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ターザンが教えてくれた

風にかすれる、遠い国の歌

雨の夜にはライトが増える

2008-04-07 20:39:27 | 風に走る


雨の夜、道路を行き交う車のライトは
濡れたアスファルトに反射してその数が倍に増える

そうか、だから雨の夜道はキラキラしてるんだ

ゆるやかに走る車の流れは
どれも家路を急ぐテールライトばかりに見えるね

ずっと向こうから来た道路は
自分の足元をすくうと
気が向いたなら
今すぐにでもここから歩き出すことが出来るように
まっすぐに伸びる、どこまでも伸びる

水分をたくさん含んだ風が傘を舞い上げて
そのたびに、
街路樹の葉っぱが小刻みに揺れる

春の夜に降る雨はなんだか遠慮がちだなぁ
小さな雨粒が、よそ見をしている間に道を濡らして
音も立てずに静かに降ってくる

近所のスーパーマーケットで
ひとしきり買い物を済ませると
店の前の横断歩道を渡ったら
今来た道を引き返して歩く

雨の夜に道路を行き交う車のライトが
濡れたアスファルトに反射してその数が倍に増える

だから雨の夜道はキラキラとしてるんだ

ゆるやかに走る車の流れは
どこかへ向かう途中のヘッドライトばかりに見えるね

昨日やり残したこと、今日抱え込んだもの
そんなものを車のライトで照らしながら
一日の終わりはこれからまだまだ先なんだよと
雨の夜の中を真っ直ぐに走って行く

風になびいた
電線の雫が一斉に傘に弾む


少し雨が強くなってきた

僕も早く家に帰ろう



今夜はカレーだぁ


すってんころりん

2008-03-01 00:07:49 | 風に走る

本日は、南風が吹き始めたとかで
朝から順調に気温は上がって、
本当にいよいよ春なんだなぁって思う一日でした。

東京湾から内陸に向かう湿った潮風は、
もうしばらくすると、
この街にも海の香りをさせるわけです。

なんだかソワソワと落つかない春の夜、
思わず散歩へと誘うぬるい夜風の季節が
すぐそこまで来てるんだぁって思いながら
一日が過ぎる今日この頃ですけども・・・

あの、

ワタクシこの前自転車で転びました。

まだ寒い1月の終わり頃、夜の8時くらいかな、
いつものジムへ行こうと暗い夜道を
自転車ですっ飛ばしていて、
それはもう派手に転倒しやしたね。

隅田川沿いの道路をずっと走って、
ようやく目的のジムはすぐそこってあたり、
最後のスパートとばかりに、住宅地の夜の公園、
このあたりはかれこれもう3年ほど通っているので、
勝手知ったる何とやらで、あんまり用心もしないままに
鼻歌なんかを歌いながら暗い公園をぶっ飛ばしていましたら、
公園を抜ける最後の最後、闇に隠された歩道の段差。

自転車の前輪が地面から離れてぐらっと身体が傾いて、

「しまった」と思う間もなく、
自転車と一緒に右に大きく傾いたまま
地面に叩きつけられてしまったよ。

段差につまずいた自転車は、
そのままタイル張りの歩道を滑って、
身体もろとも車止めの柱に体当たりして
ようやく止まったんだけど。

右足がね痛いの。
あれぇ、動かないっすよん。

そのままで起きられないから、
真っ暗な公園の歩道で
自転車と一緒にしばらく転がっていたんだよね。
もうどうしようかと思ったなぁ。

痛いんだけど、それよりも転んだショックだね、
こういう時には。
びっくりしてさ、ものすごく心が動揺してんの。

しばらく動かずにいたら、
なんとか足にも感覚が戻ってきたので、
身体の反動をつけながら
一気に起き上がってみる。

大丈夫、大丈夫、骨は折れてない、折れてない。

痛いなぁって思いながらも、
ゆっくりと自転車に乗って向かうはいつものジムだよぅ。

だって、目の前なんだもん、すぐなんだもん。
このために30分も自転車を漕いで来たんだもん。

これしきの事と根性で乗り切ることが出来るほど、
自分は若くないことはね、十分知っているんだけども、
その時にはすでに脳内モルヒネがばんばん出ていたらしく、
だんだん痛みを感じなくなっていたんだもん。

いつものように着替えてタオルを持って、
それで、ジムのトレーナーを捕まえては、
「転んだ、転んだ、そこで転んだ、でも、大丈夫」と
ひととおり聞いてもらったら、なんだか少し安心してね、
じゃ今日は足以外の上半身だけトレーニングしてみようかね、
などと余裕でやり始めてみたんだけれどもさ、
ショルダープレスなんかで肩に負荷をかけていても、
結局、身体は足を使って踏ん張るわけですよ、ね。

やっぱり痛いですよん、すっごく。

何をやっても結局この右足が踏ん張れなくて痛いわけですよ。

ん~、これじゃダメだなぁ。。。

って、ここでようやくこんな足でトレーニングなんてやっては
いけないんだということが理解できた自分。

様子を見ていたトレーナーにすごく心配されながら、
ようやくジムを後にして、
さぁなんとかして家まで帰るぞと
気力を振り絞って自転車へまたがるも、

膝が曲がりませーん。

なんだか曲げようとすると筋が張って、
ピーンって、これがまたすっごく痛いですよ。

さぁ困ったぞ。

家は遠いぞぉ。と、

結局、なんとか自転車に乗って、
片足だけでペダルを漕ぎながら、
ほうほうのていで家まで帰り着くのでした。


    
駅のホームにある真新しいエレベーター、
あれをさぁ、初めて使ったよ。

骨折はしていないので何とか歩くことは出来るんだけれど、
やはり、動くたびにこの右足がねビッキーンと痛いわけです。
道を歩くのも、ほんとゆっくりで、
足を踏ん張ることが出来ないので、
転ばないように転ばないようにと、
それはもう、細心の注意を払いながらの歩行訓練。

お年寄りってこんな気持ちで道を歩いてるんだなぁって思った。

あのね、街中って上がったり下がったりと
段差ってやつがたくさんあるんだね。
普段は何とも思わずにしゃかしゃか歩いてるんだけれども、
こうやってちょっと不自由な足どりになると、
そのほんのわずかの段差がつらいんだよね。
こう、ちょっとだけ足を持ち上げる動作とかが
逆に痛い足に負担がかかってたいへんなんだなぁ。

一日仕事をしてようやく家に帰り着くと、
痛い足はかなりつらいことになっていて、
やはりしたたかに打ってしまったせいで
血液の循環が悪いのか、ジーンズを脱ぐと
腫れぼったくなってるわけよ、痛い足の方がさ。

やはりそんな時は暖かいお風呂がいいよね。
暖めるとずいぶん痛いのが和らぐものだから、
休みの日なんかは、
一日中、それこそ2時間おきくらいに
お風呂に浸かっていたもんね。

そこでさ、ちょっとびっくりしたんだけど、
やれやれとこうやって湯船の中で足を揉んでいると、
ちょっとおかしなことに気付いたんだよね。
足のももから足首のほうまでちょうど
内股の辺りなんだけどね、
ずっと血管がくぼんでいるんだよ。
ももから走る太い血管がこう中身が潰されてしまったかのように
ペッタンとくぼみながらずっと足首へ続いているんだよね。

なんだか怖くてねぇ、

一生懸命にお湯の中でさすってさすって揉んで揉んで、
とマッサージをしていたらそのうちくぼみが膨らんで
もとの肌になってきたから、まぁ良かったんだけどさぁ。

だから一日働いて、
ようやくほっとお風呂に入るたびに、
このつぶれた血管復帰作業を繰り返してた。

確かに気持ち悪いんだけど
その不気味な形状に反して、
まったく痛みとかはなかったのは幸いだったかな。

で、

そんなこんなでなんとか毎日をやり過ごしながら
少しづつ少しづつだけど、
確実に痛みが取れて回復に向かいながらの
約一ヶ月。

自転車には乗れないので
トレーニングにも行けないし、
って言うか、
この足でトレーニング自体が禁止なんだけどね(笑)
でも、自分、どうしてもたまらずに、
家の中でダンベルを使いながら、
自己流のトレーニングはしてました。
これまでずっと定期的に
負荷をかけながら身体を動かしてきたので、
それを中断するのがとても残念だったし、
それに、足の痛みが取れてトレーニングに復帰したときに、
なるべく支障がないようにしておきたかったからね。



で、
先週からようやく復帰しましたよ、ジム。
インターバルができたってのは、
いやぁ、身体って思った以上にすばやく退化するねぇ。
重量も全然持ち上がらなくてさぁ、
身体の動きもてんでしっくりこないし。

それよりなにより、
次の日の筋肉痛がはんぱないっすよん。
ほんと。
朝目が覚めてベッドから起き上がろうとして
とにかく愕然としたもんね、あまりの痛さに動けないの。

でも、まぁこれはこれで筋肉痛でありまして、
あの怪我の痛いのとはまったく違うものだからさ。
どちらかというとこの筋肉痛っていうものは
それだけちゃんと筋肉にトレーニングが効いているってことなので
喜ばしいものなんだけれどもさ、

それにしても、ちょっときついな、これは。

おまけにね、
足のトレーニングは
まだまだ重量を加減しなくてはいけないので、
その分トレーニングのバリエーションを増やそうと思って、
普段はやらない、「アダクション」っていうのかな、
ももの内側で重りのかかっているパッドを挟んで、
パカパカと股を開いたり閉じたりするやつ(ちょっと赤面w)
をやったものだからさ、
こうね、お股のあたりがこれかなり強烈に痛いわけでしてね。

階段の昇り降りもそのせいで
ちょっとつらいことになっているもので、
一旦は卒業していた駅のエレベーターも
ここ数日再び使用していたりしてさ、
まったく何やってんだかねぇ>自分。
って感じなんですけど。。。



気が付いたのは先週かな、

実は、

痛い足を冷やしてはいけないと思って
ずっと履き込んでいたユニクロで買った
ヒートテック防寒タイツ。

これがさぁ、ずっと以前に買ったものだから、
今の自分にとってはちょっとサイズが合わなくて、
かなりピチピチなんだけどもね。

家に帰って、部屋着に着替えようかなと思って、
このタイツを脱いでいたら、
なんと怪我をした右足だけでなく、両方の足の内側に
ももからずっと走る例の陥没血管跡が。。。

どうしよー。

なんだかやばくないかい?

ってかなりあせったんだけど、
ここはひとつ冷静にならなければと思って、
腹の底から深呼吸をひとつしたとこで、
この目に留まる丸まったユニクロのタイツ。

そろりそろりと裏返してみれば、
ちょうどその陥没血管の出来るあたりには
上下に走ったタイツの分厚い縫い目が。。。

。。。(笑)これかぁ!

あはは、あれはただの下着跡だったですねー。

もうかなり真剣に心配したもん、
お風呂に入るたびにしっかりと出来ているその陥没跡を
それはもう丁寧に丁寧にマッサージしてさぁ。
でも、足の回復のためには
それが良かったのかも知れないと思うと、
まぁ勘違いも捨てたものではないのかななんて思います。



とにかく、ここひと月というものは、
そんなこんなでちょっとばかり不自由な生活だったんだけど、
そのおかげでいろいろなことを・・・

なーんていう思いはあまりないです(笑)
怪我はやはりつらくたいへんなものですよ。
今も再びその転倒現場の公園を通って
いつものようにジムに通ってるんだけど、
スピードは以前の半分だもんね。
ものすごく慎重になってる。

思えばその転倒したときってさ、
通いなれた道のり、通いなれた目的地なんで、
ちっとも緊張感なんて無く、
早く行って、ちゃちゃっとトレーニングを済ませて、
早く家でのんびりとご飯でも食べよう、
なんて思いながら走っていたんだもんね。

気持ちがそぞろになっていたんだよ。

いろんな新鮮な感覚を維持するってたいへんだけれども、
こうやって痛い思いをして心機一転というのではなく、
もっと健康な明るい出来事のおかげで、
また清々しい新鮮さを
取り戻せたりしたらいいなぁって思うよね。

いやぁ、
ほんとうに交通安全、交通安全ってことで、
みなさんもどうぞ気をつけてくださいね。


亀戸、日曜午後3時

2008-01-14 00:04:36 | 風に走る


ここからJRでひとつ隣の駅には
キムラヤっていうディスカウント屋があって、
その店内にはキラ星のブランド品が満載なんだけど、
ここはワタクシのお気に入りの店なのだ。
ブランドもののスーツにも鞄にも靴にも
とんと興味がないワタクシの向う先。
それはもちろん香水売り場でありました。

ブルガリをはじめ、
シャネル、グッチ、ラルフローレン、
ディオール、エスカーダにカルバンクライン。
そうそうたるブランドの香水が勢揃した棚の前では
もうワタクシ興奮して血圧も上がりそうです。
乱れた商品もちょっと並べ直したりなんかしてね。
それでその香水どれもが無茶苦茶安い。
定価というものの意味をちょっと立ち止まって
しばし考えさせられるほどに値段が安いですよ。

常日頃から香水の雑誌をめくり、ネットで価格を調べ、
それぞれの香水の相場価格と品薄情報は
だいたいこの頭に入っているので、
(憶えられるのはこーゆーことだけなんだけどね…)
「おっ、これ今の時点で底値っすよ!」と
興奮気味に手にする香水は1本プラスもう一本。
だってこの先この商品はいつか廃盤になるよね、
そのときに使うものが無くてすごく困るじゃんかよ。
と、自分自身に言い聞かせながら、
お気に入りの香水は2本買い。(アホだね・・・)
結局定価販売と変わらない金額の買い物になるのであった。

こうやって無限に香水の瓶が増えてゆく。

でも、このキムラヤで買う香水は、
ひとシーズン前の香水か、または昔から
ずっと売り続けられている名香と言われるものだけです。
シーズンごとに新発売される「旬」の香水は
いち早く我先にと勇み足になりながらも
ちゃんとデパートのカウンターで買いますですよ。
この「旬」の香水は、この今の時代今の世の中を
絶妙に反映していてそこが興味深いところだし、
また、その季節に流行の「香り」というものもあって、
これもそれぞれのブランドの
特色が見られてなかなか面白い。

少し前にベリー系、つまりイチゴやカシスなどの
美味しそうな果物の香りが一世風靡したころ。
学生をターゲットにした若いブランドは、
つけた瞬間から果物屋の店先のような香りの
とてもわかりやすいフルーツの香水を作っていたし、
それに対して、老舗と言われる昔ながらのブランドは
従来通りの格調高く落ち着いた香りの中に
ほんの少しだけ上質の果物の香りを溶け込ませていて、
それはまるで、
果樹園を吹き抜けてくるいい香りの風みたいだったしね。

で、こんなワタクシにも
お気に入りのブランドがいくつかありましてね、
カウンターで、顧客カードを差し出すと、
可憐で麗しいBA(ビューティーアドバイザー)さんは
自分のような坊主頭の男でも
ちゃーんと椅子に案内して座らせてくれる。
でもね、そのカードに記録された
前回の買い物の日付は半年前でほんとスミマセン。
で、ちょっと恐縮した素振りを見せながらも
偶然となりに座った他のお客さんとも
「そですねー、ほんといいですよねー、おゲランは」
などと愛想笑いもかましつつね、
そのカウンターの雰囲気を楽しむのだ。

で、いよいよ香水のテイスティングになるんだけど、
自分は必ず実際に肌へつけてみるようにしてる。
普通はムエットっていう濾紙を細長くカットしたものに
香水を吹き付けてくれるんだけどね、
やはり自分の肌と紙とでは香り立ちが全然ちがう。
特に要注意なのが、オリエンタルな香り。
お香のようにエキゾチックな香料の中に
ワタクシと甚だしく相性の悪いものがあるようで、
こいつが肌に乗るとまるでタイヤのゴムを焦がすような
何とも言えないイヤな香りになってしまうのだねー。
ムエットだけで試して「こりゃいい香りだよ♪」
なんて浮かれて買った香水をいざ自分の肌につけてみて
「くっさー。。。泣」となった思いはもうゴメンだしね。
そこはすごく慎重になるところであります。

香水は必ず自分の肌で。
己の匂いと香料が混ざり合って
はじめて自分自身の香りになることを
肝に銘ずべし。。。By ゲランの中の人

会社でさ、それも仕事のことでさ、
人と結構な言い争いをしてさ、
なんだかいやーな気持ちのまま週末に入っちゃってさ、
次の朝起きても昨日の会社でのことが頭に重くてさ、
っていうか、
あれからひとりでいろいろ考えていたらね、
単なる仕事の話を超えて、自分の将来、自分の行く末、
自分はこのままでいいのかなんてことに発展していて
かなりつらい状態になっていたんだ。

だから気分を紛らわそうと思ってさ、
ひと時でもいいから夢中になれる楽しいことしたくてさ、
「よし、こんな時には買い物だ、香水だ」と
自分に言い訳をつくってはね、
隣駅のキムラヤまで向かう道。

水上バスの平らな船を眺めながら橋を渡って、
天神さまの鳥居をくぐったらあたりから、
先ほどまでの憂鬱な気分はずいぶん薄らいで、
頭の中は欲しい香水のリストアップで忙がしくなってきた。
妙に軽い足取りに、よしよしいいぞ
思わず鼻歌まで飛び出してしまいそうですぜ。

大好きなキムラヤの香水売り場で、
どれにしようかと思う存分時間をかけて選んだ後は、
これまた、家までの道のりを歩いて行くんだけど、
さきほどと違うのは帰りは少し早足になってるんだ。
早く家に帰ってこの手に入れた香水をつけてみたいからね。

京葉道路の大きな横断歩道を渡って、
亀戸の駅まで歩いたら、JRの線路をくぐって
向こう側に出なくちゃいけないんだけど。
この線路の下のトンネルがね人が多くてたいへん。
道路脇の違法駐輪の自転車の列が
二重三重になって通路にはみ出しているので、
人ひとりがやっと歩けるような状態。
その狭い隙間を狙って人も自転車も割り込むものだから
交通量の多い日曜日などは一触即発って感じなんだよね。
すぐ目の前には駅前の交番があって
いつでも体格のいい警察官が仁王立ちで見てるのにさ、
彼らはいつでも、
仕方ない、仕方ないよねと言いたげに
諦め顔して通りを眺めているだけだよね。

僕は、今買った香水が入った袋を、
人並みに振り落とされないようにぎゅっと握って歩く。

人ごみを抜けて商店街を過ぎたら
東西へ抜ける四車線の大きな道路に出る。
ここまで来たら後は道沿いに真っ直ぐ歩くだけだ。
カラオケ屋の派手な看板。
その隣は、ウエストに大人5人は入りそうな
すごく大きなGパンを飾ってる洋服屋。
隣は家具屋。
で、その次の店は畳屋。
ここはいつもい草のいい香りがするね。
僕はこの店の前だけはゆっくり歩くことにしてる。

信号をひとつ渡って
亀戸天神の参道を横切ると
有名なくず餅屋が見えてくる。
行楽のシーズンになると観光客でごった返すのだけど、
今日はお客さんいないね。
その次はラーメン屋。
ここはもういつ見ても大繁盛。
店の外に行列が並ばない日は無いもんね。
のれんから漏れてくるスープの匂いから察するに
ここはあっさり塩系かなと思うので、
一度も入ったことは無いです。
僕はとんこつが好みですよ。

そのラーメン屋の先には小さな交番。
実はこの交番の真ん前には、
ほんの3メートル程の短い横断歩道があってね、
それが生意気にも信号機が付いてるのだね。
ま、地元住民はみんな赤信号なんて
おかまいなしに渡ってるんだけどさ。
ワタクシはというと、
いくらなんでもお巡りさんの目前での
信号無視はちと怖い。
しかしこの交番、いっつも留守になっていて、
誰もいないカウンターには、
「御用の方はこの電話でお話下さい。」
なんて立て札にぽつんと電話機が置かれていたりなんかして、
これでいいのか?日本の警察って感じなんだけど。
ま、そんな訳で、交番に誰もいないときに限っての
小心者の信号無視。

少し手前から交番を伺うと人影が見える。
「あーあ、今日はダメだなぁ」と思いながら
赤信号を見上げていると、交番の中から
男がひとり飛び出して来た。

「あ、あのー、ぼ、ぼくのさいふがね、
ぼ、ぼくのおさいふ、わからないの」

びっくりしたよー。
中学生くらいかな、
痩せていて背が高い彼は、
言葉がちょっと不自由らしくて
会話もなかなかおぼつかない。
ひとり誰もいない交番で随分と困っていたようで
僕に向かって懸命に己の窮地を訴えてくる。

「お財布、どの辺りで落としたかわかる?」

「え、えーとね、ぼくセブンイレブンで買い物して、
その後で、おさいふがないの…」

「じゃあぁ、そのセブンイレブンへ行って見た?」

「う、うんっ。いってみた。無いって、店の人が言ってた」

「あとは思い当たる所はない?」

「あとは、わからない。。。」

「そっかー。じゃあさ、警察の人にお願いするしかないね」

(って、だから彼は交番に来てるんだけどさ。)

「うんっ」

「じゃ、この電話でお巡りさんに話してみなよ」

彼は、近くの警察署へつながる専用電話で話し出すも、
「あ、あの。僕のおさいふが、僕のおさいふがね。。。」
と繰り返すばかりで埒が明かないので、
僕が代わりに受話器をとる。

相手の警察官は、申し訳なさそうに、
とにかく遺失物の届けをしてもらうので、
駅前の交番まで来て欲しいと言った。

僕は彼に、「駅前の交番まで来て欲しいんだって」
と告げると、
彼はちょっと考えて、「うん、いく」って言うんだけど、
その、長身の身体で所在無げに立っている姿がね
なんだかすごく心細いように見えてさ、
結局、その交番まで僕もお供をすることになった。

彼は、育ち盛りの身体にはすでに少し短くなった
色の落ちたジーンズと、これもすこしくたびれかけた
黄色いTシャツを着ているんだけど、
これがどちらも洗濯したてのように清潔に見えて、
彼が動くとほんのりと洗剤のいい香りが鼻をくすぐる。

二人で交番を出て、
駅に向かって今来た道をずっと歩いてゆく。
手足の長い彼の歩調が妙に速くて
こちらが置いていかれそうになるので、
「もうちょっとゆっくり行こうよ」と
声をかけようとするそばから、
突然、彼が駆け出す。
僕がおいおいと思ってこちらも急ぎ足になると、
後ろを振り向きもしないまま彼は、
歩道の交差点に差し掛かる毎に
その足をぴたっと止めて僕が追いつくのを待つ。
背の高い痩せた身体を少し丸めながら、
上下に飛び跳ねるようにして人ごみの中を駆けてゆく姿が、
まるで「操り人形が走ってるみたいだな」
と僕は彼を追いかけながら思った。

道を駆ける彼に追いついては、
また引き離され、
そんな事を繰り返しながら
つい先ほど歩いて来た道を引き返して行く。

ラーメン屋、
くず餅屋に天神様の鳥居、
畳屋、ジーパン屋にカラオケハウス。
こうやって先を急ぐと
駅までの道のりはけっこうある感じがするね。

歩道をごった返す人並みをようやく抜けて、
お目当ての交番へ到着するんだけれど、
やっぱりそこでも彼の説明では要領を得なくて
受付のお巡りさんも困惑顔。
それで、僕が間に入って事情説明。

ところがその話をしている間に、
「この人とあなたの関係は?」って3回くらい訊かれた。
お巡りさんにとっては
よほど妙な取り合わせの二人だったんだろうね(笑)

そんなこんなで
始めは興奮していた彼も、
その場に慣れるにつれて落ち着きを取り戻してきたので
「では、ここで遺失物届けを書いてください」
ということになった。

そのあたりになって自分も気付いたんだけれど、
この狭い交番の中に制服を着た若いお巡りさんが
いっぱいいるんだよね。
なんだかおかしなふたりが財布を捜しに来た、とかで、
奥にいた警官がみんな出て来てしまったらしい。

小さな机に座って
懸命にその届出の書類を書く彼の横で僕は、
数人の警官にぐるっと囲まれてさ、
なんだか変に緊張してしまったよ。
でも、そこはもちろん
「この眺めは、制服フェチにはたまらんだろうなぁ」
なんてこともちゃんと考えていたんだけれどもね。

「おじさん!一緒に帰るからちょっと待っててね!!」
書類から目を離さないままに彼が大声で言う。

( `・ω・´) ん? 何? 誰のこと言ってんのかな?

おそらくこの僕はそんな風な顔をしていたんだと思う。

おじさんってここにはいないじゃん。って思いながら
僕は周りを見回してしまったもの。
でもさ、中学生くらいの彼から見たら
この僕も立派なおじさんなんだよね。
おじさん、とはまた何ともくすぐったい響きですな。

それで、この彼のご要望通りに、
彼が届けを書き終わるのを待って
「どうぞよろしくお願いします」と
担当のお巡りさんへ頭を下げたあと、
交番の中から駅前の雑踏へ一歩出た時、
彼がすっと手をつないできた。
子供が親の手を握るみたいに、
躊躇なくなんとも自然な感じでさ。

僕の一瞬の戸惑いを感じてか
彼は急いでその繋いだ手を離して
「ごめんなさい」って言う。
多分、家族と出かけたときにはそうしているんだろうね。
緊張した交番から出てほっとしたところで
ついいつもの習慣で手を握ったんだと思う。

僕は、そんな彼がほほえましくてさ、
「いいよ、いいよ、帰りは手を繋ごう」って言ったら、
すごく嬉しそうに再び僕の手をしっかりと繋いだ。

背の高い無邪気な中学生と、
この、おじさんとも兄ちゃんともつかない
微妙な僕は、
しっかりと手を取り合って商店街を歩く。

手を繋いでいることで
何だかかとても安心して親近感が沸いてくるのは
彼も同じみたいで、
先ほどまでとは違いずいぶん気さくに話しかけてくる。

「名前はなんていうの」

「としはいつく?」

「今日はどこまでかえるの?」

矢継ぎ早にいろんなことを訊いてくる。

僕が答えるごとに「ふぅ~~ん」って大きく頷いて
そのことを何度も繰り返していたね。

人に質問だけをしたのではいけないと思ったのか、
次に彼は、自身の個人情報とやらをいくつか披露してくれた。
彼の家ははじめの交番のすぐ近くにあって、
普段ひとりではあまり出歩かないこと。
同じ街にある養護学校に通っていること。
今日家に帰ったら、交番で書いた届出の控えを
ちゃんと家の人に渡さなきゃいけないと思っていること。

そんなことを、彼は手を繋ぐ僕に教えてくれる。

そうしているうち、文房具屋の店先で突然彼が立ち止まる。

彼の一心に見つめる先には、
アンパンマンやケロロ軍曹なんて書かれた
ぬりえ絵本のブックスタンドがあるんだよ。

僕が「これ好き?」って訊くと、
「うんっ!」ってにっこりと頷くからさ、
「じゃぁ欲しいやつを買ってあげるよ」って言ったんだ。

「ううん、いい。」って頭をぶるんぶるん横に振るからさ
なんか不味いことを言ったのかと思ってると、
「今度お母さんに頼んで買うからいい」って言いながら、
再び僕と手を繋ぐとすたすたと歩き出すんだ。
多分、ものすごく欲しいものなんだよね、彼にとっては。
それで思わずそれを見つけたとたんに立ち止まってしまった。
でもおそらく彼の親からは、
人に何かを買ってもらったりしてはいけないって
言われているんだろうね。
何度も言われているんだろうね。

「僕はちゃんと言いつけを守るんだ」
っていう顔をしながら彼は歩く。

こうやって手を繋いで一緒に歩いていても
なんだか弾むように頭を上下して歩くのは変わらず、
横で見ていても操り人形みたいだなぁって思うよね。

僕達は手を繋ぎながら過ぎてゆく。

ここはカラオケ屋、
次がジーパン屋、それから家具屋、
隣の畳屋はもう夕方には店仕舞いでシャッターが降りちゃった。
少し行って、天神様、
くず餅屋にラーメン屋。

そしてその先には、相変わらず人気のない交番。

さぁここまで着いたねぇ、って言いながら
僕が彼を見ると、
目をしっかりと閉じたまま横に立っているんだ。
彼の顔には夕暮れの陽が当たっているので
どうやらそれが眩しくてそうしているらしい。

「ここからひとりで帰れる?」

「うんっ」って目をちょこっとだけ開いて彼は答える。

「じゃあね」と僕が、

「うん!、じゃあね」と彼が、

それだけ言ったら、
くるっと回れ右して、そのまま河辺の道を走り出す。
黄色のTシャツを着た操り人形が、
頭を上下しながらひょこひょこと走って行く。
僕はちょうど横断歩道を渡ったところにある橋の上から、
しばらく見ていたんだけれど、
結局一度も振り返らないまま彼の姿は見えなくなった。

家までの道を、僕はまたひとりで歩き出す、
手に持った香水の袋を握り絞めながらね。

都営団地の角を曲がって裏通りに入ったら、
左手に郵便局の大きな看板を見ながら
後はうちのマンションまで真っ直ぐに歩くだけだ。

僕は、山吹色した道を
彼を真似してぴょんぴょんと走ってみた。

袋の中で香水が揺れた。


------------------------- 2007 春 ---










去年の暮れ、
このキムラヤの店舗は他の店に変わり、
今はもうこうやって
亀戸への道を歩くこともなくなってしまいました。
ほんのしばらく見ない間にでも、
通りも街も変わって行きます。
でもね、
この次にはそこにどんな新しい風が吹くのかを
楽しみにできる自分でいたいなぁと、
そんな事を思いながら・・・


息を殺して 身を寄せながら 明日へ漕ぎだす 別れです

2007-05-14 21:38:16 | 風に走る
 

  つれて逃げてよ

  ついておいでよ

  夕暮れの雨が降る 矢切の渡し

  親のこころに背いてまでも

  恋に生きたいふたりです


ご存知、演歌の名曲「矢切の渡し」、
つい最近なんだけど、
この曲をちあきなおみさんが「演歌の花道」で歌っている姿を見て、
(いや、YouTubeってほんとすごいっスね)
それ以来この「♪つれて逃げてよ~」が
この頭から離れなくなってしまって、
ジムでもインターバルの最中に、
思わず口ずさんでしまったりと、
なかなか困ったワタクシなんですけど。

正直言うと、
今までは「こんな辛気臭い歌はちょっと…いやだ」
なんて思ってたですよ、この曲。
それがさぁ、やっぱりちあき姐さんはすごいや。
あの独特の低いボーカルに狂気一歩手前の情景をかまされたら、
このワタクシなんぞひとたまりもありませんでしたね。
もうこの自分自身が、
すっかり「親のこころに背いて駆け落ちするんだ」
ってな気持ちになってしまいましたので、

はい、本日「矢切の渡し」で江戸川を渡りに行って来ました。
これで本当に駆け落ちの相手なんかがいればね
それはまたものすごくかっこいいんだろうけれども、
こんな物好きに付き合ってくれる人なんて
そうはいませんよ。
もちろんひとりで行って来ましたよ、柴又。

実は、うちから柴又までは、
だいたい30分くらいあれば着いてしまうので、
今回も特別新鮮な感じはしないと言えばしないかな。
でも、この「矢切の渡し」に乗るのは今日が初めてなので、
かなり期待しながらの出発となりました。

押上駅から京成電車で高砂まで出たら、
今度は金町行きに乗り換えてひと駅で柴又でございやす。
京成電車に乗り込んだ時点ですでに庶民派の匂いを醸し出す
あの独特のいなたい雰囲気が好きなんだけど、
金町行きの支線に乗り換えたとたん、
買い物かごを抱えたおばちゃんや、
太い縦縞スーツを着た親父なんかが電車内で
くつろいでいたりなんかするものだから、
もうこちらの気分も「男はつらいよ」の映画の中に
入り込んだ気分で盛り上がってまいります。

柴又の駅を出てすぐのところにある、
安っぽい黄色のテント看板のコーヒーショップ
その名も「さくら(ハートマーク)」で
地元のおばちゃんと並んでコーヒーを
ものすごく飲みたかったんだけれども、
本日の目的は「矢切の渡し」。
江戸川の川原でトイレ我慢するのはたまらないので、
このさくらさんのコーヒーは帰る時までお預けであります。
ワタクシはカフェインと言うやつにめっぽう敏感で、
コーヒーを飲み終わる前にはもう尿意を催しますのでね。

そこから柴又帝釈天までの参道には
あの「とらや」をはじめ、名物の草だんご屋が
それこそ軒を連ねて客を待ってるんだけれども、
この草だんごって、確かに美味しいとは思うけども、
いかんせんなかなかにイイ値段の代物なんだよね。
お土産にするにはまぁコレくらいの大きさだろ、
って言うくらいの、広げた大人の手のひらより
ちょっと大きいくらいの箱でもう2千円とかするんだよ。
オラには買えねぇ。
値段ももちろんだけれども、
それよりも、
買ったひと箱全部ペロリと食べてしまいそうで。。。(笑)

帝釈天の帝釈堂が見えて来ると思うのが、
門の影からあの源公が竹箒を持ってひょっこり現われ、
そして帝釈堂の奥からは御前様が説教のひとつでも
たれそうな顔でこちらに向って歩いて来る。
そんなことは映画の中だけしかない事は当たり前なんだけど、
ふとそんな思いに駆られるほどに、
今でも柴又はあの映画そのままの
風情がそっくりそのまま息づいているんだよね。

町も人も、とにかくのどか。
雑多な東京下町の懐の深さに見とれてしまいますよ。


その帝釈天から江戸川の堤防へ向って10分ほど歩くと、
いよいよ本日のメインイベント「矢切の渡し」。

シロツメグサが群生する川原は午後の陽が当たって、
もうため息の出るくらいに平和な風景。
おまけに渡しの桟橋のすぐ隣では
地元の小学生の草野球大会が開かれていて、
これではちょっとばかし、
人目を忍んで駆け落ちする雰囲気ではないですよ。(笑)

で、これまたいなたい桟橋で船が出るのを待つんだけど、
風に波打つ川面が無性になんていうかこの日本人魂ってやつを
揺さぶってくれたりなんかしちゃうわけですよ。
ここに来るまでずっとちあき姐さんの「矢切の渡し」を
聴き続けていたので、なんだかもうすでに涙が出そうな感じ。








対岸の矢切から人を乗せて、
渡し船がようやくこちら柴又の桟橋に帰ってくる。
ここでとても嬉しい事発見。
事前に調べた限りでは、
この「矢切の渡し」は個人経営の渡し船だそうで、
船賃は片道100円。
基本は手漕ぎなんだけど、
川風が強くて波があるときや、
観光客が多くて順番待ちだったり、
また一日ずっと船を漕いでいると疲れるのか、
最後の方の時間になるとモーター船になってしまうそうで。

でも、今日は人もまばらで川風も静か、
それでお見事手漕ぎ船にての渡しとなりました。

うひょ~、すっごく、素敵♪
もう、乗船の頃には興奮してドッキドキものだったよ~。

で、船は桟橋を離れて揺ら揺らと道行きの旅へと繰り出します。(笑)





船はおよそ10分ほどで対岸の矢切の桟橋に着きます。
今渡ってきた江戸川を挟んで、こちらは千葉県松戸市、
柴又側と違って、周りには何にもなくて、
観光客相手のお土産やおでんなどを売る屋台店が一軒あるのみ。
おまけにその屋台の経営者は船の船頭さん。
お父さんが柴又側へ行っている間の店番は、
小学生くらいの男の子、おそらく息子さんだよね。
いいなぁ、こういうの。
川を挟んで家族で渡し船の経営なんてね。
ウラヤマシでございますです。

こちらへ渡ってからようやく、
船に乗る前、柴又の桟橋から遠くに見えていた
旗の正体がわかりました。
この旗が揚がっているのが、
渡し船の営業中の印なんだって。
ほぉ~、そうなのか~。
と、ワタクシ妙に気に入ってしまいます。






  見すてないでね

  捨てはしないよ

  北風が泣いて吹く 矢切の渡し

  噂かなしい 柴又すてて

  舟にまかせる さだめです


それははたして、恋情なのか愛情なのか。
演歌というジャンルが描き出す世界観は、
今の時代、場所が場所なら、
それは時として、差別、男尊女卑、セクハラ、パワハラ、
とかなりひどい状況を思い浮かべてしまうんだけれども、
それでも、フィクションの世界と言えども、
演歌の世界観がこうも情というものを、
ひたひたと炙り出すのは何とも不思議と言うか、
やはり快感に近いものがありますな。

この歌が描く心情の風景、
人目を忍んで船に乗り駆け落ちをするふたり。
その事を追体験するということではなくて、
(っていうか、そんなこと無理だしね。)
そっくりそのままとは言わないまでも、
一応は歌のモデルとなっている場所に自分を置く事で、
演歌の世界で泣きの世界に仕立てあげられる
この歌を聞いた自分の中でこころのひだが
ざわざわと蠢(うごめ)く意味を確かめてみたかったんだよね。

夕暮れの川風が船を揺らして、
遠くで薄暗い雲が流れて、
船頭さんの漕ぐ艪(ろ)の音が、
ほんとうにギッチラ ギッチラ ギッチラコっていうこと、
船に乗る誰もが黙っているので、
揺れる船の軋(きし)む乾いた音が
この足元に響くこと。

日本の湿った情緒の奥に根付く、
決して陽を見ることのないエロス。
それはどんな色合いをしていて
どんな匂いを放っているのか。
若輩ものの自分ではてんでわかりませんけど、
それでも薄っすらと感じるそのエロスってやつ。
それはゆっくりと口の中で溶けてゆく
甘味な飴玉のようでありました。






帰りの船には地元の人たちも乗り込んでいたので、
(まぁ、それが本来の渡し船ですが)
船もかなり重く船頭さんも本腰を入れて漕ぐ、漕ぐ。


ギッチラ ギッチラ ギッチラコ~


これで、本当に身も焦がれるほどに好きな相手と
この川を渡る事が出来たなら、
それはどんなにいいものだろうか。
などと、僕はひとりにんまりと考えていました。

この船に乗る事が出来る最大人数は31人って
船の中に書いてあったんだけれども、
そんなには好きな人っていうのはいないなぁ。
でも今冷静に数えてみて、
んー、ひとり、ふたり、三人、四人、。。。
っていうのは冗談なんだけれども、
でもね、本気で恋焦がれるその相手と共にいつの日か、
また、この「矢切の渡し」で再び川を渡りたいなぁ。

なーんてね、柄にもなく考えたりしたわけです。

でも、その頃には
矢切桟橋の屋台で留守番をしていた
あの息子さんが船頭になってたりしてね。
っていうか、
自分はいつまでしぶとくがんばるんだよ。
って話ですわ。




  どこへ行くのよ

  知らぬ土地だよ

  揺れながら艪が咽ぶ 矢切の渡し

  息を殺して 身を寄せながら

  明日へ漕ぎだす 別れです




  矢切の渡し 作詞・石本美由起 作曲・船村徹  



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2007-04-19 01:40:43 | 風に走る
本日も雨です。

寒い雨です。


桜も終わって、ここのところはようやく春だねぇ~
って言うような、穏やかな過ごしやすい気候だったのに、
今週に入ってからは、冷たい雨つづきになってます。

ほんと寒いねぇ~。
電車を待つ間の駅のホームで震えたよ。
鼻水もたらした。

でね、
何が言いたいのかと言うと。
こんな気温の日には
いったい、どんな服を着れば良いのかってことなんだけどさ。
ほんとこれがわからなくて困るよね。(僕だけ?)
冬物のセーターなんかを引っ張り出してきて、
あたたかく一日を過ごしたいんだけど、
さすがにちょっとそれはね。。。

おまけに、ほらワタクシはここのところ
「デブデブ増量実施中」なので、
今まで来ていた春物のカットソーなどが
どれもコレもことごとく身体に合わなくなっていて、
その中でも、もともと大き目のデザインになっている
何とか着ることのできる何着かをさ、
毎日ローテーションするしかないというかさ。

だって、
今また身体に合わせて新しい服を買っても、
すぐに小さくなってしまうだろうよ、
なんていう、切なる希望的観測によって、
只今は服の新規購入はご法度なんだよね。

おかげで、箪笥の中からは
すごい勢いで今まで持っていた服が無くなっていて、
これはこれでなかなかに爽快だね。
そしてもちろん下着なんかも買い直しなので、
この前、Tシャツもおパンツも一週間分全部同じものを買った。
さぁ、これでもう、
このファッションにはこのシャツとか言って
懸命に合わす事はなくなったぞ!
全部同じだ、文句はあるか!

ふふふ、
モードを捨てたワタクシでございます。(笑



で、そのモードを捨てた僕がね、
今夜の夕飯に何を食べたかったのかと言うと、
「とんかつ」。
ほんと唐突で申し訳ないんだけれども、
「とんかつ」なんだね。
今日のお昼ご飯を食べた後からすでに、
口の中が「とんかつ」になってたんだもん。

じゃあ、帰りに一人でとんかつ屋へ行くのかというと、
これもちょっと寂しい。
っていうか、
ご飯はなるべく自分の家がいいなぁ~~

ほんとは、ちゃんと自分のうちでとんかつ揚げれば
良いんだろうけどさ、
ごめんねうちいま揚げ物禁止なんですよ。
だってキッチンが油まみれになるじゃん。
それに、これは情けないんだけども
大量の油を火にかけるのちょっと恐いしさ。。。

そんなわけで、こんな風に自分の口の中が、
「とんかつ」を待ちわびるような日に向うのは、
もちろん、デパ地下ですな。
駅のすぐまえにあるこのデパの地下の総菜屋さんは
一人暮らしにはかなり使える品揃えになっているんだ。
色とりどりのゴーカなサラダとかがさ、
これまたゴーカな値段で売っているようなさ、
そんな妙に小洒落たいまどきの店ではなくてね、
質実剛健っていうのかな、
昔ながらの惣菜をちゃんと作って並べてるよみたいな、
おふくろさん的な売り場なわけ。

で、そこで売っている「一口ひれかつ」っていうのが
僕のお気に入りでさ、いつも同じものを同じだけ買うので、
いつもいる店のおばちゃんも最近は憶えてくれたかな。
レジ袋は要らないのよねって言いながら
最小限の包装で手渡してくれるようになっていたんだけれども、
今日はそのおばちゃんではなくて初めて見る店員さんだった。

で、いつもの如く「3個下さい」って言うと、
もう憶えちゃってるんだけど¥471なわけ。
だから、これ下さいって注文したすぐ後には
もうすでにちゃーんと¥471がきっちりこの手に握られていて、
こちらは何だか「一口ひれかつ」のプロって感じなんだけど、
その始めて見る今日の(オバちゃんじゃないな)お姉さんは、
新人さんらしくてまだね仕事に慣れてない様子。
で、僕が注文した「一口ひれかつ」を丁寧に包んでくれている横から、
「あ、包装はそこまででいいですよー」とか僕が言うもんだから、
なんだか余計に慌てちゃって気の毒だったな~。

ようやく「一口ひれかつ」を受け取って
握りしめていた¥471をお姉さんに渡そうとするんだけども、
そのお姉さん、ガラスケースの上にこんもりと盛られた
揚げ物の上で手を広げてお金を受け取ろうとするんだよね。
僕は¥471の70円も10円玉で用意していたので
硬貨は全部で12枚あるわけでさ、
おまけにそのお姉さんすごく華奢で手も小さいんだよ、
ホカホカとおいしそうに揚がったエビフライやらかきあげの上に
その¥471をぶちまけるのはあまりにしのびなく思えてさ、
お金を受け取ろうとするそのお姉さんの手をさ、
こちらの手のひらでもってこう包むようにしながらお金を渡した。

なんだかこちらが商いをやってる感じになってしまって、
思わず、
「ありがとうございました!」って言いそうになったな。

地下からエスカレーターで表に出ると
外はかなり雨足が強くなってきていたんだけど、
そこで今度は「新鮮なヨーグルト」が食べたくなってきた。
じゃ、もう一度目の前のエスカレーターで降りた地下の売り場で
そのヨーグルトいくらでも買えばいいじゃんと思うんだけど、
それはね、違うの。

実は僕はもともとはヨーグルトって好物ではないんだよね、
っていうか昔は苦手だったもん。
あの酸っぱさがねちょっと嫌なわけで、
だから、なるべく酸味がないヨーグルトを買うとなると、
ここからちょっと回り道になるスーパーに売っている、
そのスーパーオリジナルブランドのヨーグルトと言うことになる。
これがほんと全く酸っぱくなくっておいしいんだよ。

だから今度はひどい雨の中をそのスーパーへ急ぐ事となった。

この街は道路が碁盤の目にように規則正しく通っているので、
どのように道を選んでもその目的のスーパーへは辿り着くんだけれど、
僕には毎日必ず通りたい場所がいくつかある。
それは、道路に綺麗な花の鉢植えを並べてある家なんだよね。
ここは下町で、ほんとに家が隙間無く並んでいてさ、
ほとんどの家が庭なんて持っていないわけよ。
だから、家々の周りの道路に所狭しといろんな植物の鉢を並べて
みんな丹精込めて世話していてさ、
それを仕事の行き帰りに眺めるのが結構な楽しみになっているんだよね。

で、ようやく辿り着く馴染みのスーパーは、
この雨のせいでさすがに人が少ないねぇ。
その分買い物がしやすくてこちらは嬉しいけれどもね。

スーパーにいる時に必ず思い出すことがあってさ、
それは、
店の真ん中ばかりで買い物している人は肥満予備軍なんだよ。って話。
確かにさインスタント食品やお菓子とかのコーナーって
ほとんどの店では店の中央あたりに設けてあるもんね。
店に入って外周には、
野菜、果物、魚、肉、そしてパン売り場か。
なるほどそれは確かに健康的だ。
ていうか、それがごく普通の食材ってことなんだけれどもね。。。

そうそう、実は僕は大の甘党でしてね、
今でこそ食事の時に目一杯食べるくせがついたので、
間食とかデザートとかをほとんど食べないようになったんだけれど、
以前はもうすごかった。
寝る前に落ち着かない時などには
蜂蜜の瓶を抱えてたらふく飲んでいたし。
会社でもさ、
みんな酒好きな辛党の人ばかりだったので、
お菓子の差し入れがあっても誰も食べないような時には、
もうみんなが心配するくらい一人で喰ってた。
ミスタードーナツ9個とか、
僕の大好物である伊勢名物「赤福餅」2箱ペロリとかさ。

今でこそこんな事を書きながら、あらためて驚くんだけれども、
当時は何ともなかった。
食べても食べても甘く感じないんだもん。
あれは、何かの病気だったのかなぁ。。。(苦笑

で話は戻って。

そのスーパーで無事お目当ての酸っぱくないヨーグルトを持って
レジに行くと、いました、いましたよ。いつものお姉さんが。

もう、大好きなんだぁ、そのレジのお姉さん。

一見は、
化粧っ気もなくてとても地味な感じかな、
スーパーの制服の上に羽織っているカーデガンも
ちょっと毛玉が出来てたりするんだけどね。

でもそのお姉さん、
誠実を絵に描いたような人柄でさ、
仕事も正確で丁寧だし、いつもハキハキしていて、
ちゃんと自分の前に手を揃えて「いらっしゃいませ」って言ってくれるんだ。
この前なんかはさ、
僕はレジ袋は要らないようにしているので、
かごを渡すときに必ず「袋は要りませんので」って言うんだけれども、
その時もそのお姉さんにそう言ったんだよね。
そしたら普通は「ハイ!」とか「わかりました」とか
何か言ってくれるんだけれども、
その時にはそのお姉さんとても戸惑った様子で「すみません!」とか言うわけ。
で、
清算の終りにレジ袋を渡そうとするので、
「あ、袋はいりませんよ」ってもう一度言ったらさ、
そのお姉さん、少し仕事の手を止めると、
「先ほどはそれをおっしゃっていたのですね、
ちゃんと聞えなくてすみません。
ご協力ありがとうございます!」って言うんだぁ。

そうなるとこちらも「声が小さかったんだなー」って気が付くしさ、
っていうよりも、僕がそう言ったら、
「こちらこそ声が小さくてすみません」ってね。
そしたら、
「いえいえ、そんなことはありません。こちらこそ失礼しました」
なんて言ってくれちゃうわけよ。

人として美しいなぁと思うよね。
僕も見習わなければなぁと思うよね。

なので、
そのお姉さんがレジにいる限りは必ずその列に並んで、
僕は毎回心からお姉さんを見習っている。
でも、
そんな風だからさ、そのお姉さんのレジは大人気で、
いつもそこだけ混んでるわけよ。
お客さんはみんな同じ事を思ってるんだよなぁ、
みんなお姉さんのレジで清算したいんだよなぁ。

そんなとき普通はさ、
同じ時給なのに自分だけ忙しいなんて不公平とか
愚痴のひとつも言いそうなもんだけども、(僕なんかね)
でも、あのお姉さんの微笑んだ顔を見ている限りは
まったくそんなことは思ってないように感じるなぁ。
そういう心の雰囲気ってさ、
外見はどんなに取り繕っていてもさ、
結構ダイレクトに他人には伝わるものだと思うからさ。

最近はレジでかごを置くときには、「お願いします」、
そして最後におつりを受け取るときは、
お姉さんのおかげで今日も気持ちよく買い物が出来て
ほんと嬉しいなあって思って、
思わず「ありがとうございます」って言ってしまうんだけれども、
そのたびに、お姉さんは恐縮してしまって仕事の流れを止めるので、
あぁ、そんなことは口にしないで思うだけのほうが良いのかなとも
考えたんだけれどもさ、
やっぱりさ、言いたいんだもん、伝えたいわけですよ。
でもそうするとまたお姉さん仕事がしにくいだろうしなぁ。。。

あ、これはどうだ、
最後のは向こうもありがとうゴザイマスで、
こちらもありがとうございますはちょっと不自然なので、
こっちは「どうも」って会釈するってのはどうだよ。

ね、それ自然でいいよね。

「どうも♪」。

よし、今度からはこれで行くよ。


「どうも♪、どうも♪」。。。ん、いい感じ。



潮風が吹いた

2006-03-07 16:56:18 | 風に走る
いつものように駅からの帰り道、
夜の風の中にほんの少しだけ潮の香りが混じっていた。
「あぁ、今年も春が来るんだなぁ」と思う。
今僕が住んでいるこの地域は
海からは随分と距離はあるのだろうけれど
毎年この季節になるとこんな風に潮風が吹く。
東京湾から木場を通って内陸に入り込む風に乗って
ここまで運ばれて来るのだろうね。

で、そんな春を知る風に吹かれ始めると
いつもなんだかそわそわして落ち着かないんだよね。
じっとしてられないような、あせるような高揚感。
これは、何?・・・繁殖期ってやつですか?
なんだか抗えない自分自身の変化を感じるんですけど(笑)
人間もやはり動物の一種なんだなぁと思うよね、すごく。

そして、そんなそわそわと落ち着かない
春の夜にきまって思い出すのは
もう会う事がなくなってしまった人たちのこと。
今頃どうしてるかな?とか、
あの頃の夢はもう叶ったのかな、なんてさ。

別れてしまった後悔なんかではなくね、
ただ純粋にもう一度会ってみたいなぁと思うんだ。
今の僕を見て何て思うか、とか
相手の懐かしい癖は今でもそのままだろうか、とかさ。

そんな風にほんの少しだけ後ろを振り返って見るのも
一年に一回だったらいいかな、なんてね。
そりゃ少しかっこ悪いけど、
今だったら春の夜風のせいにできるしね。

風呂上りで、ふ~

2006-01-30 20:55:08 | 風に走る
休み2日目の朝は相変わらずの早起きで、
今日は部屋の契約更新に不動産屋へ行って来ました。
自分はもうここに住んで長いので
今でこそ契約書にサインして更新料払って終わりなんですが、
以前はたいへんだったのです・・・

うちのマンションの大家さんはちょっと変わっていて
更新時にはちゃんと公証人役場へ出向き、
公正証書というものを作るのです。(初回はかな~り驚いた)
普通に不動産屋などで作る私製契約書に対して、
公正証書という公の契約書にすることで
どちらかが契約違反した場合に立ち退きなどの強制執行が
可能になるというものでした。(ちょっと怖!)
ま、そんなことはまず無いし、公証人役場なんて
めったに行く所ではないので、毎回結構楽しみだったんです。w

その後はスーパーで牛乳買って近くの公園でまた~り。
今日はやけに気温が高くて汗ばんだので、
いそいそとうちに帰り昼風呂へ。
あーこんな事でも嬉しいと思えるのはいいなぁ。
窓を流れる雲を見ながら浸かるのは、日本の名湯・山代の湯
淡いブルーのお湯に菖蒲の香りで和みます。

時間のある時は、湯船を出たり入ったりして、
もうダメというくらいまで温まるので、なかなか服が着れません。
しばらくはこの格好でハフハフしてます。w
でもこの開放感がたまらないのですよ!ほんと。

ゴールデンうんちくん

2006-01-29 16:11:01 | 風に走る
今日は朝から天気がいいなぁ~

いつものジムへは30分ほどの道のりを
隅田川を見ながらチャリンコで走っています。
今日みたいな日だと格別の気持ちよさで、
スタルクのゴールデン・うんち
いつにも増して一段といい輝きでした。w

ところで、「おいしい牛乳」なんですが
森永と明治のやつあるでしょ。
あれどちらがほんとうのおいしい牛乳なんだろう。
毎回交互に買ってみては、
その毎回どちらにも「美味いよ!これ」と感心するばかり。
なんだかね、決着つけたいんです、どうしても!www

午後の日差しに輝くゴールデン・うんちの下のベンチで
途中のスーパーで買った(ストローが入ってなかったので
また引き返したよ~)
「おいしい牛乳 by 明治」を飲みながら
そんなことを心に誓う平和な昼下がりでした。