みつばちマーサのベラルーシ音楽ブログ

ベラルーシ音楽について紹介します!

トーダルが日本の思い出をラジオ番組で語りました

2008年05月05日 | トーダル
 3月14日、トーダルがパーソナリティをつとめるラジオ番組「簡単な言葉」内で、日本の思い出を自ら語りました。
 この番組はベラルーシのラジオ局で、毎週金曜日(土曜日と日曜日に再放送。)トーダルが音楽を交えながら、自作の作品やリスナーからのお便りをベラルーシ語で語る番組です。
 
 「日本の思い出」を語ったトーダル。その「滞在記」はもちろん自ら執筆したベラルーシ語の小作品。
 マーサの書く長い長い「"アリガトゴザイマシタア!"日本滞在記」とはえらい違いです。(文章にやっぱり性格が出るよ。)
 散文詩みたいなんだよね。こういう文章は翻訳が難しい(でも訳しながら笑ってしまった・・・。)のですが、日本語に訳しましたので、どうぞご覧ください。
(途中の♪♪♪マークは放送中、音楽やCMが流れたところを表しています。)

・・・・・・

 四国という島にある高松という町は、日本の町の中では小さいほう。そこに屋根のついた商店街がある。長さは2キロメートル。車は通らないけど、人はたくさん歩いている。いろんな店。もちろんマクドナルドもある。マクドナルドがないわけないよね。
 僕はお土産はだいたい買っていたから、買い物はもうする必要はなかった。
 でも、職業病だ。
 楽器店を見つけてしまったら、もう入らずにはいられない。
 ああ、入らなければよかったよ。
 そこで、こんな感覚の真っ只中に落ちていった。その感覚は・・・真剣なもの。そう、愛。そう、冒険。そう、盲目。・・・そして前払い。
 アメリカのギターを買った。赤いギブソンを買った。たくさんのお金が両替された。
 今となっては、僕は自分自身を何が何でもスーパースターにしなくてはいけない。
 そう努力しないと、このギターにそっぽを向かれる。
 そんなギターを買ったんだ。
 この日、高松はソリストの自分にとっての聖地になった。

 本州に戻る車中の僕の隣にはギブソンのギター。
 この現実に気が狂いそうになった。
 これを見たら、みんな気が狂うんじゃないか。
 ここ日本で何かが起こったんだ。
 分かるだろうか。
 ベラルーシ人の僕が日本で、アメリカ人が作った赤いギターの持ち主になるなんて、現実のことなんだろうか。
 
 目の前に四国と本州を結ぶ世界最長の吊り橋。
 窓の向こうには森に覆われた高い山。
 こんな高い山の上に何か建てることは、僕にはできない。
 でも日本人はちゃんとした家をたくさん建てて、その中で幸せに暮らしている・・・。
 神よ、日本人に幸福を与えたまえ。
 ベラルーシ人にも幸福を・・・。

♪♪♪

 特別に日本料理の話をします! 約束します! この番組のリスナーのみなさん、本当に約束します!
 でも、僕が日本で食べたもの、全てについて話すだけの気力はない・・・。
 自分の持つ語彙を掘り返すようにして探さないといけないから。
 日本料理は種類が多い。そしてとてもおいしいんです。とにかくいろいろです。魚、肉、野菜、果物。
 ただ、ときどき日本人は洋食を食べます。休みの日なんかに洋食を食べて、特別な気持ちを味わう。
 日本人もベラルーシ人もそれぞれ、自分の国にないものを夢見てしまうわけですね。
 ・・・まだ、日本料理の話をしますよ! 後で必ずします!

♪♪♪

 旅先から京都へ帰ったとき、何週間か過ぎたような気がした。この二泊三日はそれは内容が濃かったので。
 たくさんの思い出の収穫。いろんな地方のことを知った。僕にとっては普通じゃないものを見た。高速道路、トンネル、速く走る車、大きい寺、小さい寺。
 京都へ戻ったとき、家に帰ったような気がした。まるでネマン川のほとりに来たような気持ちがした。旅が終わりに近づいた。

♪♪♪ 
 
 友達がミンスクの空港へ僕を迎えに来てくれるって。でもそこまでの旅の延長線上に待つのは3台の飛行機。これがスーパースターの生活スタイル。これに早く慣れないと・・・。
 人生について考えないと・・・。
「なあ、トーダル、旅をするのは好きかい? 飛行機で飛んでいくのが好きかい? 船で泳いでいくのが好きかい? 新幹線の座席に座るのが好きかい?」
 比べよう。ベラルーシ人と日本人を。
 僕たち、日本人からたくさん学ばないといけないよ・・・。
 日本国内を1000キロも移動した。
 ベラルーシ人、そしてその近隣諸国の民族たちよ、君たちはきっとどうしてなのか理解できないだろう。
 ここ日本では造るのが不可能な場所に高速道路を造る。建設不可能な場所に家を建てて住んでいる。高い水準の生活だ。

 村の学校へ行った。生徒の数は250人。
 そこで僕が何を見たか・・・。言葉では表現できない。
 先生たちは、ベラルーシの村の学校の先生と同じだったけれど・・・。

 車の中で、日課であるロシアのユーモア短編集とポーランド語の詩集を読んだ。ふと窓の外を見て思った。日本での滞在はもうあと3日しか残っていない・・・。

♪♪♪
 
 僕のホテルはとてもいいホテルだった。窓から見える景色はすばらしかった。インターネットに繋がる宿泊客共同のコンピューターもあった。
 窓の外に漢字が見えた。山の木を少しだけ切ってつくった「大」という漢字。
 その山のふもとには二階建て、あるいは三階建ての木造の家が並んでいる。

 京都の通りはとても狭くて、日本の消防車も小さくて幅が狭い。
 ベラルーシのMAZ社のトラックは京都の道は通れない。
 でも、そんなこと、日本ではどうでもいいことなんだ。
 日本で最も重要なのは日本人。

 ベラルーシ人は日本人のことを、プログラミングされていて、機械の部品、ネジの一つのように生きていると思っているでしょう?
 でも、日本人はベラルーシ人と同じように、人それぞれに生きています。
 曇りのない目で日本人を見てください。
 特に日本のお年寄り、おじいさん、おばあさんを見てください。
 日本のおじいさんは80歳になっても、ベンツを運転しています。
 ビジネスマンの人もいます。
 日本のおじいさんは小ぎれいでおしゃれです。
 微笑んで、人生を楽しんで、可能性をあきらめず、世界中を旅行しています。
 トランクなんて持ちません。空港で預けて身軽に旅に出ます。
 遠い国のホテルに行きます。
 キャノンのカメラを巧みに操ります。
 今日はマイアミ。
 明日は北京。モスクワ、クラコフ、パリ、リオデジャネイロ、モナコ、リダ、ミンスク、ベレゾフカ、ネマン・・・という予定です。
 日本のお年よりはみんな若いですよ。
 日本人のことを、プログラミングされた機械だと思いますか?
 ところで、日本の水はおいしいですよ。水道の蛇口から出る水をそのまま飲めます。とてもおいしいですよ。

♪♪♪ 

 日本人はベラルーシに来ると、クリョーツキ(ベラルーシ料理。じゃがいものお団子)にカッテージチーズ、サワークリーム、マヨネーズを食べる。
 日本人はベラルーシのマヨネーズは日本のよりずっとおいしいと言っている。驚きだ。
「100年生きて、100年学べ」とはよく言ったものだ。ベラルーシ人は何も知らなさすぎる。

日本人は西洋料理が好きで、ちゃんとフォークとナイフで食べる。僕は2週間の滞在中、箸を手放さなかった。箸を手にすることが大好きなんだ。
 ミンスクで僕は黒パンとサーラ(豚の脂身の塩漬け)ときゅうりのピクルスを食べる。日本では海の幸を1年分ぐらいまとめて食べた。魚、えび、イカ、カニ、大きい貝、何か分からないけどすごくおいしいもの。生で新鮮なもの。日本で食べたもののことは一生忘れない。
 ベラルーシ人は日本へ行ったら、何でもたくさん食べてみよう。
 日本と友好関係を結ぼう!
 文化交流を! 食文化交流を進めよう!
 両国の友好を自力で進めよう! 
 ベラルーシ人は日本人にハラドニクを!(冷たいスープ)
 日本人はベラルーシ人に刺身を!
 ベラルーシ人は日本人にマチャンカを!(煮込んだ肉にホットケーキをつけたような料理)
 日本人はベラルーシ人に鍋料理を!
 鍋とは日本の「底なしスープ」料理のこと。
 ベラルーシ人は日本人にトーダルの音楽を!
 日本人はベラルーシ人に村上春樹の文学を!
 日本人はベラルーシ人にデリカテッセンを! 何事も最後までやり遂げる力を!
 日本とベラルーシの間に同盟を!
 アメリカはベラルーシのことを、ならず者国家と呼んでいる。でもそんなことは、もうほうっておいて、これからは日本と友情を!

♪♪♪

 ブーン、ブーン・・・今、僕は飛行機の中。
 日本では全てうまくいったという感触。完璧だった旅。
 今こんな気持ちのときに、飛行機がシベリアなんかに墜落してほしくない。
 ウイーンまでまだ6時間。ノリリスク上空。
 僕は映画を撮りたい。映画をつくるって決めた。自分で、ベラルーシ映画を。
 東洋の日本が僕に言ったんだ。
「その手にカメラを持て。映画を撮れ。」
「そんなこと、できるだろうか?」
「ベラルーシ風のベイルマンか、クロサワのベラルーシ版。あるいはその両方。」
これが西洋のロシアが僕に言った答え。
 とにかく小さな作品をつくってみよう。それからどうなるか様子を見よう。
 映画の音楽は自分が担当しようかな。それとも、僕は監督で、作曲は誰かに頼もうかな。他の人にも稼ぐチャンスを与えないと。
 今日は人生で一番長い日だった。太陽を追いかけた、僕の人生の中で最初の最長の日。
 デビュー作品のタイトルはこれで決まった。
 「我が人生最長の日」
 僕のお母さんが窓辺に座って、眼鏡をかけて、孫にあげる靴下を編んでる映画でもいい。
 こんな作品、本業で映画監督やカメラマンをしている人たちに笑われるかな?
 世界はおもしろい。
 人間はおもしろい。
 京都もウイーンもミンスクもおもしろい。
 ブーン、ブーン・・・飛行機が飛ぶ・・・

 
・・・・・・ 

 以上です。
 ・・・まあ、私から言わせれば
「トーダルよ、君はギターの前払いなんかしていないし、両替もしなかったぞ! 君がしたのは・・・・・・借金だ・・・!!!」

 それから、文中の「MAZ社」についてですが、サイトはこちら。トラックやバスの画像が見られます。確かに大きい。

http://www.maz.by/


 それから、トーダルが文中に書いたベラルーシ料理ですが、日本人にはなじみがないものばかりなので、近いうちに画像だけでもアップします。

 


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