走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

アドバンスケアプランとコロナ

2020年05月04日 | 仕事


オンライン診療が始まって7週目となります。私の患者層には高齢者があまりいないのですが、同じクリニックで働く医師3人に聞くと、高齢者たちはこのオンライン診療をことの外喜んでいる、と言う。

何故って外出しなくて良いから。殆んどの高齢者がこの6週間、家から一歩も出ていない、と言う。買物もデリバリーに頼ったり、近所に住む家族が買ってきたり、薬も薬局から配達してもらい、、、と外へ出る理由がないそうだ。おかげでコロナに感染する事もない、と喜ばれているそうだ。

感染者では中高年層が多いけれど、死亡者はダントツで60代以上が多いのがこのコロナ。家から出たくない気持ちはよくわかる。さて高齢者と言えば介護施設。介護施設でのクラスター感染はどこの国でも起こっている。で、その介護施設でコロナに感染して重症化した時、患者は救急病院へ搬送されるのか?カナダではその確率は極めて低いのです。介護施設に入所していると言うことは、なんらかの疾病や障害があり日常生活の自立ができないから。このような方々はコロナに限らず健常者に比べて重症化した時に回復する可能性が低いので殆んどの人がアドバンスケアプラン(ACP) で心肺蘇生の拒否、高度医療(ICU入院)の拒否、急性期病院への転送拒否を示しているからだ。

年齢で生き死にを分けられるのか?と理不尽な思いになりますか?「疾病や障害で日常生活の自立ができない高齢者」と書きました。もし高齢者でも自立していて慢性期疾患もなくて活動的な方もいます。そういう人はこのカテゴリーには入りません。逆に若くても回復不可能な疾病に罹患した時に拒否の意思表明をします。それにACPは誰かが決めるものではなく、本人が決めるものですから健常な高齢者でも先のケアを拒否する事を提示している人もいるのです。「自分は十分に生きた。自然なままで死にたい」と。今回のコロナでICU施設が機能不能になる程入院者で溢れない理由はこれも関係していると思います。

もちろん3月下旬のロックダウンが始まる頃はコロナ症状緩和ケアのガイドラインも出されました。呼吸苦に対する薬物療法です。急性期病院へ行かなくても苦しまずに死ぬことができる。これは本人にも家族にも安心できる必須アイテムです。だから住み慣れた場所で旅立つ覚悟ができると言うものです。

アドバンスケアを考えたことはありますか?高齢者になった時、回復不能な病気になった時、考え、家族にその意思を伝え、書面に残す事を強くお薦めします。





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