わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

身近な緑のニューディール=岸俊光

2009-02-26 | Weblog




 第1回経営者「環境力」大賞の発表会に参加した。主催は、環境文明21という東京のNPO(特定非営利活動法人)である。

 日本を再び元気にするカギは環境だ、それには企業の姿勢が大切になる、変革を担う経営者に前向きになってもらおうと、長年の活動を結実させた。

 共同代表の加藤三郎さんは「NPOが経営者を表彰するのは恐れ多い」と謙虚だが、その信念には年季が入っている。

 厚生官僚だった加藤さんは、当時の環境庁に転じ公害や環境畑を歩いて、初代地球環境部長を務めた。公害対策を口にするだけで、他の省庁から「産業をつぶすつもりか」と非難された時代である。それでも、企業家がこの問題に関心を持てば社会は良くなるはずだという思いは、揺るがなかったという。

 役所をやめ環境文明21を設立したのが93年。高級官僚の転身としては異色に違いない。

 そんな加藤さんが、もう一人の共同代表の藤村コノヱさんらと作り、本紙に寄稿してくれた経営者評価項目は練り上げたものだ。<100年先を見通した企業価値><事業を大きくしすぎない勇気>の見識に驚く。

 「環境はビジネスになる」と日ごろ周囲に話しているという大阪の東亜電機工業社代表取締役、麻生義継さん。家業の電気工事会社を、エネルギー多消費型から自然エネルギーの普及に転換してきた。こうした受賞者7人の言動からは、排ガス対策が逆に自動車産業を育てたような環境の力を実感する。

 「恐慌を乗り越えるのも結局は人なんです」。加藤さんの話を聞いて、かけ声先行の「グリーン・ニューディール」がようやく身近になってきた。(学芸部)




毎日新聞 2009年2月21日 東京朝刊


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