この季節、ホームセンターなどで花や野菜の苗と肥料を大量に買い込んでいく人を、よく目にする。土を作り、苗を植え、添え木をする。水をやり、草を引く。毎年同じことの繰り返しだが、それでも育ち方は違う。出来不出来はあっても、成長していく変化を見るだけでも楽しい。
人を育てるのも同じか。
エアコン大手のダイキン工業(大阪市)は、沖縄振興を目的に20年前に沖縄で始まった女子プロゴルフツアー開幕戦のスポンサーとして、毎年島内の中学生を会場に招き、中高生ゴルファーを招待参加させている。宮里藍も諸見里しのぶもこの舞台を踏んで飛躍していった。
半導体・電子部品メーカーのローム(京都市)は、社長と会社が中心になって91年に財団を設立し、京都・国際音楽学生フェスティバルを開催したり奨学金を支給して、若手音楽家の支援を続ける。昨年のチャイコフスキー国際コンクールバイオリン部門優勝の神尾真由子さんも、この財団の奨学生だった。
ともに、本業とは無縁の分野だけに、若手の成長を純粋に楽しめることだろう。
それに比べ、社員の育成は楽しいばかりではない。野村証券社員のインサイダー事件などに、その難しさを痛感している企業も多いだろう。
「一樹一穫なるものは穀なり 一樹十穫なるものは木なり 一樹百穫なるものは人なり」
中国の古典「管子」にある言葉だ。一つ植えて百もの収穫を得られるのが人。さて、今春入社の新入社員たちは10年後、20年後、いったいいくつの実を成すのだろう。
毎日新聞 2008年4月26日 大阪朝刊
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