もうだいぶ前、夏みかんを食べ過ぎたときに書いたお話。
事情があって、再度アップ!
「自由」
くる日もくる日も魔女のところには、いろんな動物たちが願いごとにやってくる。
ある日、ピンクの子豚がやってきて、さわやかなみどり色になりたいと言った。
あまり似合わないと思ったが、たいしたことではないので叶えてやることにした。
しかし、前の日にみかんを食べすぎた魔女は、誤って子豚をオレンジ色にしてしまった。
なかなか可愛いではないかと思うのだが、子豚はあきらかに不満気だ。
変色の呪文は一度使うとしばらくは効かない。もとにももどせない。
仕方ないので、カメレオンのもとに行き、変色術を習うように手紙を持たせ、旅立たせることにした。
カメレオンは色だけでなく、気も変わりやすい。
はたして、子豚はみどり色になれるのだろうか。
しかし、まだたくさんの動物たちが待っている。
忙しい魔女は子豚の持つ運にまかせることにした。
子豚は長旅を経て、カメレオンのもとに着き
「みどり色になる方法を教えてください」と頼んだ。
「ほう、なんでみどり色になりたいんだね?」とカメレオン。
「馬や牛たちのように、広い牧場でのびのびと草を食べたいんです」
「それにどうしてみどり色になる必要があるのかね?」
「だって、目立つでしょ・・・」
「子豚よ、なぜ私が身体の色を変えるのか知っているかい?」
「いいえ」
「食料の虫に近づくために、わからないようにしたり、
敵に襲われないように、そっと目立たなくするんじゃよ」
「牧草は逃げない。なぜ目立ってはいけないのかい?」
「だって、豚なのに変わっているでしょ。変豚って言われそう・・・」
「それの、どこが悪いんじゃ。
わしは、あまりに変わってばかりだ。
ときどき自分の色を忘れてしまいそうで、心細いこともあるんじゃよ。」
「坊や。牧場は守られている、堂々と草を食べるといいさ。
豊富にある草を豚が食べてはいけないなんて、誰も言わないと思うがね。」
「魔女からの手紙では間違ってオレンジ色にしてしまったと書いてあるが、
旅の途中でだいぶ薄れている。
このまま帰れば、立派なピンクの子豚にもどっているじゃろう。
堂々と牧草を食べるといい。」
「でも・・・」
「大丈夫だ。あそこの牧場は草がたっぷり生えてくる。
馬や牛たちは怒らないだろう。友達になるといい。
世界が広がって楽しくなるぞ。
話す言葉がわからなくなったら、そのときこそ魔女のもとへ行くんじゃ。
魔女は動物たちと仲がいい。」
「わかりました。ぼく、やってみます。
小屋から出てみます。」
こうして、子豚はカメレオンのもとを去り、牧場のある村へと帰っていった。
今のところ、まだ子豚は魔女を訪ねてきていない。