わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

核の掟破り=大島秀利

2008-10-16 | Weblog

 核兵器は、プルトニウムやウランなどの核物質を使って作る。自国の自由にできるウランが増えれば、それだけたくさんの核兵器を作りうる。そんな懸念を無視したと思わざるをえないのが、米国の主導で例外的にインドへの原子力関連輸出を認めた原子力供給国グループ(NSG、日本など45カ国)の先月の決定だ。

 核拡散防止条約(NPT)では当面、核兵器国を米英露仏中に限定し、原子力関連輸出は、国際原子力機関(IAEA)の査察を全面的に受け入れることを条件に許される。これが原則だ。ところが、インドはNPTに未加盟で核兵器を持つし、査察対象外の原子力施設も持つ。例外措置は明らかに掟(おきて)破りである。

 インドは輸入したウランなどについて軍事に利用しないと約束した。ところが、ここに抜け道があるとインドやパキスタンの専門家らが指摘してきた。というのは、もともとインドはウランを自己調達していて、それを核兵器用と、民生用(原発用)に振り分けなければならなかった。ところが、今回の措置で、輸入ウランを原発用に回せる。これで自己調達分のウランはすべてを核兵器用に使えるというわけだ。

 インドの原子力平和利用は、地球温暖化防止に役立つとの理屈もあるようだが、仏露などに商売としての原発輸出意欲が見え隠れするし、核爆弾がもたらす地球環境破壊こそまっさきに心配しなければならないことだろう。

 日本政府も例外措置に賛成したが、納得できない。原則が崩れ、核をめぐり不安定な世界になると懸念するからだ。(科学環境部)





毎日新聞 2008年10月12日 大阪朝刊


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