わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

想像力試す四川大地震=藤原規洋

2008-05-27 | Weblog

 中国・四川大地震は、発生から2週間近くたつのに、いまだに被害の全容がつかみきれていない。一方で、被災者間で著しい救援格差が顕在化してきた。今後、資力や精神的ダメージからの回復などの点で、復興に向けた大きな個人差が生じるだろう。

 つい、阪神大震災と比較してしまう。あの時も、テレビで紹介された避難所には善意の救援物資やボランティアが殺到し、そうでない所との格差が生まれた。お年寄りや障害者ら「災害弱者」対応も問題になった。それでも、四川の現状を見て、日本だったらあれほどには、と思っている向きも多いことだろう。

 しかし、過信は禁物だ。中央防災会議の想定では、大阪を南北に貫く上町断層帯でマグニチュード7・6の直下型地震が起きた場合、最大で死者4万2000人、避難者480万人など、いずれも阪神より1けた多く、四川に匹敵する。また、南海、東南海地震が連続して起きた場合、東海から九州にかけての太平洋岸を中心に4万棟が津波被害に遭うなどし、被災者数はさらに膨れ上がる。

 広域地震となると、国や自治体の力は分散して、救援物資が届かない被災地が出てくる可能性がある。それでなくても、財政再建のため住宅の耐震化や耐震診断補助を後回しにする自治体が多いのが現状だ。阪神以降に広がった広域連携も計画通りに機能するか疑問だ。

 となると、個人や家庭で地震に備える「自助」、地域で助け合う「共助」が不可欠ということになるが、さて十分か。四川の惨状は、危機への想像力を試している。(論説室)




毎日新聞 2008年5月25日 大阪朝刊

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