ターザンが教えてくれた

風にかすれる、遠い国の歌

日時計に影は廻る

2006-12-29 21:50:06 | モノローグ
いい事を耳にすれば、すごくうれしい。
悪い出来事を知れば、やっぱり悲しい。
そんなことは、当たり前なんだけどね。

世の中のほんとの事を知らないまま生きるのは
それは、とても恐ろしいことだと、
ずっと自分に言い聞かせてさ。
誰もが喜ぶ素晴らしい出来事に出会っても、
その裏にある企業の画策、情報操作、
個人の欺瞞(ぎまん)、多勢の偽善。
一見にはわからない、そんな、
この社会においてのいわゆる「大人の事情」ってやつ。
それをことさらに探し出して暴き出してさ、
「そんな恐ろしいことには取り込まれないぞ、
自分はそんな汚れた「事情」とは関係ねーや」
そうやってさ、一生懸命にそいつらを怖がって。

よく人に諭されたものだよね、
「本音と建前なんだからさぁ、
そんな事は世の中の誰もがやってるんだからさぁ」って。
親切に教えてくれてありがとね。
そのついでにさ、もう一つ教えてよ、
その「世の中の誰も」がどこにいるのかをさ。

建前を使い分けて、上手に嘘を使い分けて、
そうやって金を稼いでさ、飯を食ってゆくんだ。
なんて考えていると、とたんに辛くなるから、
ひとつ、この自分自身に正直になって生きてみる。

嘘をつかずに、何ひとつ欺くことなく、
このニセモノだらけの世の中で、
自分だけは潔白だと目を瞑(つむ)って歩いてみる。
すると、とたんに生きづらくなるから、
ひとつ、この自分をうまくだまして生きてみる。

何が正しいことなのか、何が美しいことなのか、
忙しい毎日の中ではちっともそれがわからないから、
そこで、いっそのこと、そんなものは夢物語だと、
初めからどこにも無いものだと思って生きてみる。

道を往く人、すれ違う人、
その誰もが順風満帆、幸せ人ばかりだと思うと、
なんだかすごく、自分が小さく見えてしまうから、
自分ひとりが取り残されているようで進めなくなるから、
ここはひとつ、街の誰もが不幸せなんだと思ってみる。
みんな誰もがつらい人生を送るものだと、
しかたがない、しようがないと、
あきらめ顔で泣きながら生きてみる。

生きてみる。

生きてみる。

おぉ、いいなぁ、どれもみんな。
だってさ、「生きて」いるんだよ。

生きるってことは、変わり続けることが出来ること。
生きるってことは、昨日を過去に出来ること。

正直になっても、嘘をついても、
あきらめても、泣きながらでも、
そんなものはどれもみんな、
そうしなければ生きて来られなかった
道のりの傷あとなんだと思う。

過去に不幸にしてつらい出来事の中で
生きて来た記憶があったとしても、
もしくは、今現在の生活の中で、
何か苦しくつらいことがあったとしても、
それが自分の中でなるべく小さな一部となってゆくように、
自分自身で練習してみる。
世の中のいろんな考え方を身につけることで、
あれほど一大事に思えた出来事が、
気にならない程度で、
上手に考えることが出来るようになったりして、
新しい考え方を身につける分だけ、
その分ほんの少し自由になれるんだと思う。

心がつらい出来事でいっぱいになっている状態では、
極端に自分の視野が狭くなっていて、
世の中に対してものすごく悲観的になっていたり、
自分を守るために攻撃的になっていたりするものだもんね。

誰が悪い、アイツが悪い。
何が悪い、世の中が悪い。
自分がこんなに苦しいのも、
すべては誰かのせいだということで
説明がつくような気になってしまうこと。
それはとっても哀しい理屈で、
自分自身も、そして周りの人間さえ
傷つけてしまう生き方だけれど、
それでもさ、
何かのきっかけをつかんで、
少しづつでも変わって行けたらいいなぁと思う。

楽に生きる、自由に生きるってなかなか難しい。
それが出来る人にとっては容易いものなんだろうけど、
自然に身についていない者にとっては、
これが結構出来ないんだよなぁ。
眉間にシワを寄せて小難しいことを考えるよりも、
明るく朗らかに笑うことの方が断然かっこいいと言う事に
随分と気付かなかったんだよね。僕は。

朝起きると、真っ白な陽の光が窓から差し込んでいて、
「綺麗だなぁ」と、寝起き眼で眺める。
通勤途中の花屋の店先には、クリーム色のユリの花が咲いていて、
「綺麗だなぁ」と、花びらに触ってみたくなる。

「自分の中に無いものを、
人は感じる事は出来ないんだよ。」って、
昔誰かに教わったんだけれども、
それが本当だとしたらさ、
真っ白な朝の陽の光も、クリーム色したユリの花弁も、
ずっとこの自分の中にあったということじゃないか。

美しいものを感じ取ることが出来る度に、
心から湧き上がる嬉しさの意味は、
そういう事なのかもね。

だから、
僕は、美しいものがいい。
そのものに触れた瞬間に
ふっと気持ちに明かりが灯るような、
そんな美しいものがいい。

そして、
美しいということは、
表現することでもあるんだ。
ほんとうに美しいものというのは、
形に表されるということを、
ずっと待ち続けているものだから。


美しくなるのよ、ね。(笑)

2006-12-06 17:26:04 | 風に流される音楽もあった
Spa Music for Well-Being.

えーと、
スパ・ミュージックって言うんだってさ。

僕は、頑張ってもせいぜいアロマ・マッサージ止まりなので、
薔薇の花びらなんか散らしたでかいバスタブに浸かるような
本格的なスパというものは経験が無いんだけど、
そんな素敵なスパ・サロンで流れているような音楽って事らしい。

環境音楽って、特にアンビエント・ミュージックなんかさ、
時としてちょっと暗くて怖いことない?
トーンの低い持続音が迫って来る感じとか、ほんと恐ろしいし。
なんだか息苦しくなるもんね。
また、妙にスピリチュアルなやつもやばい、
ずっと聴いてると今にも雲の上の
天国に召されるような気分になってきてさ、これも怖い。

あのね、もっと自己主張しない音が聴きたいんだよ~
これでもかと盛り上げてくれなくてもいいし、
大空に連れてってくれなくてもいい、
ただ、控えめに淡々と奏でて欲しいわけ。

そこで、ヒーリングと呼ばれるジャンルから派生してきた、
このスパ・ミュージックなんだけど、
これ明るくて爽やかでね、なかなかいいかもしれない
と思って、いろいろと物色中であります。
一応は身体を癒すスパ・サロンでの使用がイメージなので、
深遠なメッセージ色やダークな響きは微塵も無くて、
その肌触りはひたすらにクリーンな感じ。

そして僕が特に感じるのが、
このスパ・ミュージックは「密室」の音楽だということ。
音の要素には、水の音や小鳥のさえずりなどの
自然界の音をふんだんに使ってあるんだけど、
それらの音はきちんとした佇まいで、
そのまま部屋の中に留まる感じがするんだよね。

これはものすごく心地良いものだと再確認させられた。

自然ってさ、大自然ってさ、
圧倒的な美しさの反面では、人の命さえも
簡単に奪ってしまうような厳しさを持ってるでしょ。
その大自然を、人工的なガラスで囲って出来上がるのが
人の安心して楽しめる「リゾート」ってヤツだとすれば、
そんな、程よく囲い込まれた空間の中でこそ、
緊張もほぐれて無理なくリラックスできるもの。

透明な響きの底でゆるりと流れるのは、
「あなたを傷つけるものはどこにもない」というイメージ。
そこに「安心感」というとても贅沢な音が聴こえる。




European Spa
Yuri Sazonoff, Dan Gibson
♪Music Sample

透明な水の音に、
冷たいピアノと弦の音色が溶ける。
ひんやりと潤う水分を含んだ空気、
そんなものをそっくりとパッケージして、
何を聴くか迷った時には、
取り合えずこの一枚。
我が家での登場回数最多CDであります。




Desert Spa
Ron Allen, Dan Gibson
♪Music Sample

大地に空にかすれる笛の音と
乾燥した熱い風の音が重なる。
このプリミティヴな響きは、
黄昏どきに聴いたりなんかすると、
絶妙に淋しくてね、
また、これがいい感じ。
暗くなる前に早く買い物に行って、
今日もちゃんと、
おいしい夕食を作ろうって気になるね。



そうだ、そうだ、思いついた、
この音楽は多分「健康的」ってヤツだね。
ヘルシーって書くと、まぁ随分と陳腐なんだけどさ、
「清潔で健康的なイメージ」ってのが
一番しっくり来る説明になるんだと思う。

そして、健康的ということは美しいということだよなぁ。




SPA~スパ
Shinji Kinoshita
♪Music Sample

(芸の無いタイトルがちとアレですが)
竹林を揺らす薫風ってイメージかな。
センス良く程よいアジアンテイストっぷりが、
とても肌なじみが良くて素晴らしい。
少々大人のスパ・ミュージックでございます。



Feng Shui
Daniel May
♪Music Sample

Feng Shuiとは「風水」の意味だそうで、
なるほど、西洋人が考えた東洋の音。
ただ、過剰な音の演出は無いので、
これはこれで面白い。
現代の室内楽として見れば
なかなかに秀逸でした。




Thalasso Spa
H.Garden
♪Music Sample

たいへんゴージャスな装丁のCDでございます。
なんでも、
モナコ公国にあるハイソなスパ、
「レ テルム マランド モンテカルロ」
と言うタラソ・スパ・サロンのオフィシャルCDなんだそう。
で、その音色はと言うと、
やわらかいトーンで癒すというよりも、
新鮮なサラダのような音楽。
シャープに刻むビートも巧みにブレンドされていて、
確かにこれは音の方もゴージャスでゴザイマス。




Indulge: A Day at the Spa
Yuri Sazonoff
♪Music Sample

こいつはすごいや。
おそらく「スパ・ミュージック」
と呼ばれる音楽ジャンルの中では、
まさに王道、直球ど真ん中な音作り。
バスタブから立ち昇る湯気のように
たゆたゆと揺らぐシンセと女性コーラス。
気だるさと爽快さの織り成す
アンビバレンツな官能性でありました。




Spa Music for Professionals
V/A
♪Music Sample

これも王道スパ・ミュージック、
それもコンピレーションになっているので
ほんといいとこ取りのお宝CDでございます。
ピアノ、ハープ、ギター、コーラス。
それらの楽器が絶妙な距離感、絶妙な温度感で
奏でる癒しの音楽。
あぁ、今までに無いジャンルが誕生したんだなと、
僕自身が知るきっかけになったアルバム。
ただこのCD、もともとは「Quiet Days」っていう
普通のヒーリングアルバムだったのを、
輸入する時にタイトルとジャケを変更した模様。
でも、コレが良かった。
だって、元の地味なアルバムのままだったら、
絶対に探し出せないもん。
輸入レーベルの中の人グッジョブでした。



このスパ・ミュージック、
本来の使い方は入浴の時なんかに
浴室で聴いたりするんだろうけど、
僕の場合は、
部屋の中でずっとエンドレスで鳴らしています。
やさしく清潔な音で部屋の中が満たされていると、
何をするのにもさ、すごく気分が良くて、
たいていの事も落ち着いてこなせるんだよね。
一度だけ、お風呂にアロマキャンドルたくさん点して
このスパ・ミュージックを流してみたんだけど、
これがまぁ、見事にはまり過ぎて何とも恥ずかしかった。





A Sense of Renewal
Glendon Smith
♪Music Sample

これはもう、
反感を買ってしまいそうなほどに、
安全で健康的な音がしてます。
朝の日差しの中で、
いい香りのする暖かなお湯に身をまかせる、
みたいな心地よさ。
僕にとっては、のどから手が出るほど欲しい、
至福のひと時でございます。




Breathe
Richard Evans
♪Music Sample

スパ・ミュージックと
イージーリスニングの境界線にあるのかな。
あたたかでどこか懐かしい響きのインストは、
これもやっぱり聴く人の傍へ
ひっそりと寄り添うような音を紡いでいて、
白いコットンのような素朴なテクスチャーは
個人的にもたいへんお気に入りの一枚。




この「スパ・ミュージック」という言葉で
カテゴライズされるようになったこれらの音楽、
その楽曲自体が新しいわけではなくて、
今まではヒーリングというジャンルに入っていたんだと思う。
その、膨大なカタログの中から、
やさしく清潔で、安全で健康的というようなイメージの曲を
見つけ出すのってとてもたいへんだったんだよねー。
これはと思う一枚のアルバムを買って見ても、
気に入るのはその中の一曲とかでさ。

数年前に自然派化粧品ブランドの「オリジンズ」が出した、
美しく癒されるというコンピレーションアルバム、
「MasterPiece Montage」というCDを、
それはもう擦り切れるほど(!)聴いていたんだけど、
今思えば、それこそがスパ・ミュージックだったんだよね。

環境音楽ってさ、もうほんとそのイメージを、
どれだけ的確に新鮮な音で描くかで勝負が決まると思うわけ。
その点、このスパ・ミュージックはすごくイメージしやすい。
「温泉水の流れる美しい空間で、
これまた身も心も美しくなるために、
様々なセラピーを施されるスパ・サロン」。。。
ほら、思い浮かべるだけでうっとりするじゃないか。
これが、「会社でミスをした自分を元気にするイメージ」
とか言われてもさ、ちょっとね、なかなか困難だもん。

ただ、
今のところほとんどのスパは女性専用になっているのがね、
そこがとてもとても残念なところ。
これは僕が男だからと言うことではなくて、
もし自分が女性だったとしても同じように思ったと思うよ。
心地良く健康的なことは素晴らしいことだしさ、
そんな素敵なことに性別を持ち込むなんて、
とっても野暮なことですぜ。(笑)