何となく奈伽塚ミント・純情派

不覚にも連続更新ストップ。
少々夏バテ気味だったし
定期更新に切り替えかも?

そんなこんなで奈伽塚ミント

『短期連載小説』始めました!(2)

2004-06-18 02:24:26 | 『短期連載小説』
    「Dear My Hero」
              (第ニ回)

 その日私は,彼を待っていた。
 自分から行動する勇気は持てなかったけど,彼を待つことぐらいならできた。
「おはよう,瀬戸さん。……あれ。今日は本読んでないんだね」
「……おはよう」
 私が初めて彼に言った言葉は,とても小さくて,平凡で,ほんの些細なものだったけれど,
「うん,おはよう」
 彼は笑って答えてくれた。

 それから私は少しずつ彼と話をするようになった。
 ……と,いっても今までロクに人付き合いもしてこなかった私。何を話せばいいのか――なんてことすら分からなくて,それは本当に少しずつだった。だけど自分でも何かが変わってきていると思い始めていた。

 彼と過ごす時間が増えていくにつれて,私は一生懸命に物事に取り組むようになっていった。
 クラスメートとも話をするようになっていって――
 気がつけば私は,クラスに溶け込めていた。

 あまりにも長いと思えていた中学校生活も,彼やみんなと過ごすならあっという間に過ぎてしまうのかな。
 そんなことすら思えるようになっていた。
 全部彼のおかげ。彼がいたから。
             彼は私のヒーローだった。

 “ありがとう”そう伝えたかった。
 だけど,気がつけばヒーローはどこにもいなかった。
 私の前から彼は消えた……。

 私は彼を探した。
 クラスメートに,先生に,手当たり次第に彼のことを訊いた。
 ……誰も“長野 遼”という人物を知らなかった。

 私はまた,以前のような冷たい人間に戻っていった。
 そして,進級した。

 そこで私は,また長野君と出会った。
 彼は,また私を変えてくれた。
 ――きっと彼は魔法使いなんだ。
 そんなことを本気で思ってしまうぐらいに彼は不思議だった。

 だけど魔法はとけてしまった。
 彼は一年前と同じように,誰の中からも消えた。私以外の……。

 私は三年生になった。
 ヒーローは,魔法使いは帰ってきた。
 私は三度,長野君に巡り合った。

 私は,また変わっていくにつれて,長野君がまた消えてしまうと思った。そして今度は,もう会えないとそんな確信めいた気持ちがあった。
 だから私は彼に言った。
「ねぇ,もう消えたりしないで。私と一緒に卒業して」
 彼は寂しげな笑みを浮かべた。それはなんだか,いつもの彼とは違って儚げで今にも消えてしまいそうだった。
「分かった。一緒に卒業しよう」
 でも彼はそう言った。そう言ってくれた。

 それからの一年は本当にあっという間だった。
 卒業が一日,一日と近づいてきて――私には何となく分かっていた。彼との別れも一日,一日近づいていることが。――(続く)
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2 コメント

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いやぁぁぁぁ~~~ (魔女)
2004-06-18 22:03:36
早く、続きが読みたいざんすぅ!!!
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 待ってる (奈伽塚ミント)
2004-06-19 01:40:08
 第三回公開したよん♪けどまだ第四回があるから,続くのだ!また気になっちゃうかも――まぁ,早いとこ最後まで公開するからよろしくだね。
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