わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

1961年→2009年=岸俊光

2009-01-30 | Weblog




 米国のバラク・オバマ大統領が生まれた1961年はどんな年だったのだろう。

 1月20日・ケネディ大統領が就任▽4月12日・ソ連のガガーリンが人類初の宇宙飛行に成功▽8月13日・東独がベルリンの壁を構築--。ちなみに、多くの独立国が誕生した「アフリカの年」は60年のことである。

 国内に目を転じると、60年安保の余韻を残しながら、時代は経済にかじを切りつつあった。日本生まれの米国の学者大使、ライシャワー着任を1面写真で伝える61年4月19日付本紙夕刊の大きな記事に驚かされる。

 そのライシャワーに師事した米国の知日派研究者、ケント・E・カルダーさんに、先日東京都内で話を聞いた。新著「日米同盟の静かなる危機」(ウェッジ)で同盟の社会的、文化的基盤を強化する必要を説き、ライシャワーについても文化担当公使を新設した業績が強調される。

 06年に訪米した中国の胡錦濤国家主席をねぎらい、ワシントンで900人規模の壮行会が開かれた。対照的に07年の日米議員交流プログラム参加者は1人。日本の指導者はお題目のように日米重視を口にするが、この本に紹介された挿話からは空洞化を感じずにいられない。

 日本は何をすべきか、議論が不十分なまま、長年惰性に流れた結果と言えないだろうか。

 「父がケニア出身で、幼少時インドネシアで育ったオバマ氏はグローバルな視点をもつ」とカルダーさんはいう。核軍縮や地球温暖化にふれた就任演説は新時代の到来を感じさせた。

 オバマブームは言葉や非軍事の力の大切さを示す出来事だ。米国の変化に踊り一喜一憂するだけでは日本は危うい。(学芸部)





毎日新聞 2009年1月24日 東京朝刊


コメントを投稿