アメリカの大統領がチェンジした。ブッシュ前大統領は昨年12月、米ABCテレビの番組で在任中の8年間を振り返り、イラク戦争の前提となる大量破壊兵器が存在しなかったことを「最大の痛恨事」と反省の弁を述べた。「大義なき戦争」を認めたということだろう。
何を今さらの感が強いものの、積極的に米国のイラク攻撃を支持した日本政府にいたっては人ごとのように黙っている。あれは小泉純一郎元首相が判断したことだ、とはぐらかしてしまうのだろうか。
こうした「あいまい」な態度だと、後々に「イラク戦争を支持したのは正しかった」と言い張る人たちが出てこないともかぎらない。歴史認識のけじめは極めて大事なのだ。
さて、オバマ大統領である。「核兵器廃絶」を世界の究極的な目標に掲げたことを評価し、期待もしている。それだけに、米国の歴代大統領が譲らなかった「原爆投下正当化論」を改めてほしい。
原子爆弾は通常の破壊兵器ではなく、体内に入った放射性物質は組織細胞を傷つける。傷つけられた細胞は再生する際に、傷のあるコピーをつくっていく。あえて書くが、被爆2世3世4世……と幾世代にもわたって不安に陥れる。
原爆は使ってはならない悪魔の兵器だった--と私はあの世に行ってからでも訴える。使ってはならないのだから、当然持ってはならないはずだ。
オバマ大統領が単に大統領の顔を替えた「変化」にとどまらず、「核兵器廃絶」という「変革」を成し遂げるためには、原爆投下の正当化論をまずは見直すべきであろう。(編集局)
毎日新聞 2009年1月25日 東京朝刊
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