インドネシア人の介護福祉士と看護師の候補者第1陣の約200人が半年間の研修を終え、全国の福祉施設や病院で働き始めた。今春には、フィリピン人の候補者もやってくる。
これらは日本と両国の経済連携協定(EPA)に基づく措置で、それぞれ2年間で最大1000人の制限がある。政府は特例と位置付けており、これで一気に外国人労働者の受け入れが進むわけではない。
だが、少子高齢化が加速する日本で、将来的には介護・看護分野の労働者不足は避けられない。ならば、今回のインドネシア人来日を、異民族・文化との共生について考えるきっかけにしてはどうだろう。
アジアの人々なら、生活習慣は比較的近いのでは、と思われがちだが、現実には国や民族によって大きく異なる。
例えば、日本でホームステイしたシンガポールの男女中学生二十数人のほとんどが、食事の際、まだ半分も食べないうちにホスト家族は全員食べ終わり、バツが悪い思いをしたという(小竹裕一著「アジア人との正しい付き合い方」)。
日本の家庭では普通の「さっさと食べる」習慣が、南国の少年少女には驚きだったわけだ。逆に、ホスト家族は、シンガポールの子供たちはなぜこんなにゆっくり食事をするのかと不思議に思ったかもしれない。
こうした場合に大切なのは、相手を一方的に非難したり、拒否したりするのではなく、互いの違いを理解し、尊重し合うことだ。日本人が真の意味で外国人労働者と共生できるかどうかは、まずは一人一人が寛容の精神を持てるかどうかにかかっている。(論説室)
毎日新聞 2009年2月21日 大阪朝刊
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