メガヒヨの生息日記

メガヒヨ(観劇、旅行、鳥好き)のささいな日常

ストレートプレイ『IMAGINE 9.11』

2009年09月13日 | 国内エンタメ

IMAGINE 9.11
9月13日 両国 シアターXにて
原作・脚本・演出・美術・デザイン H,T,ISSUI

9.11の事件の裏にあった実話をベースに様々な人間模様を織り込んだフィクション・ドラマ

チャーター機パイロット 加納竜
全米骨髄バンク職員ジェーン 藤田三保子
全米骨髄バンク職員デンゼル Ju,ta(ジュタ)
全米骨髄バンク職員キャシー 大林素子
全米骨髄バンク職員ピット こばやし画伯(ヤポンスキー)
連邦航空局フライト責任者 小野正利
日本骨髄バンクボランティア 刀根麻理子
日本骨髄バンク事務局長 佐藤祐一

【あらすじ】
2001年9月11日におこったアメリカ同時多発テロ。
アメリカでは飛行機が全面飛行禁止になってしまっていた。
しかし日本では、アメリカのドナーから提供される骨髄を待ちわびる3名の白血病患者がいた。
彼らは移植に備えて既に大量の放射線を浴びて、自ら血液が作れない体になっている。
移植が中止になることはすなわち、彼らの死を意味するということ。
全米骨髄バンクはチャーター機による輸送を決断する。
しかしそこには幾つものハードルが立ちふさがっているのであった。



メガヒヨはこのお芝居の案内をもらうまで、この実話のことを知らなかった。
当時のテレビはブッシュ大統領とビン・ラディン容疑者の顔しか映らなかったからね。

骨髄移植はドナーにも大変な負担が生じる。
それだけでも大変ありがたいことなのに、テロ直後で空の安全に不安が叫ばれる中、
日本まで命を賭けて骨髄液を持ってきてくれた方々がいたことに感動した。

芝居の中では、「そこまでしなくても」と消極的になる職員の姿もある。
もちろんそれは当然の考えだと思う。
もしメガヒヨがその立場なら、自分の命を最優先に考えると思うので。

スタッフの温度差は日本の骨髄バンクでも生じていた。
骨髄の輸送費は患者負担となっているのだけれど、チャーター費を使うと1,600万円もの費用が発生する。
そのような巨額の請求は難しい。
しかし骨髄バンクは財団法人であるため、特定の患者のためだけに募金を行えなかった。
この芝居では、一刻を争い決断をせまるボランティアと、前例が無いことを理由に渋る事務局との間に摩擦が起きていた。
実際、現実には速やかにチャーター機の申請が行われたとのことだけど、
日本の組織ではこういう非常事態にしがらみで揉めそうなので、このシーンはフィクションなれどリアリティがあった。
大なり小なり自分でもこの様な経験があるので、推進派にも慎重派にも共感できた。


ところで、この芝居を観て初めて知ったことがある。
それは骨髄移植には命がけの準備が必要だということ。
二週間前から放射線を浴びたり、骨髄液を抜いたり、後には引き返せない。
当初は「それじゃあ移植を延期すればいいじゃない。」と思っていた自分は浅はかだった。

それと骨髄液を移植しないと治せない白血病があるのも知らなかった。
骨髄液のドナーには大変な負担がかかる。太い注射針で背骨を何度も刺すのだ。
実際に弟さんに提供した方は、「家族のためだからこそ耐えられた」と語っていた。
ドナーにそんな危険なことをするのなら、全面的に臍帯血で済ませればいいのにと思っていた。
しかしこの公演を観た事で、臍帯血ではなく骨髄液でないと治療が不可能な白血病の存在を知り、その考えは打ち消した。

そして患者さんに対するドナーの責任も改めて感じた。
放射線を浴びて移植に備えながら、飛行機が飛ばないことを知った患者さんが
絶望しかけるシーンがあった。
衰弱しきった体で、彼女はまだ体力がある内に自分の子供を抱きしめておきたいと懇願する。
それを見て半端な気持ちでドナー登録してはいけないと強く思った。
骨髄採取の直前で怖気づいて止めてしまうという話を聞いたことがあったので。
このお芝居のケースとは違うけれど、移植中止ほど患者さんを精神的・肉体的に致命的に追いやるものは無いからね。

本日のこの作品はあまり娯楽作品には該当しないのだけど、観て得られるものは大きかった。
芝居を通じて、新聞に小さくしか載らない話を知るとか、社会問題について考えるのもいいことだと思った。


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