わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

アブダビ流=福本容子

2009-01-31 | Weblog




 ホーサニー君は5歳。現在、ひらがなの読み書きに挑戦中だ。この日はサ行をおぼえた。横書きで「しお」「すいか」「あさがお」。傘の絵の隣に書いたのは「さか」? 母国語が右から左に書くアラビア語だから、たまには間違う。ご愛嬌(あいきょう)。

 アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで日本人学校の幼稚園を訪ねた。園児26人中、ホーサニー君を含む4人がアブダビの子供だ。「1年前は座らせるだけで大変でしたが、最近は教えていない日本語も知っていたりで、驚きます」。森本裕子先生がうれしそうだ。

 優秀な人材を育てるには国際教育が大事。そう言ってムハンマド皇太子が発案したそうだ。フランス、中国、ドイツのアブダビ校にも、同じくUAEの子供の受け入れを頼んだという。

 何でも自前、ではなくて、海外の優れたものを片っ端から取り入れながら、レベルアップを目指すのが今のアブダビ流か。経済企画庁で国家の長期戦略を練る高官はシンガポール出身。昨年、発刊した英字高級紙の編集長は、英デーリー・テレグラフ紙の元編集長。伝統文化のタカ狩りを支える鳥類の治療研究機関もドイツ出身の専門家が所長を務める、といった具合である。

 英語は当たり前。国立大や多くの高校は、一般科目も英語による授業だ。最近は国立の幼稚園でも英語を教え始めた。するとアラビア語がおろそかになる心配が出てきて、国語教育も頑張らないといけなくなった。

 外国語、国際化って熱を入れると、国語力が衰えたり、国民らしさを失ったりする。そんな意見を日本でもよく聞く。だけどそれは、熱を入れすぎた国が心配すればいい話。(経済部)





毎日新聞 2009年1月30日 東京朝刊


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