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吉田修一「パーク・ライフ」

2021年01月10日 | や・ら・わ行の作家


文春文庫
2004年10月 第1刷
2019年 4月 第22刷
177頁


「パーク・ライフ」
東京で独り暮らしをしている会社員の青年
地下鉄日比谷線車内で思わず独り言を大きな声に出してしまい焦ったところ、旧知の仲であるかのように一人の見知らぬ女性が反応してくれ、何とか恥ずかしい思いをせずに済むという出来事があった日の昼休み
いつものように日比谷公園で先輩とベンチに座っていると、あの地下鉄の女性がスタバコーヒーを片手に別のベンチに座っているのが見え、急いで彼女のベンチまで行って話しかけます
彼女はいつも同じベンチに座る彼を以前から知っていたようで、それからは公園で顔を合わせた時には一緒に昼食を取るようになります
地下鉄の彼女がすごく魅力的に描写されていて興味をそそられます
彼女と出会ってからも何が大きな出来事が起こるのでもなく青年の変わらない日常が淡々と描かれます
が、それで淡々と読み終わってはいけません
青年が感じる“表と裏”“内と外”で変わる見方や考え方について、いくつかの例えがさりげなく物語の一部として描かれます
奥が深く、尚且つ心地よい作品でした


「flowers」
こちらはガラリと雰囲気が変わり、妻の提案で九州から東京に出てきた男性が飲料水の配送の仕事に汗水流しながら暮らす、かなり汗臭さが感じられる作品です
上京当時、若い二人の唯一の楽しみは月に一回、都心の高級ホテルに泊まることでした
しかし、その楽しみも徐々にマンネリ化していきます
かといって止めるわけではないのです
お互いに「止めよう」と言うとそこで夫婦生活も終わる、そんな予感があるのではないかと思いました
2人は東京での生活に疲れて故郷に戻るのではと想像しましたが、夫婦の物語はサイドストーリーでその後は不明、メインとなるのは男性の職場の陰湿な人間関係でした
大人になるにしたがって経験せざるを得ない社会生活の中での矛盾や欺瞞
そんな中でプライドや自尊心を失わずに生きていく術を身に着けて生きていかなければなりません
重苦しい内容ですが、これも吉田さんの軽い筆致でサラリと読ませてくれます
芥川賞受賞作の「パーク・ライフ」よりこちらの方が人間の本質に迫っており好みでした


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4 コメント

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Unknown (latifa)
2021-01-11 10:47:00
こにさん、こんにちは!
私もこれ、以前読んだ事があります。
でも、もう記憶があやふやになってしまってます・・
自分の感想見たら、2012年に読んでおり、でも小説は2002年の作品で、そして現在は2021年と、ほぼ10年区切り?なんだなあ・・・と、内容とは無関係な処に感慨深さを・・・。

ところで、先日1/2に放映されていた、ライジング若冲っていうNHKのドラマはご覧になられていましたか? こにさんも若冲お好きだから・・
結構面白かったのですよ。
もし見逃していたら、14日にも再放送というか、特別編があるようですよ
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latifaさん (こに)
2021-01-11 12:38:14
芥川賞受賞作なので読んでみました。
読みやすいのでスルーしてしまいそうなんだけど注意してね、って印象かな。『芥川賞』という冠が無かったらそのうち忘れちゃうかも…
2002年と今、日比谷公園はどう変わったのか、が気になります(笑)

「ライジング若冲」録画してあるけどまだ観れてないの。特別編も予約してあります!
年末から映画やドラマ、ユーミンetcいっぱい録画してまだ辿り着けてません。一昨日ようやく安田顕さん主演の「うつ病九段」を観たところです。
(#^^#)
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Unknown (latifa)
2021-01-11 13:09:52
こにさん、私も年末年始に録画したやつを、少しづつ消化してるところです!
若冲の、録画してあったんですね。特別編も。
14って書いたけど16だったので、大変!って思ったら、予約済みだったのね。

>安田顕さん主演の「うつ病九段」
私も見ました!

見終わった後に、実際の出演者の方々は、どんな人なんだろう?って、思わず検索してしまいましたよ。
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latifaさん (こに)
2021-01-11 13:58:55
私も後になって「うつ病九段」が実話に基づくと知り調べました。疑惑事件の陰でうつ病になってしまった棋士がいたとは…一年で復帰されたのは奇跡ですよね。ご家族や兄弟弟子もどれほど辛かったかと思うと本当に回復されて良かったと思います。
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