わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

名ばかり部長、親方……=大島秀利

2009-03-03 | Weblog




 ~近ごろ都にはやる物

 夜勤無料の名ばかり部長

 そら店長に にせ請負~

 医療の世界では「名ばかり部長」がはやりのようだ。北九州市小倉北区の市立医療センターの医師111人のうち「部長」が75人いたという。管理職手当はあったが、実際は権限も残業代支給もない「名ばかり管理職」だったとして、北九州東労働基準監督署が労働基準法に基づく是正勧告をした。別の医療機関でも同様の例があると聞く。

 サービス業では「名ばかり店長」。製造業は偽装請負が横行した。企業側が一切の責任を負わず、部下のように派遣労働者を使うのに、「請負」が装われる。

 「名ばかり」は建設業界で古くからあるという。日雇いの労働者も「一人親方」という名前を冠すれば、立派な「個人事業主」に変身し、直接雇用ではなく、請負とみなせるものだ。そんな「名ばかり請負」が建設現場を担う場合がある。一人親方でも裁量や自己決定権を持ち、正当な報酬があればよいが、労災などの責任だけ持たされ、「けがと弁当は自分持ち」では困る。

 経済を引っ張る企業のためとして、コストカットが行き着く所、労働者の権利のカット、さらに雇用のカットにつながった。その方便の一つとして、一般的には報酬が高いとみられている「部長」や「事業主」が巧妙に「名ばかり」にされている。

 働くこと、生活の糧を得ることは、人間の基本的な活動の一つだろう。勤勉は大事だが、複雑なこの世の中で、働く者が持つ当然の権利について、学校でしっかり学ぶ体制が欠けているのではないか、と思う。(科学環境部)


 

毎日新聞 2009年2月28日 大阪朝刊


コメントを投稿