「ねじれ国会」の出現で、民主党のあり方が論議されている。政権担当能力と同時に政権政党との違いも誇示しなくてはならないからだ。
自民党が野党に転落した93年当時、与謝野馨前官房長官は、秘書として仕えたこともある中曽根康弘元首相のもとを訪れた。
「『先生、野党の仕事は何ですか』と尋ねた。その答えは、『何が何でもそのときの政権を倒す。政策も何もない。とにかく政権を倒すことが野党の仕事だ』という単刀直入なものだった」と、著書「堂々たる政治」(新潮新書)に記している。
中曽根氏にこの一件を尋ねると、「三木武吉さんからの教えだ」と説明する。54年の年末に鳩山一郎首相を誕生させ、翌年には保守合同を実現させた立役者。戦後2番目に長い吉田茂政権の末期には、徹頭徹尾抵抗し、政略を仕掛けた。
与謝野氏は「今の民主党は、ある意味で(三木氏の)この言葉通り、野党の仕事をしていると言える」と、著書の中で感想を述べている。
だが、中曽根氏の認識は異なる。歴史家、徳富蘇峰氏から聞いた三木氏の月旦(げったん)評「あれは(大衆的人気のあった情の政治家)大野伴睦が弁護士になったような男だ。だけど勝負師であって、人間は善だ」を引用しながら、民主党・小沢一郎代表との違いを説く。
「弁護士と形容されたように三木さんには法理論を踏まえ、他を説得する力があった」と語る。さらに、「吉田流の官僚的権威には互いに反発するが、小沢君にはそれを表に出すほどの力がない。三木さんに比べて無駄が少なすぎるし、愛嬌(あいきょう)が足りない」と。(論説室)
毎日新聞 2008年4月26日 東京朝刊
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