わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

宙返り的発想のすすめ=佐々木泰造

2008-12-31 | Weblog

 春草のはじめて挑む宙返り何かが変わるような気がした

 今年4月、長野県白馬村のゲレンデでインストラクター、鳴海裕樹(ゆうき)さんの助けを借りてバックフリップ(後方宙返り)に挑戦した。滞空時間は1~2秒。その瞬間に何をしなければならないかを考える。頭から墜落することがないよう、脳がフル回転しているのが自分でわかる。

 51歳の今年、スポーツで脳が活性化することを実感した。年をとっても身体能力を高められることを実証し、肉体は年齢とともに衰える一方だという自分の常識を覆すことができた。

 06年秋に難波宮(なにわのみや)跡(大阪市中央区)で出土した木簡に万葉仮名で書かれた「春草のはじめ……」で始まる短歌を創作する第3回「なにわの宮新作万葉歌」を1月末まで募集している。木簡は折れていて残りは見つかりそうにないから、続きを全国公募しようと、私が本紙夕刊の「憂楽帳」で提案したのに大阪市が応えて始まった試みだ。

 文化財は本来の姿で保存し活用しなければならない。失われた部分があれば、推定するのが考古学だ。そうではなく、失われた部分を自分たちで作ろうと、古代人と現代人のコラボレーション(合作)を呼びかけたところに発想の宙返りがあった。

 受賞作を書いた現代の木簡を見た栄原永遠男(さかえはらとわお)さん(大阪市立大学教授)が、断片となった古代の歌木簡も元は同様に長かったと思いつき、紫香楽宮(しがらきのみや)跡(滋賀県甲賀市)の木簡を調べ直したら万葉歌が見つかった。

 春草のはじめにつむぐ万葉歌新しきことここに始まる

 頭のリフレッシュに、「春草のはじめ」に続く「私の23文字」を詠んで応募してほしい。(学芸部)





毎日新聞 2008年12月27日 大阪朝刊

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