わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

こころの元気+=磯崎由美

2009-01-31 | Weblog



 心が健康な人もそうでない人も、日々暮らす中での悩みに違いはない。今日も友達や恋人と、ささいなボタンの掛け違い。職場も家族も私をどれだけ必要としているんだろう。そもそも生きる意味って、何?--。

 精神保健福祉の現場で「リカバリー」という言葉が注目されていると聞く。患者を弱者に追いやっている社会を変えようといった運動とは異なり、患者本人が人生の主導権を握り、自分らしく生きていく意味という。

 この精神から生まれたのが日本で唯一の患者向け雑誌「こころの元気+(プラス)」だ。NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ(電話047・320・3870)が発行する定期購読の月刊誌。病との付き合い方や人間関係など、300人の読者ライターが投稿し、悩み相談にも体験をもとに答える。表紙はプロの写真家が撮る読者の笑顔で、引きこもりの若者などモデル希望者が後を絶たない。

 編集責任者の丹羽大輔さん(45)はかつて公務員から全国精神障害者家族会連合会(全家連)に飛び込み、家族向け機関誌を編集してきた。そこで思いもかけぬ出来事が待っていた。自らもうつ病を経験したうえ、全家連は補助金目的外流用が問題化し、07年4月に解散した。

 失意の中でコンボ設立に加わった。患者の目線で物事を見ることを心がけ、紙面を作る。「面白い現象があるんです」。事務局に購読をやめる人から届いたはがきの束があった。「元気をもらいました」「卒業します」。読むうちに心が安定したという感謝の言葉が続く。

 「読者が減るって、普通は残念な事ですよね」と丹羽さんがちょっと誇らしげに笑った。(生活報道センター)




毎日新聞 2009年1月28日 東京朝刊


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