ターザンが教えてくれた

風にかすれる、遠い国の歌

言葉では云えない

2006-02-11 00:33:44 | モノローグ
友人から聞いたある夫婦の話です。

その夫婦はもともと東京の人で、ご主人の仕事の関係で今は大阪住まい。
ご主人はハンバーガーチェーンの新規店を立ち上げる仕事に
たずさわる社員さんでものすごく忙しいんだそう。
どのくらい忙しいのかと言うと、聞いてほんと驚いたんだけれど、
家に帰るのは毎日午前2時くらいで、もう一日の疲労でへろへろ、
玄関入って廊下に服を脱ぎながらお風呂場へ、
奥さんはその廊下に点々と散った汚れた服を洗濯かごへ拾い集める毎日。

ご主人は軽い夜食を食べる間も惜しむようにベッドへ倒れこむ。
奥さんがさっきご主人が使った洗面台を見ると、
歯磨きチューブの蓋がはずして使ったまま投げ出してあるのだそう。
それを戻す気力も無いほどに疲れているのです。
そしてようやく眠りをむさぼるのもつかの間、
朝6時にはまたいつもの過酷な仕事が始まるのです。

そんな日が月曜から土曜日まで続きます。

お天気の良い日曜日、奥さんは幼い子供と一緒に早起きをすると、
なるべく静かに朝食を食べた後、身支度を始めます。
その気配に気付いたご主人が起きて来ると
お天気も良いので子供をどこか連れて出掛けようかと笑顔で言うんだって。
でもその顔は疲労で土気色、まるで死人のようです。
奥さんはもちろんその申し出は笑顔で断り、ご主人をベッドへ返します。

眠るご主人をなるべく起こさないように出掛ける二人が向かうのは近所の公園。
その公園で奥さんと子供は日がな一日を過ごすのです。
ご主人が静かな家でゆっくりとゆっくりと眠れるように。

いつも仕事ばかりでごめんなって言う声が聞こえる。
そして、奥さんもちゃんとその声を聞いてるのだと思う、
その安心した寝息の中に。


言葉では云えないもの・・・。 すごいね。



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