オバマ米新大統領は世界をどう変えるのか。多くの人が外交政策について論じているが、私はそのアジア観に注目する。大統領は6歳から10歳まで、インドネシアの首都ジャカルタで暮らしたことがあるからだ。
自著によると、インターナショナル・スクールに行く金がなかったので地元の学校に通い、農家や使用人の子供たちと一緒に遊んでいた。インドネシア語も不自由なかったという。
インドネシアは約300の民族から成る多民族国家で、言語も250以上ある。人口約2億3000万人の最大のイスラム国家でもある。中国系住民も約3%おり、ビジネス界での存在は大きい。
アジアの多様性を象徴する国で少年時代を過ごした経験は、大統領のアジア観に影響を与えているに違いない。
何より、世界には米国以外にも多くの国があり、全く違う文化や価値観を持った人々がいるという現実を皮膚感覚で知っていれば、米国を相対化して見るのに役立つ。「米国の味方か敵か」と有無を言わせず二者択一で迫るブッシュ前大統領流とは一線を画すだろう。
だが、だからオバマ大統領はアジア寄りと見るのは早計だ。インドネシアについても、現在は反米感情が高まっていると指摘し、「あの国は30年前より遠く感じられる」(自著「合衆国再生」)と述べている。理想主義的な側面が強調される大統領だが、現実主義の視点がそこにはある。
新たな時代を迎えた米国とどんな関係を築いていくのか、日本も含めたアジアは、これまでと違った思考と戦略を求められている。。(論説室)
毎日新聞 2009年1月24日 大阪朝刊
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