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ひとり井戸端会議

主に政治・社会・法に関する話題を自分の視点から考察していきます。

テロ特措法反対は百害あって一理なし

2007年08月31日 | 外交事情考察
 安倍内閣の喫緊の課題として、テロ特措法の延長があります。しかし、ご存知のとおり、参院は民主党がマジョリティーを占めてしまっているので、延長をさせるのは容易ではありません。
 民主党には、同法に賛成の議員もいます(たとえば、前原氏など)。それから、無所属の議員であっても、同法に賛成の立場の議員もいるでしょう。彼らを巧く取り込んで、同法の延長をいかにするか、とういうのが、安倍内閣の最初の試練であると思います。

 しかしながら、民主党の小沢代表は同法の延長に反対の立場を崩しません。先日、ドイツのメルケル首相と会談した際も、メルケル氏の説得にもかかわらず、改めて反対の意思を表明しました。これは全くもって由々しき事態であり、責任政党を自称する民主党にとってもマイナスの効果しかもたらさないと思います。

 小沢氏の同法延長反対の理由は以下のような点からです。

 1、米国のアフガニスタン戦争は「米国の戦争」であって、国連の決議に基づいていない。
 2、日本の直接の平和とは関係ない。
 3、インド洋での給油活動は、憲法の禁じる集団的自衛権の行使にあたる。

 まず、1についてですが、これは大いなる誤解です。国連決議1368号があるのです。加えて、今年の3月にこの決議を補強するかたちで、1746号決議が出されています。
 確かに、アメリカのアフガニスタン攻撃はアメリカの自衛権の発動としての攻撃でしたが、戦闘行為自体は終結しているのです。戦闘行為が終結しているということは、もうアメリカとアフガニスタンは戦争はしていません。戦闘行為が終結している以上、そこは「非戦闘地域」に定義されるはずです。非戦闘地域で自衛隊が活動をすることは、憲法で禁止していないことは明らかです。そこに自衛隊を派遣し、国際社会の手伝いをすることの、一体何がいけないのでしょうか。

 小沢氏の「国連信仰」は今に始まった話ではないですが、そもそも、過去に(小沢氏の考えるような)国連の決議を受け、国連軍が組織されて行われた戦争など、果たしてあったでしょうか。いつも国連決議を、言うなれば「拡大解釈」をして、国連のお墨付きをもらったということにして、戦闘行為を展開したという理解のほうが、正しいと思います。
 国連奉じて国益損ねるでは話になりません。国連に過度の期待は禁物です。

 2についてですが、これは小沢氏の見識を疑ってしまいます。一国平和主義の社民党や共産党が言うのならまだしも、責任政党になろうとしている民主党のトップが、このような見解では、日本の舵取りを彼に任せることはできません。
 アルカーイダなどのテロ集団は、アメリカの同盟国への攻撃も辞さない構えは明らかです。2004年3月11日に、スペインで起こった列車爆破テロは記憶に新しいです。つまり、日本の平和に直接関係ない、わけがないのです。もし、対テロ行動が日本の平和に直接関係のないことと言うならば、それは日米安保の破棄を宣言するに等しいはずです。

 3については、憲法の一体どこで「集団的自衛権は行使できない」と書いてあるのでしょうか(苦笑)。憲法で集団的自衛権を行使できないと「解釈している」のは、内閣法制局です。憲法それ自体ではありません。
 以前にも述べましたが、日米安保条約に基づいて国内に在日米軍を置くことそれ自体も、実は集団的自衛権の概念なしでは説明できないのです。もし、内閣法制局が全面的に集団的自衛権を禁止しているのであれば、在日米軍は一体何に基づいて日本に駐留できているのでしょうか。
 「こちらの集団的自衛権はよくて、あちらの集団的自衛権はだめ」というのならば、その線引きを明確に示すのが筋ではないでしょうか。

 日本の国際的な信頼の上昇にも、自衛隊によるインド洋での給油活動は貢献しているのです。アメリカ、パキスタン、フランス、カナダ、イタリア、イギリス、ニュージーランド、ドイツ、ギリシア、オランダ、スペインの駆逐艦および補給艦に給油活動を展開しているのです。この意味では、湾岸戦争で得た教訓である「名誉は金で買えない」ということを学習し、共に汗を流すことを実践できているということでしょう。つまりは、この給油活動は日本の国益にも資していると言えるのです。
 国益的視点からの評価ではもうひとつ、西村真悟衆院議員の視点が極めて的を得ていると思われるので、ここで一部を引用させていただきます。以下引用。



 インドネシアからインドに至る護衛艦の遊弋の成果は、たかが「給油の成果」だけで計れるものではない。我々は、インド洋で無料ガソリンスタンドを開設しているのではない。自衛隊の活動は、シーレーンである海洋・海峡の安全という我が国の存立にかかわるほどの重みをもっているのである。
 自国の独立という重大な事件に、決定的なインパクトを与えた国の軍艦旗を掲揚した海軍艦艇の遊弋が、どれほどの効果を持っているか。どれほど、地域の安全に貢献しているか。――引用終了
 


 そういえば、湾岸戦争時に国際社会における日本の存在感を誇示するために、現地に自衛隊を派遣すべしと、自民党の中で声高に主張していたのは、確か小沢氏だった気がしますが・・・。所属が変われば、こうも主張も変わるものなのですね。

 今、テロ特措法延長に反対し、日本が対テロ掃討作戦という国際的コンセンサスから脱落するということは、湾岸戦争時と同じ轍を踏むということになるのではないでしょうか。
 民主党には現実的な判断を期待します。

日本のマスコミが報道しなかったインド首相の演説全文

2007年05月05日 | 外交事情考察
 昨年12月14日、インドのマンモハン・シン首相が来日しました。そこで、以下のような大変誉れ高き演説をしたのですが、日本のマスコミは中国の温首相の演説は、これでもかと言うほど、繰り返し流したのに対し、シン首相の演説は、温首相のそれとは比較にならないほど、取り上げられてはいませんでした。

 本来ならばインドは、これからの日本のために、安全保障上、経済関係上、なくてはならない存在であり、決して蔑ろにはできないはずですから、マスコミは中国の首相の演説と同じぐらい取り上げていいはずですが、アジアは中国しか念頭にないのでしょうか。

 以下、シン首相の演説全文。



河野洋平衆議院議長閣下
扇千景参議院議長閣下
安倍晋三内閣総理大臣閣下
衆議院議員ならびに参議院議員の皆様
著名な指導者の皆様ならびにご列席の皆様

 この威厳のある議会において演説の機会を得ましたことは栄誉なことと認識しております。我々二カ国の国民が互いに寄せる善意と友情の表れです。

 ご列席の皆様
 日本とインドは文明的にも近い国であります。我々の最も古い絆を形成するのが、共通する遺産でもある仏教です。二つの文化は歴史を通して交流し、豊かさを増してきました。1000年余り前、インドの僧侶ボディセナ(菩提僊那)は、東大寺の大仏開眼供養に参列するため奈良を訪れました。近代においては、タゴールと岡倉天心が、アジアの偉大なる両国の間に理解の新しい架け橋を築きました。

 科学技術の発展に基づく明治維新以降の日本の近代化と、戦後に日本再建の基となった活力と気概は、インドの初代首相であるジャワハルラル・ネールに深い影響を与えました。ネール首相は、インドが日本と緊密な絆を結び、その経験から学ぶことを望みました。

 インドが日本からのODA(政府開発援助)の最初の受益国になるよう尽力されたのは、当時の岸信介総理大臣でした。今日、インドは日本のODAの最大の受益国であり、こうした援助に我々は深く感謝しております。

 日本の工業は、自動車や石油化学などインド産業の発展のために貴重な役割を果してきました。90年代の初頭、インドが深刻な経済危機に陥った時期、日本は迷うことなく支援し続けてくださいました。

 1952年、インドは日本との間で二国間の平和条約を調印し、日本に対するすべての戦争賠償要求を放棄しました。戦後、ラダ・ビノード・パル判事の下した信念に基づく判断は、今日に至っても日本で記憶されています

 こうした出来事は、我々の友情の深さと、歴史を通じて、危機に際してお互いに助け合ってきた事実を反映するものです。
 日本を訪れるたびに、お国の発展を見て真に鼓舞され、寛大さに心を打たれます。私は、1992年の訪日を決して忘れることがないでしょう。それは、インドの財務相として初の両国間の訪問でした。

 1991年に前例のない経済危機に対処した際、日本から送られた支援に謝意を述べるための訪日でした。古い型を打破し、グローバル化しつつある世界での競争に備えるべく経済を開放し、新たな前進への道を乗り出す機会を、あの危機は我々に与えたのでした。当時、弾力性や献身といった長所、あるいは逆境にあって如何に機会を創造するかといったことを日本から学ぼうとして、我々は日本に目を向けたのでした。

 新生インドの首相として、今日、私は日本に戻ってまいりました。過去15年間、インド経済は年率平均6パーセントを上回る成長を遂げてきました。近年は一層弾みがつき、成長率は年間8パーセント以上に加速しています。現在、インドの投資率は対GNP比で30パーセントに相当します。1990年代初頭に立ち上げた広範な経済改革の結果、インド経済は、経済のグローバル化と多極化の進む世界の出現によってもたらされた課題やチャンスを受けいれる柔軟性を身につけました。

 インドは、開かれた社会、開かれた経済として前進を続けています。民主的な政体の枠組みの中でインドを変容させようとする我々の努力が成功を収めることは、アジアと世界の平和と発展にとって極めて重要です。これまでに、10億を超える人々が民族や文化など多元的な要素を抱えた民主主義の枠組みの中で貧困を撲滅し、社会と経済を現代化しようと試みた例は全くありません。

 インドは、現在、持続的な高度成長の波に乗っていると思います。サービス主導型かつ技術先導型の経済によるグローバル経済との統合という新しいモデルを開発してきました。今日、インドは、情報技術、バイオテクノロジー、医薬品など、知識を基礎とする分野で主要な役割を担う国として台頭してきました。道路、鉄道、電気通信、港湾、空港などから成る物理的および社会的インフラを拡大し現代化するため、大規模な投資が行われています。こうした発展は、インドの製造業の競争力と生産性を大いに高めるでしょう。

 インドと日本が両国間の結びつきを急速に発展させるための土台は、こうした経過と国際的な筋書きの変化によって生まれました。二つの古代文明にとって、戦略的かつグローバルな関係を含む、強固で今日的な関係を構築する時が到来したと思います。それは、アジアと世界にとって大変重要な意味をもつでしょう。

 我々は、自由、民主主義、基本的権利、法の支配という普遍的に擁護された価値を共有するアジアの二つの大国です。両国間に存在するこの共通の価値と膨大な経済的補完性を活用し、互いに相手国を最重要と認める強固なパートナーシップを築いていかなければなりません。

 また、新たな国際秩序の中で、インドと日本は国力に見合った均衡の取れた役割を演じなければならないという点でも、考え方を共有しています。日印間の強い絆は、開かれた包容力のあるアジアを構築し、地域の平和と安定を強化するための重要な要素です。

 経済関係が二国間関係の基盤となるべきであり、この分野での結びつきを強力に推し進めることが必要です。日印間の貿易や投資は、到底その可能性を発揮しているとはいえません。それとは対照的に、インドと中国、インドと韓国の貿易は好調で、昨年は両国との貿易がおよそ40パーセントの伸びを示しました。中国との貿易は日印貿易の3倍近くに膨らんでおり、韓国との貿易も日印貿易とほぼ肩を並べています。

 経済協力の可能性を十分に生かすには、両国の政府、経済界、産業界の積極的な努力が必要です。

 将来、このパートナーシップを築くことができる最も重要な分野は、知識経済であると信じています。両国の経済構造、比較的得意な分野の均衡状態、人口動態の違いなどを考えれば納得できるでしょう。

 科学技術の分野でも、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、生命科学、情報通信技術といった将来の成長分野での提携を加速させていく必要があります。インドのソフト産業と日本のハード産業は、相乗効果を活用しながら発展しなければなりません。

 心ある賢人同士のパートナーシップは、人事の交流をより盛んにすることを意味します。私は、インドにおいて日本語を学ぶ学生の数が増えることを願っています。日本語は、既にインドの中等教育で外国語の選択科目として導入されています。明日、安部総理大臣と私は、「将来への投資構想」を立ち上げます。今後数年の間に何千人ものインドの若者が日本語を学ぶことができるようにしたいと望んでいます。

 相互が関心を持っているもう一つの分野は、エネルギーの安全保障です。アジア地域全体として、エネルギー供給の安全を保障し、エネルギー市場を効率的に機能させることが必要です。

 我々は貿易とエネルギーの流れを確保するために、シーレーンを保護することを含めた、防衛協力の促進に同等の関心をよせています。

 日本と同様にインドも、増加するエネルギー需要に対応するため、原子力が現実的でクリーンなエネルギー資源だと考えています。これを実現させるために、国際社会による革新的で前向きな取り組みが軌道に乗るよう、我々は日本の支援を求めます。

 テロは平和に対する共通の脅威で、開かれた我々の社会の調和と組織を脅かします。テロには多くの側面があり、その原因も多様で、地理的な境界も無視されるという複雑な問題なのです。我々が力を合わせないかぎり、テロとの戦いには勝てません。

 私は、国連と国連安全保障理事会が今日の情勢に対応できるものになるよう、その活性化と改革に向けて両国が協力してきたことをうれしく思います。両国は国連とさまざまな国連関係機関の効率強化に関心を持っています。この意味において、今、我々が置かれているグローバル化された世界で、各国の相互依存関係を秩序正しく公正に運営していくべく、両国の協力関係を強化しなければなりません。

 アジアで最大の民主主義国と最も発達した民主主義国である両国は、お互いの発展と繁栄に利害関係を有しています。我々は、インドの経済環境が投資のしやすいものになるよう努める決意です。日本企業に是非インドにおけるプレゼンスを拡大していただきたいのです。安部総理大臣と私は、二国間の投資、貿易、テクノロジーの流れを増大させるべく、包括的経済連携協定の締結につながる交渉を開始します。

 我々のパートナーシップは、アジア全域に「優位と繁栄の弧」を創出する可能性を秘めています。それは、アジア経済共同体の形成の基礎となるものです。

 こういった日印間のパートナーシップを拡大させたいという希望や抱負は、あらゆるレベルでの交流を増すことによってのみ現実のものとなります。我々はハイレベルでの「エネルギー対話」を設置することで合意していますが、このような機会がさらに多くの分野で設置されるべきであり、とりわけ貿易と産業分野では不可欠です。

 ご列席の皆様、
 いかなる戦略的パートナーシップにおいても、その礎となるのは人々の友情です。日本の若者の間で映画『踊るマハラジャ』が人気を博していると聞き、うれしく思っています。インドの子供たちは、日本のロボット『踊るアシモ』を見て歓声を上げていました。また、日本ではインド料理店の数が驚異的に増えているようですし、インドでも寿司と天婦羅への人気が高まってきたことは間違いありません。

 2007年は日印友好年であり、日印観光交流年でもあります。さらに、両国を結ぶ航空便の大幅な増便も望んでいます。老いも若きも多くの日本人がインドを訪れ、古代と現代のインドが放つ数多くの輝きをご自身の目で見てほしいと思います。

 インドと日本の新たなパートナーシップという構想は、本日、その決定的瞬間を迎えました。私の訪日はこの構想を具体化するためであり、21世紀をアジアの世紀にするために我々が努力して演じている役割に、将来の世代が感謝することができるようにするためなのです。

 ご清聴、ありがとうございました。

妥当な最高裁判決

2007年04月28日 | 外交事情考察
 昨日、第二次大戦中に日本で過酷な労働をさせられたと主張する中国人とその遺族らが国に損害賠償請求等を行った訴訟、ならびに、いわゆる「従軍慰安婦」とされる女性が提起した訴訟で、最高裁は原告らの主張を棄却しましたが、これは至極真っ当な判断だと思います。

 最高裁で上告が棄却されたことにより、この種の途方もない争いに一定の決着がついたと言えるでしょう。

 そもそもとして、原告らは訴える相手を間違えています。訴える相手は、日本政府ではなく中国政府です。

 最高裁も指摘した通り、日本と中国が国交を正常化する際に締結された「日本と中華人民共和国政府の共同声明(日中共同声明)」によって、中国の日本への戦争賠償の請求は明確に放棄されているのですから。

 一方、中国側はこの共同声明を「一方的な解釈は許されない」と批判をしましたが、とんでもない。これは、日本側の一方的な解釈ではなく、共同声明を発する際に、田中角栄元首相と周恩来氏との間で合意したことなのです。

 そして、このとき中国政府は、日本に対して戦後賠償請求について言及してきたのですが、田中元首相が退けたのです。その際の主張として、「一つの中国」を前提とし、中国共産党政府が国民党政府ではなく、自らを正統の中国政府と自認するならば、中国共産党政府は日本と国民党政府との間で結ばれた平和条約を遵守する義務が、国際慣習法上認められる、というものでありました。

 つまり、この共同声明はその約20年前に日本と国民党政府(台湾)との間で締結した「日本と中華民国との平和条約」が根幹にあるのであり、ここで戦後賠償請求が放棄されている以上、これを認めないとなると、中国は自ら「二つの中国」を認めることになるのですよ?

 少し話がずれました。

 そして最高裁は、下級審が「個人の賠償まで放棄していたと解することはできない」としましたが、サンフランシスコ平和条約では、個人の賠償請求までも放棄されており、日中共同声明がこれと異なる解釈の上に成り立ってるとは言えないとしましたが、これも至極真っ当な判断です。

 日本は、独立を回復し、主権を回復し(その日は今日の4月28日です。なお、サンフランシスコ平和条約の調印は9月8日です。4月28日は、国際法上、サンフランシスコ平和条約の効力が発生した日です。)、各国と国交を正常化する一連の時間軸の中で、戦後補償は修了しており、日本政府がその賠償責任を負わないのは当たり前です。

 現在、法的に確定したことの蒸し返しという、法治国家として断じて認めることのできない訴訟が相次いで係属中ですが、各裁判所が今回の最高裁判決を踏襲することを期待しています。