4月、政府が製粉会社に売り渡す小麦価格が30%引き上げられる。大衆的な食を扱う店には頭が痛い。
大阪市内で約50年続くタコ焼き店は「去年、タコの値上がり分で値段変えたばかりやからね」と浮かない表情だ。マヨネーズや油、ガス、また小麦粉。相次ぐ値上げで、10個340円では利益が出ない。かつての勤務地・宇都宮市で、一番うまいと評判のギョーザ店は来月から、6個170円が210円になる。11年ぶりの値上げという。
ただ、30%アップでも小麦の国際価格の上昇には追いつかない。国際相場はこの1年でほぼ倍になった。そして、最も深刻な打撃を受けているのは、飽食の先進国ではなく、途上国である。
来年度に78カ国・7300万人への食料支援を予定する国連の世界食糧計画(WFP)は、穀物と輸送費の上昇で5億ドル(約500億円)の資金が足りない。このままだと、援助の量か人数を減らさざるを得なくなる。ジョゼット・シーラン事務局長は英経済紙に窮状を訴え、「途上国では1日3食を1食にする動きがある」「インドネシア、イエメン、メキシコなど、かつて問題がなかった国までも差し迫った状況だ」と語った。
小麦が上がれば、私たちは、満腹感に浸れなかったり、財布が軽くなったりするだろう。ところが、途上国では同じ理由で、飢餓や命の危険に直面し、テロや紛争の火種が生まれる。落差をどう埋めればいいのか、食べ物は本当に足りないのか。身近な値上げにため息をつくだけでなく、遠くの飢えに思いをはせる機会にしたい。(経済部)
毎日新聞 2008年3月28日 東京朝刊
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