何となく奈伽塚ミント・純情派

不覚にも連続更新ストップ。
少々夏バテ気味だったし
定期更新に切り替えかも?

そんなこんなで奈伽塚ミント

「最終電車」

2006-06-28 12:38:23 | 詩のような物
 真実不可能なことなど存在しないと
 私にそう教えたのは誰だったろう。
 純粋に信じていた
 糧として素直に生きてきたつもりだった。

 その言葉が偽善で詭弁で仮初めの嘘だと
 私がそう気づいたのはいつだったろう。
 純粋に信じすぎた
 砕け散ったものはそう簡単に直せなかった。

 光の全てを捕食せんと闇が襲い
 逃げ惑えば惑うほど
 楽しむように蹂躙していく黒い影。

 狂った羅針盤はもうどこも示してくれず
 荒れ狂う大海のど真ん中で
 船は見る間に蝕まれていく。

 私の力じゃ出来ないことは多すぎて
 今や徐々に出来ることまで出来なくなって
 物語は急速に結末へとページを繰る。

 どこから間違っていたのだろう。
 思い返して思い出せず
 あるのはただ色褪せた記録だけ。

 明日への定期券は期限切れらしく
 もう空席には座れない。
 私を置いて旅立っていく人々に
 精一杯の作り笑顔で手を振った。

 静まりかえったホームに残され
 思い立って線路へと飛び降りてみた。
 立っていることにさえ疲れてきて
 ばたりと仰向けに倒れ込んだ。

 星一つ無い夜空を見つめ
 無気力を体中に溜め込んで
 全身の力を抜く。
 遠くからがたがたと空気振るわす音を聞いた。