ターザンが教えてくれた

風にかすれる、遠い国の歌

Blue pond

2013-07-03 13:57:02 | モノローグ

もう数年前になるかな、
日光へ遊びに行ったんだよ。

特別に何が観たいとか
何をしたいとかじゃないんだけども
せっかくここ東京に住んでいて
この九州の田舎者が
一度はあの有名な日光とやらを
見物してみなくちゃな。って感じで、
友達のお母さんと一緒に旅行に行ったんだ。

友達とそのお母さんじゃなくて
友達「の」お母さんとね(笑)

だってすっごく気が合うんだもん。
誰よりも、同じ年代の友達よりも。

そのお母さんは海外旅行が趣味なんだけども、
毎回のお土産話が僕は大好きでさ。

たとえばスウェーデンへ旅行に行ったとき、
日中のオプションで
ひとり郊外へのバス旅行へ行ったらしいんだよ、
でさ、途中の休憩で降り立った地面を見て

「どこもかしこも土地が岩盤でできてるのよねあの国は。
 だから、道路を通すにも線路を敷くのにも
 山をくり貫かなきゃならないのよね、

 国の文化を発展させるためにもそうしなきゃならないんだけど、
 だからこそノーベルさんの作ったダイナマイトっていうものが
 どれだけ大きな発明だったのか実感としてわかったのよ。

 この足が踏みしめている固い土地を見て
 わたしそのことがわかったのよね」

そのお母さんのお土産話はいつだってこんな風。

どこそこのレストランが旨かったとかなんとか
そんなことは聞いた事がない。

ガイドブックを読めばわかるようなことはこの人は言わない。

全部自分自身の身体と頭で感じ取って
考えたことを話してくれるわけ。

いいなって思ったな。

この人といるといつだっていいなって思った。

人と一緒にここにいるなってことが
いつだってちゃんと感じられる人だったね。




でね、日光へ行ったんだけど、
最初に奥日光にある
戦場ヶ原っていう原生林の森とか
その周辺の大湿原地帯を
思う存分散策してさ、
これがものすごく楽しかった。

自然の風景はやはりどれも素晴らしく、
たとえ立ち枯れてしまった樹さへも
その姿が美しいね綺麗だねって言っては
ふたりで飽きもせずに眺めていたっけね。

そのお母さんはモダンダンスを踊る人だったこともあって
いろいろとものの見方がユニーク。

「はやり、この地球上で物理法則に逆らうものは
 それは美しいものだとは思わないわね、
 この枯れ木だって朽ちて倒れ掛かってるけれども
 でもその傾き方とか枝の伸び方とかそんなもの全部が
 重力とか風の力とか
 全部そんな物理法則に則ってるのよね。」

そんな話ができる人と一緒にいることが
ほんとうにこころから嬉しかった。

全然寂しくなんかなくって
いつまでもこの時間が続けばいいなぁって思った。


そうやって歳の離れたふたり組みは
この地球上の物理法則の美しさに大感動しながら
大自然の風や風景や匂いを満喫して
その後でせっかくなんでと東照宮に行ったんだけどさ。

ごめん、自分はなんとも思わなかった。

そりゃあの時代にあんなものを人が造ったってことは
すごいっては思うけれどもさ、
それを美しいを思うかどうかは別の話だもんね。

自分思ったんだ、
人はなんとちっぽけなんだろって。

人が思いついてゴテゴテと懸命に作った造詣だって
天然の美しさの前においてはなんと小さなものだろって。

造られたものってその機能や美しさに限りがあるよね、
それに対して
天然の美しさっていうものはどこまでも無限。

いやほんとうにすごいなって思う。



いや、つい先日新しいPCのモニター買ったんだ。

それまではずっと以前に買ったDellの小さなモニターを
使っていたんだけども、
今回はちょっと大きなワイドスクリーンのやつを奮発したよ。

でさ、いつか大きなモニターを使うときには
絶対にデスクトップの壁紙に設定したいとずっと願っていたのが
この表題にある青い池のフォトグラフ。

アップルのOSX Mountain Lionで採用された
日本人 Kent Shiraishiさんの写真。

一目見たときから魂奪われてて、
自分の家で大きな画面で見たいなぁって
すっと思ってたんだよね。

この青い池の天然の複雑なブルーが美しくて
眺めても眺めてもいつまで経っても飽きることがない。

でさ、その白石さんのブログや
何しろアップルの看板製品のメインウォールペーパーに
採用されるなんてのは世界中の写真家の夢の中の夢なんで、
その時に発表された白石さんのコメントなどを読んで
僕はものすごく納得したことがあってさ。

出来上がりの自分の写真において
基本的に天然に存在しないような色補正はしないんだって。

それを読んで思いあたることがあって、

Windowsに採用されている壁紙とかにも多いんだけど、
紫に光る空とか、ゼリーみたいに輝く海とかさ
もう絶対にありえないような色をしたカラフルな風景画像ってない?
ってか、いまどきそんなんばっかじゃん。

確かに一目はぱっと綺麗だよ、目立つしさ。
でも自分は全然感動しない。
綺麗な色だねっては思うけど
綺麗な風景だねとは思わない。

誤解を恐れずに言ってしまうと
自然に対する畏怖の念とかそんなんが
あまりにも感じられなさ過ぎだもん。

人は天然の前において
思い知ること。
そして、
足るを知ること。

それって大事なことだよなぁって思う。

その写真家白石さんの元へ
世界中のフォトグラファーから
たくさんの電話が当時かかってきて
どうしてアップルに採用されたのかって質問したんだって。

白石さんは、

天然にない色の写真を作っている間は
決してアップルの目には留まらないでしょうね。

って言われていて、
僕はこのことにこころから賛同すると共に
なぜこの北海道の青い池の写真が
こうまでこころを離さないのかの意味が
ようやくわかるような気がしたな。



こうやって
大きな画面でこのBlue pondの写真を眺めていて
思い出したのが先に話した
友人のお母さんと行った日光のあの風景なんだ。

夕暮れの山から吹き抜けてくる冷たい風を浴びて
それこそ天然が作り出す無限の色彩の景色の中で
朗らかに楽しく笑うお母さんは
これまたほんとうに美しいなぁって思った。

すっごくそう思ったよ。


そのお母さん、
先日他界されてしまったんだけども、

でもさ、
その彼女の頭脳というかセンスというか
いっぱい話したことや一緒に体験したことは
ずっと変わらない。

彼女に教えてもらったこと
彼女の思想は
今でも現実の吹く風の中に思い出すこともあれば
こうやって変わらない時間の中に探り当てることだってある。

いままでは電車に乗って会いに行ったけど、
これからは彼女と話をしたくなったら
いつだって大丈夫、
それこそこの地球の物理法則に則ったものすべての中に
彼女の言葉を思い出すことができるもんね。

もう逢えない人
もう会うことのできない人

いままでありがとうとか
そんなことはとても照れくさくて云えないからさ、

だから、
僕はこうやって黙って
自然を見ている。

天然を見ている。









Kent shiraisiさんのブログ
 
http://blog.goo.ne.jp/chimaki-1014/e/db5ea1660b8c7fedd2f671189ed88c3a


Blue pondの大きな画像は「Mountain Lion WallPaper」で検索して見て下さい。




最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (手帳)
2013-10-13 18:34:15
b-minorさんこんにちは。
今日の話何回も読んじゃった。
もう電車に乗って会いに行けなくても、あらゆるものの中にその人を感じられるってところにドキンとしたよ。
お会いしたことないけれどきっとあなたにお目にかかったら、あなたが今までに見た美しい物や大切にしているものが粒子のように漂ってるのが感じられるんだろうな。

もしかしたら私も含めて皆なも大事なものを纏っているのかもしれない、ただあなたのようにクリアに出来ていないだけなのかしらって思いました。
どうしても生活や自己嫌悪がまとわりついてきてしまう。それをb-minorさんは意志で払い落し続けているんだろうなって思ったよ。
享楽主義者でストイック。本当に不思議な人だな~。

でもあなたしか書けないこんなお話聞いちゃうといつも勇気が湧いてきます、ありがとう。

私いつかアラン島に行ってみたいのですが、きっとその時はあなたを想うよ!
返信する
手帳さま (b-minor)
2013-10-17 16:56:29

お久しぶりです!

またお話できて嬉しいですよ。

最近思うんですけどね、
自分自身の本心をちゃんと言葉にして
話そうとしてくれる人ってありがたいなぁって。

話の上手い下手というよりも
わたしは今こんな風なことを思ってるよ!
っていうことを知らせてくれる人、
そんな人と会う度にいいなぁって思うんですよ。

手帳さんのそういった
正直に思うことを伝えてもらえる言葉は
いつだって素直で鮮やかで大好きなんです。

そういうのって
僕は本当に美しいと思うんです。

いつかの花束の画像
あれちゃんとiPhoneに入っていて
時々眺めてるんですよ。
あの花束はとても饒舌ですね、
毎日の手帳さんの生活の中で
言葉で言えることも
言葉で言えないことだって
ちゃんとあの花の束に感じます。

享楽主義者でストイック。

嬉しいです(笑)
手帳さんにつけていただいたコピー
胸につけて誇らしい気分になります。

手帳さんのことば
久しぶりにうかがえていい気分になりました。

こちらこそ
ありがとう、です。

また、是非。


b-minor

返信する

post a comment