わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

白熱灯=青野由利

2008-03-17 | Weblog

 夜、窓から蛍光灯の光が漏れていたら、それは日本人か中国人の家だ。一昔前、米国でそんな言葉を聞いたことがある。

 欧米人が蛍光灯を使うのは主にオフィス。家では温かみのある白熱灯の光や間接照明を好む。その方が「文化的」というニュアンスがあったように思う。

 日本電球工業会の調査によると日本の蛍光灯の割合は照明全体の6割強。2割の欧州に比べ確かに多い。それで文化度を測られても困るが、白熱灯や間接照明の良さはもちろんある。だから家では白熱電球もけっこう使ってきた。

 しかし、そんな好みは言っていられなくなりそうだ。白熱灯は蛍光灯に比べ電力消費量が大きい。温暖化防止にとってはやっかいものだ。欧州では、英国に加え、フランスも白熱灯廃止の方向性を打ち出している。米国からも同様の声が上がっている。

 温暖化対策とは、省エネや自然エネルギー開発を求めるだけではない。ライフスタイルはもちろん、文化の転換まで迫るのだと思い知らされる。欧州の夜の景観が変わっていくのかと思うと、化石燃料を急速に消費してきたしっぺ返しを感じる。

 白熱電球の実用化はいうまでもなくエジソンの業績だ。そこには日本も深く関係していた。長寿命のフィラメントを世界中で探していたエジソンが行き着いたのが、京都の竹だったからだ。

 蛍光灯より消費電力の少ない発光ダイオードの開発でも日本の貢献は大きい。その技術力で照明文化も保つことはできないか。蛍光灯のまぶしいオフィスでふと考える。(論説室)




毎日新聞 2008年3月8日 東京朝刊


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