:
【「文學の森賞」の大賞を受賞して】
①受賞の挨拶
②『肥後の城』の特色
③『肥後の城』抄(30句)

「文學の森大賞」を受賞して

                     永田満徳

このたび、句集『肥後の城』が第十五回「文學の森大賞」を受賞した。名誉ある大賞を頂き、身の引き締まる思いである。

「文學の森賞」は月刊「俳句界」を発行している文學の森にて刊行されたすべての書籍を対象に選出する賞である。俳人協会賞の最終候補に残った千々和恵美子氏の『飛翔』と同時の受賞である。

『肥後の城』(文學の森・令和三年九月)は『寒祭』(文學の森・平成二十四年)に次ぐ、第二句集である。平成二十五年より令和三年までの三四四句を収めた。二十五年間の句業の集大成である『寒祭』に比べて、短期間の句業を収めることができたのは、インターネットやSNSなどの情報通信技術の恩恵に浴するところが大きい。

私が代表を務める「俳句大学」では、例えば、インターネットの「俳句大学ネット句会」、或いは、 Facebookの「俳句大学投句欄」に於ける、講師による「一日一句鑑賞」、会員による「一日一句互選」や週ごとの「席題で一句」「テーマで一句」「動画で一句」、特別企画の「写真で一句」などに投句し、講師として選句も担当してきた。私の作句数は月に五〇句を超えることがしばしばで、八年間で五〇〇〇句以上の俳句を残せた。近年のコロナ禍にあっても、より積極的に、より活発に活動できた。

本句集は、平成二十八年四月に起こった熊本地震の句を起承転結の〈転〉の部分に当てるつもりで編集を進めていた。一度は文學の森で初校まで出来ていたところ、令和二年七月、郷里の人吉を大水害が襲ったため、二つの大災害を悼むことにした。さらに、「未来図」の鍵和田秞子主宰の「あなたは熊本にいるのだから、熊本城や阿蘇、天草を詠みなさい」というご助言や元熊本大学教授で「火神」主宰の首藤基澄先生の遺句集とも言うべき『阿蘇百韻』(本阿弥書店)に背中を押されて、熊本城、阿蘇、天草を詠み込んだ句を多く残すことにした。テーマ性と郷土色を盛り込んだ内容の読物になるように心掛けたと言ってよい。その意味で、熊本の多くの人に読んで頂きたい気持は強い。

また、熊本在勤時代に夏目漱石が語ったとされる「俳句はレトリックの煎じ詰めたもの」に倣い、連想はもとより、擬人化・比喩・デフォルメ・空想・同化などを駆使して、多様な表現を試みた。

この内容と表現において、本句集がどれほど成功しているかは覚束ないが、この大賞を励みにチャレンジしていきたいと思っている。

 『肥後の城』抄(30句)

北斎の波の逆巻き寒戻る

この町を支へし瓦礫冴返る

阿蘇越ゆる春満月を迎へけり

曲りても曲りても花肥後の城

城といひ花といひ皆闇を負ふ

春筍の目覚めぬままに掘られけり

こんなにもおにぎり丸し春の地震

水俣やただあをあをと初夏の海

むごかぞと兄の一言梅雨出水

骨といふ骨の響くや朱夏の地震

本震のあとの空白夏つばめ

さつきまでつぶやきゐたるはたた神

昼寝覚われに目のあり手足あり

大鯰口よりおうと浮かびけり

立秋やどの神となく手を合はす

象の鼻地に垂れてゐる残暑かな

ばつくりと二百十日の噴火口

野分あと雲は途方にくれてゐる

あぶれ蚊の寄る弁慶の泣きどころ

あけぼのの音とし残る虫の声

日田往還中津街道彼岸花

指につく粘着テープ憂国忌

大鷲の風を呼び込み飛びたてり

冬麗のどこからも見ゆ阿蘇五岳

左義長の余熱に力ありにけり

大寒のひとかたまりの象の糞

寒風にぼこぼこの顔してゐたり

巌一つ寒満月を繋ぎ止む

朝日差す富士のごとくに鏡餅

喧嘩独楽手より離れて生き生きと

※「くまがわ春秋」2023年4月の表紙

 

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〜 季語で一句 41 〜   2023年『くまがわ春秋』4月号

2023年04月05日 01時18分26秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」

俳句大学投句欄よりお知らせ!

〜 季語で一句 41 〜
 
◆2023年『くまがわ春秋』4月号が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明

季語で一句(R5.4月号)
 
凧(たこ)          「春-生活」
 
中野千秋

切れ凧や男のためにもう生きず
【永田満徳評】
「凧の空女は男のために死ぬ 寺田京子」という句とは反対で、どんな深い中であったとしても、「切れ凧」のように、縁が切れればそれまでである。未練なく、縁を切る「女」の潔さが窺われて、心惹かれる。
【季語の説明】
「凧」とは春風の力を利用して空中に揚げるもので、木や竹などの骨組みに紙・布・ビニールなどを張って作られる。江戸時代中期以来、神事と結びつき村ごとの凧揚げ合戦など、村同士が互に絡ませ合って、相手の糸を切り墜落させる凧合戦なども行われた。やがて凧は子供の玩具となり、形や絵柄も多彩になった。
 
 
蜂(はち)                  「春-動物」
 
西村楊子

女王蜂邪馬台国に說二つ
【永田満徳評】
「蜂」は一匹の女王蜂と多くの働き蜂で構成されている。「女王蜂」のような卑弥呼が君臨する「邪馬台国」の所在地が九州説と畿内説とに分かれていることを踏まえて、女王蜂をおもしろく取り合せている。
【季語の説明】
「蜂」が花から蜜を採集し、巣が蜂蜜を蓄え、人が蜂蜜を採る。人を刺す蜂として有名な「スズメバチ」「アシナガバチ」「ミツバチ」、危険性の低い「クマバチ」など、多種多様な蜂が生息している。スズメバチとアシナガバチは幼虫のエサとして昆虫や蜘蛛などを狩る狩り蜂で、ミツバチは花の蜜を集める花蜂である。
 
ものの芽(もののめ)     「春-植物」
 
野島正則

ものの芽や地球誕生四十億
【永田満徳評】
「ものの芽」は春の大地の息吹である。天体という大きな「地球」と、小さな生命体である「ものの芽」との取り合せ。地球の誕生とその地球に育まれる生命の誕生とのドラマが描き出されていて、心惹かれる。
【季語の説明】
「ものの芽」は早春に萌え出るもろもろの草木の芽のことで、春の訪れを実感することのできる言葉。春は多くの植物が芽吹くが、これという特定の草木のことではない。草の芽が地中から萌え出ることとする歳時記もある。「木の芽」、「草の芽」は別の季語。ものの芽というと、春の実感を感じ取れる句にするのが難しい。

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〜 季語で一句 37 〜 ◆2023年『くまがわ春秋』1月号◆

2023年01月10日 06時19分00秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
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〜 季語で一句 37 〜
 
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明

季語で一句(R5.1月号)
 
炭(すみ)        「冬-生活」
 
岩永静代
語部の不意の沈黙炭火爆づ 
【永田満徳評】
最近では炭火焼きする専門店なども増えている。「語部」が囲炉裏端で戦時の話をしているのか。過酷な経験を語り始めた途端に言葉に詰まり、「沈黙」した瞬間の間合いが「炭火爆づ」で切り取られている。
【季語の説明】
「炭」は木材から水蒸気やガスが抜けて炭素のみが残ったもの。加熱した時に発生するガスに火がついて、灰になることなく炭ができる。日本では約30万年前の遺跡からも炭が発見されている。茶道や日本刀の製造や鍛冶場などでも使われ、近年は脱臭効果、水を綺麗にする、土に混ぜて畑に撒くなどの使い方もある。
 
 
年の市(としのいち)   「冬-行事」
 
西村楊子
「まけまっせ」「もう一声や」歳の市
【永田満徳評】
「歳の市」は現在、商店街の歳末大売り出しのこと。売り手と買い手の声が飛び交う様子を「まけまっせ」「もう一声や」という、ただ声の内容だけで表して、景気のいい「歳の市」を活写しているところがいい。
【季語の説明】
「年の市(歳の市)」は江戸時代初期から始まった歳末行事で、昔は社寺の境内やその脇道などで開催される大市のこと。しめ飾りを始めとする正月飾りや、年始祭に必要な品、お餅、海産物、乾物、衣類、雑貨などの、お正月用品を販売する歳末の行事で、「晦日市」「暮市」「節季市」「詰め市」などとも呼ばれている。
 
 
枯木(かれき)      「冬-植物」
 
杉山 満
名湯へ残り五キロよ枯木星
【永田満徳評】
枯れ木の間に見える「枯木星」は美しい。「名湯」は山深いところにあるが、「五キロ」が微妙で、遠すぎず近すぎず訪ねるには程よい距離である。「枯木星」を眺めながら、秘湯の道を巡る旅には心惹かれる。
【季語の説明】
「枯木」は立ち枯れの木のことではない。春から夏にかけて緑の葉っぱが茂り、秋に紅葉する落葉樹は気温が下がると、葉が枯れ落ちる。枯れてしまったように見える落葉樹を枯木立という。幹と枝になった枯木は見通しが良くなり、日差しを遮るものがなくなり、周辺が明るくなる。樹木は一定の休眠期間後に新葉をだす。




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〜 季語で一句 37 〜『くまがわ春秋』12月号

2022年12月07日 14時49分31秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
俳句大学投句欄よりお知らせ!
 
〜 季語で一句 37 〜
 
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
 
季語で一句(R4.12月号)
 
露(つゆ)           「秋-天文」
大工原一彦
「さよなら」とクルマの窓の夜露かな 
【永田満徳評】
「露」は〈儚さ〉という要素がある。永遠の別れではなくて、単なる、その場の別れであろう。「露」という季語によって、二人の関係があまり長続きのしない、危ういものであることをおもしろく表現している。
【季語の説明】
「露」は空気中に含まれている水蒸気が放射冷却などの影響で植物の葉や建物の外壁などで水滴となったもの。物に露が着くことを結露という。一日の内でもっとも気温が下がるのは夜明け前。露を見つけやすいのは朝で、朝露といわれる。夜になってからでも、露が降りることも少なくないが、夜間の露を夜露という。
冬の山(ふゆのやま)      「秋-地理」
桧鼻幹雄
相棒はトリスの小瓶冬の山 
【永田満徳評】
「冬の山」の楽しみは登山であろう。冬の山の寒さは尋常ではなく、ウイスキーで体は温めようとしているのである。「トリスの小瓶」を「相棒」と呼び、切って切れない関係を示し、一息入れているところがいい。
【季語の説明】
「冬の山」の魅力は強風が作り出す独特の景色にあり、空気が澄んでいて遠くまでよく見える。本格的な冬に向かうと、日本の山は日本海側を中心に、深い雪に包まれる。夏山からは想像できないような異次元の銀世界が広がり、神々しさ、荘厳さを感じる。雪が被らない低山では、草木が枯れ、殺伐とした姿となる。
鷹(たか)         「秋-動物」
茂木寿夫
鷹一羽千羽の野鳥飛び立てり
【永田満徳評】
「鷹」は鋭い目つきで遠くの獲物を見つけ、捕えることができる。鷹は多くの野鳥にとって恐怖そのものである。「一羽千羽」と数詞で、鷹の出現によって多くの野鳥が右往左往している様を的確に描いている。
【季語の説明】
「鷹」はタカ目タカ科。昼行性猛禽の内、中・小形のものの総称。曲がった鋭い嘴、脚には強い爪を持つ。鷹といえば「大きい」「かっこいい」「強い」といったイメージがあるのは、肉食性であり、他の動物を捉えて食べる習性があるからであろう。古来、鷹狩が冬の季語として定着していたから、鷹も冬となったという。
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