「国民生活が苦しい時に国会議員も身を削る努力を」と自民党が次の衆院選マニフェストに議員歳費や定数の削減などを盛り込む検討を始めたそうだ。麻生太郎首相が指示したという。
一見、「その通りだ」と言いたくなる話だ。しかし、歳費削減はいいとしても、定数減らしは相当くせものである。なぜか。それは選挙制度の変更とセットになっているからだ。
衆院で考えてみる。小選挙区の300人を減らすためには合区などが必要。苦労して当選した人があぶれるようなマネをするだろうか。比例代表180人を減らすのは手っ取り早いが、小選挙区での当選が容易でない同じ与党の公明党は猛反対するに違いない。
となると選挙制度を変えるしかない。実は自民、公明両党の利害が一致して狙っているのは中選挙区制の復活だと思う。それには「ちょっと待て」だ。
自民党の派閥ごとに候補者も資金も集めて争うのではなく、政党・政策本位の選挙にし、政権交代可能な仕組みにする。そう言って小選挙区制は導入されたはずだ。ところが、いざ小選挙区で負けそうで政権交代が現実味を帯びてくると、再びもとに戻そうというのだ。これを世間ではご都合主義という。
「小選挙区制になって政治家は選挙ばかり気にして小粒になった」と言うベテラン議員は多い。でも、そう語る人たちは、よほどのことがない限り自分は安泰だった中選挙区時代が懐かしいのだ。つまり、自分は落選せず、しかも、政権交代などせずに、永遠に与党でいたいということである。
まゆにつばを付けて今後の議論を見ていこう。(論説室)
毎日新聞 2009年1月29日 東京朝刊
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