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井上靖「孔子」

2011年05月08日 | あ行の作家

 

新潮文庫
1995年12月 発行
2010年1月 26刷改版
解説・曾根博義
501頁


孔子の生涯を書いた伝記小説ではありません
孔子没後33年の夏、架空の弟子、篶薑(えんきょう)が孔子研究会の人々と共に、孔子の中原を放浪する旅に従った自分の記憶を頼りに、孔子とその高弟たちの遺した言葉や行動について意見を交わし吟味、解釈することによって彼と彼らの人間像を浮かび上がらせた作品です

春秋末期の乱世
小国が興きては滅びる
時代に翻弄され、生れた国を、故郷を失った人々を大きな心で包む孔子


孔子と弟子たちの言動のひとつひとつが心に沁みます

篶薑が孔子の一行に加わるきっかけとなった疾風、迅雷、豪雨
作品の最後も、この大自然の営みで締めくくられます
孔子は、災害をもたらす大自然の営みを前に次のように語ります
天の怒りに、人間は心を虚しうして、それに対さなければならない
そういうわけで、自分は居住まいを正し、心を素直にし、ひたすら天の怒りの声に耳を傾け、その鎮まるのを待っている

生国が滅び、故郷を失くしている篶薑がやっと落ち着いた終の棲家で思うこと
いかに世が乱れに乱れようと、人間から故郷というものだけは、奪り上げてはならない
若し奪り上げてしまったら、当然、替りのものを返さなければならぬ
それが政治というものである


東日本大震災を思わずにはいられませんでした


論語が現在のかたちを整えるのは孔子の死後300年以上が経ってからのことだそうです
この作品は、論語の研究、編集作業がどのように始められたか、その様子を書いたものでもあります

 


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