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新・シュミのハバ

ついに、定期小説の更新スタート!!!
いつまで、続くのやら・・・。

綿矢りさ「夢を与える」

2007-03-01 23:51:46 | 
先日、書店で綿矢りさの新刊「夢を与える」と伊坂幸太郎の新刊「フィッシュストーリー」を買ってきました。
で、さっき綿矢りさの「夢を与える」を読破しました。

この小説は、正直言って主人公に感情移入してたぶん、辛すぎました。
読み終わった後、苦しくて仕方ありませんでした。

現実の厳しさが痛いほど伝わり、正直に真面目に生きて行く主人公の生き方が切な過ぎてなりません。
繊細な感情が隅から隅まで描かれていて、気付いたら小説の世界に入り込んでいました。
綿矢りさの凄さは「インストール」とか「蹴りたい背中」を読んで分かっていたけど、今回の小説で改めて 綿矢りさの凄さを感じました。
とにかく、ここまで完成度の高い小説は久々です。

主人公の生き様、セリフ、苦しみ、悲しみ・・・そのすべてに深い哀愁を抱かされました。
ずっと、この主人公を救って欲しいという気持ちで一杯でした。
最後の主人公夕子のセリフは、読み終わって随分経った今でも忘れられません。
僕にとって衝撃的で、切な過ぎる一冊でした。

話は変わって、今日はRYTHEMの新曲「桜唄」を買ってきました。
この季節にぴったりの卒業バラードで、めちゃくちゃいい曲でした。
ってか、基本RYTHEMの曲はいい曲だけども。

あと、乙一がようやく新作を出しました。
ので、それも一緒に買ってきました。
「少年少女漂流記」という題名で、乙一が原作を担当し漫画家の古屋兎丸が漫画化したものです。
まだ読んでないので、また今度感想書きます。

それと、今日はトリック劇場版2とサルという映画の二本を観ました。
トリックは相変わらず面白い!いつも通り小ネタ満載でした。
猿岩石の有吉が懐かしかった。

あと、映画「サル」ですが、ある意味怖すぎでした。
投薬実験のバイトをテーマにした映画なのですが、撮り方がかなりリアル。
で、役者の演技も無茶苦茶リアル。
なので、後半の衝撃的なシーンは、マジでビビリました。
もう、絶対投薬実験のバイトには行けません。
サルの新作が公開中らしいですが、なんかもっと怖そうなので、たぶん観ません。

と、最近遊んでばっかりです。
明日も、遊びにいくつもりです・・・。
あんまりにも勉強してないので、これから数学でもやって寝ます。
嘘です。「フィッシュストーリー」読みます。
とりあえず、今日はこんな感じで。

アデュ~~

君に贈る愛の歌

2006-12-16 01:01:21 | 
補習科が終わって、一週間が経ちました。
いよいよ勉強に身を入れなければならない時期にさしかかってきました。

そんなことはともかく、最近毎日紹介しているショートショートの話ですが、今日紹介するのは、中でも思い出深い作品です。

というのも、題名は三年前ぐらいに決まっていて、「君に贈る愛の歌」というタイトルで、三年前に書いていたものなんですが、小説をまともに一冊も書いたことのない僕にとって、小説を書くということはかなり困難なことで、すぐに諦めてしまったのです。

なぜ、三年前に急に小説を書こうと思ったかというと、「人は誰でも一生に一つはいい話が書けるものだ」ということを誰かから聞いたからです。
それを信じて書き始めたのですが、全くまとまらず、断念しました。

そんな作品「君に贈る愛の歌」を、今回ショートショート風に書き直して、完成させました。
昔、書いていたものの続きなので、作風はずいぶん今と違います。
でも、ほとんど今書いたものなので、昔書いていたトコといえば、猫のミーコが出てくるとこだけです。
昔は、猫と人間の心温まるストーリー、というテーマで書いていたのですが、結局、今回完成させてみて、猫はあんまり関係なくなってしまいました。

この作品も、個人的に雰囲気を凄く気に入ってます。
まぁ、ショートショートとして成り立っているかは謎ですが。
文章が下手なのは、理系なので勘弁してください。

こちら⇒⇒第十二作:君に贈る愛の歌

ま、思い出深いといっても、結局は一時間ぐらいで書いたものなので、細かいところはかなり変です。
ぜひ、読んで下さい。

あ、それと、宮崎あおい主演映画「ただ、君を愛してる」のDVDが3月に発売されるみたいです。
もとろん、即予約しました。
ああ、2月に映画「ゆれる」&「紀子の食卓」が出て・・・
こりゃ、お金が足りないわ、ピンチ。
ちなみに3月には映画「UDON」のDVDも出ます。
3枚組らしい。

ちなみに、写真は、N森君が作った「完全光遮断ダンボール」です。
夜中に教室に残るときに、窓にぴったりはまる便利なダンボールです。
N森君が一人で、一生懸命作っていました。
さすが、学校に残るためなら必死です。

で、今日は今から「中島みゆきのオールナイトニッポン」聞きます。
19年ぶりらしいですね。

東野圭吾「使命と魂のリミット」について語ってみる。

2006-12-07 22:49:23 | 
東野圭吾「使命と魂のリミット」

【ストーリー】
心臓外科医を目指す夕紀は、誰にも言えないある目的を胸に秘めていた。
その目的を果たすべき日に、手術室を前代未聞の危機が襲う。
あの日、手術室で何があったのか?
今日、何が起きるのか? 心の限界に挑む医学サスペンス。

待望の新作は、緊迫した雰囲気の中で繰り広げられる、サスペンステイストの感動ストーリー。
いやぁ、今回も泣かせていただきました。

今回の作品は、非常に読みやすい。
その上、登場人物の心情が分かりやすく、感情移入しやすい。
東野圭吾らしい、超理系の文章が苦手な人でも、すらすら読めます。
でも、やはり医学系の描写は物凄く詳しいです・・・さすが。

この話、何がいいかといういうと、やっぱり東野圭吾らしい感動のラスト。
それに辿り着くまでのハラハラする展開。
所々に張り巡らされた、様々な伏線。
心に秘めた登場人物の深い想いが交錯して、切なく感動的な結末に行き着きます。

今回は、登場人物みんな、凄く純粋で誠実な人ばっかで、サスペンスなのにすごく親しみやすかったです。
個人的に、氷室夕紀と七尾行成の打ち解けた感じの会話が、好きでした。
あと、脇役ですが、望という女の子が、可哀想なんだけど、ラストの方での携帯で恋人にかける言葉が切なくて感動的でした。

このストーリーの一番のポイントは題名にもなっている”使命”についてです。
「人間は生まれながらにして使命を与えられている。・・中略・・使命を放棄するというのは、今まで生きてきた意味も失うことだ。」という言葉にも含まれているように、それぞれに与えられた”使命”が、重要な意味を持ちます。

夕紀が果たすべき目的とは・・・?
大切な日に起きた、衝撃の事件とは・・・?
その事件に隠された、悲しい過去とは・・・?

すべてがつながり、そのすべてが意味を持ったとき、その感動は生まれる。
人の心の奥に眠る、切ない想いと、大切な人を愛する気持ちが重なり合うラスト。
心から感動できる作品それが、「使命と魂のリミット」である。

ぜひ、その緊迫のリミットを感じてみてください。
そして、涙なしでは読めない”真実のラスト”をぜひ、味わってみてください。

東野圭吾の魅力が詰まった素敵な一冊です。

★この夏おススメの小説10冊☆

2006-07-30 15:17:49 | 
非常に危機的な状況である。
世間では、日本が沈没するやら、美大生の恋物語が展開されるやらしているらしいが、個人的にはそれどころじゃない。

ま、それは置いておいて、夏は上質な小説を厳選して読める良い機会である。
今回は、私的におもしろかった小説をピックアップして紹介していきたい。

この夏、おススメの小説&漫画

1、東野圭吾「赤い指」
→7月25日に発売された、東野圭吾の直木賞受賞後第一作目の作品。
犯罪の先にある本当の闇と、孤独な家族愛を描いた書下ろし長編である。
最近の東野作品の中では短めの作品で、全部読むのにそんなに時間がかからない。
一応シリーズもの「加賀恭一郎シリーズ」ではあるが、加賀作品を一冊を読んでいない人でも楽しめる。
家族愛がテーマの作品と言っても、全体を取り巻く雰囲気は大変ドロドロしていて、大人の中に潜む闇の部分をリアルに表現した展開も多々ある。
だが、完全に隠された衝撃の「真実」と、本物の家族愛に出会う後半の展開は、後味も悪くなく、心から感動できるものである。
また、刑事「加賀恭一郎」の新たな一面も見ることが出来る。
彼の推理は、ただ事件を解決するだけではなく、家族の複雑な心情をすべて読み取って、優しくその部分に触れるようなすばらしいものである。
この作品は、そんな加賀刑事の魅力がたっぷり詰まった一冊である。

もう一言→「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身によって明かされなければならない。」
東野作品が持っている最大の武器は、思いもよらない展開と、ラスト一行の感動であろう。「容疑者Xの献身」にしても「手紙」にしても、後半の感動的な展開は、何度読んでも美しい。「赤い指」も例外ではない。次々と埋まっていくピースから零れ落ちる、悲しくて温かい家族の愛情は、どこか切なくもあり恐ろしくもある。どこまでも繋がっているハズの親子の愛と、大人たちが自らを犠牲にする家族への愛は、どこまでも深い。構想6年の小説の奇跡を、味わってもらいたい。

2、伊坂幸太郎「重力ピエロ」
→圧倒的に高度な実力によって、小説界のエースに立った伊坂幸太郎。彼の代表作「重力ピエロ」がついに文庫化となった。伊坂作品は「陽気なギャングが地球を回す」にしても「オーデュポンの祈り」にしても、哲学的で知的な語り口が、読み手をを飽きさせず、ワクワクさせる非常に爽快な技術を兼ね備えている。その上に感動的なラストが付け加わったらもう、怖いものなしである。伊坂幸太郎、強すぎ!もう、どこにも文句のつけようがない。平成の天才、伊坂幸太郎の名作をぜひ。

もう一言→小説の内容をぜんぜん書いてなかったので、ストーリーを⇒兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは―。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。・・・というのが文庫の裏に書いてあるあらすじ。つまりそういうこと。ってか伊坂作品は読んでみないとそのよさは分からない。内容も分からない。至るところで泣かされる、これこそ小説の奇跡なのではないか。

3、恩田陸「蛇行する川のほとり」
→無駄な部分がすべて削り落とされた本物の傑作とは、こういう小説のことを言うのだろう。この作品で無駄なセリフ、無駄な展開は一文字もない。一文字も、だ。幻想的な雰囲気作り、ミステリチックなセリフ回し、衝撃の階段を滑り落ちていくようなアッと驚く展開、切なくて悲しい真実の物語。すべてにおいて満点を差し上げたい。単なる芸術的な作品で終わらすことはできないが、この作品は本当に綺麗で芸術的という言葉が似合う作品だ。だが、それはこの作品を取り囲むカバーのようなものだ。中身は友情や愛情が入り混じった青くて美しい色と、不思議で恐くて悲しいノスタルジックな色と、懐かしくて澄み切った半透明な色など、様々なカラーに染まった神秘的なものになっている。この夏、静かな部屋でゆっくり読みたい一冊である。

もう一言→言ってみれば罠だらけ。もう一回読めばきっと、また隠されたトリックに気付くだろう。前半だけなら普通の学園ものかな、と思ってしまうが、中盤から後半にかけてやられてしまった。まさかここまでいろんな要素の混じった作品とは思わなかった。演劇祭に向けて、「合宿」を始めた少女たちが行き着く、隠された真実とは・・・。感動的な余韻に浸れる、宝玉の一冊。

4、LOVE OR LIKE「石田衣良、中田永一、中村航、本多孝好、真伏修三、山本幸久」
→前作「I LOVE YOU」に続く恋愛アンソロジー作品。人気作家が描き出す感動に満ちた恋愛作品。オムニバス小説ということで、おもしろさにも並があるが、さすが人気作家の寄せ集め。微妙に揺れ動く恋愛感情を美しい描写で描き出したものばかり。リアルで危ない恋愛を描いた石田衣良の「リアルラブ?」、気付かない恋に苦しみ、そして悲しい事故に隠された真実を探す、中田永一の「なみうちぎわ」、ユーモア溢れる恋愛を描く中村航の「ハミングライフ」・・・など、たくさんの感動が詰まった良質な一冊である。

もう一言→前作に比べてあっさりした印象が漂うが、中田永一の「なみうちぎわ」は名作。また新人の真伏修三の「わかれ道」も分かりやすくてよかった。かなり好みに左右される作品ではあるが、きっとお気に入りの作品が見つかる一冊だと思う。

5、宮部みゆき「火車」
→休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。ミステリー作品では群を抜いておもしろい作品だ。ハラハラする展開、真実が見え隠れする緻密なストーリー、様々な角度から真相を抉り出す圧倒的に凄い一冊だ。宮部みゆきといえば「ブレイブストーリー」や「模倣犯」などドエライ名作を世に残しているが、「火車」はそんな名作たちに負けない名作だと思う。

もう一言→カード破産の恐さを描きながらも、人間の本質的な危なさと強さも同時にその中に反映させている。凄い。ラストのあのカットは、映像で見てみたい。といっても、昔映像化されているらしい。ぜひ、リメイクを作ってもらいたい。犬童監督とか、青山監督とか、映画化すればいいのに。

6、爆笑問題「偽装狂時代」
→待ってました爆問の「日本原論シリーズ」最新作!日本原論ファンの僕としては、やっぱり今回もやってくれた、っていうのが第一印象。絶対笑いにできないだろっ!と思う凶悪犯罪から目を覆いたくなるきつ~い犯罪まで、すべてのニュースを笑いに変えてしまう爆笑問題、太田。天才太田が放つ新作は、イラク自衛隊派遣、牛丼の販売休止、年金未納問題、ライブドア、耐震強度偽装と、ホットなネタがてんこ盛り。何度も笑えて、何度も楽しめる、これこそ真の笑いだ。暗い事件が多発する社会だからこそ、笑いが必要である。日本原論で暗いニュースも笑いに変えて、世の中を明るくしていきたい。

もう一言→日本原論も連載が始まってもう13年、13年間もすべての事件を笑いに変えてきた太田は本当に偉大だと思う。ちなみに、日本原論の中のボケもツッコミも両方とも太田が執筆している。太田の笑いのセンスがここまで幅広いもので、柔軟性のあるものだと知ったのは、「日本原論」の一作目を手にした時だが、未だにそのセンスは衰えていない。これからも、あらゆるニュースを笑いに変えていって欲しい。

7、小林賢太郎「鼻兎」
→ラーメンズの小林賢太郎が描き出すシュールでキュートな漫画「鼻兎」。癖のあるキャラクターと、不思議でおかしいストーリーがストレートに笑いを誘う。といっても、時々分からない。もしかしたら、全然分からない、って人もいるかも知れない。シュールな世界ははまってしまったら抜け出せないが、はまらない人はとことんはまらないから注意。ちなみにこの鼻兎、4巻で完結らしい。ラーメンズの頭脳「小林賢太郎」の世界がそのまま投影されたかのような夢の世界「鼻兎」にどうか一度触れてもらいたい。

もう一言→難点は、かなり薄くて小さいのに値段が1000円とかなり高いことだ。だがその値段を超越するおもしろさがこの漫画には潜んでいる。潜んでいるので、見つからない人もいるかも知れないが・・・まぁ、吉田戦車とか、そっち系の笑いが好きな人は迷わず買うべきだ。特にラーメンズの舞台が好きな人は進んで買うべき。僕にとっては「鼻兎」を知らない人生なんてありえない。ある意味、一番おススメしたい一冊なのだが。

8、乙一「銃とチョコレート」
→高い、その上ひらがなだらけで読みにくい。しかし、さすが乙一。内容はそんなハードルを余裕を持って超越している。今作は、ミステリーランドシリーズということで、子供向けの仕様となっている。しかし、内容は大人が読んでも十分楽しめるものだ。さすがに題名の「銃とチョコレート」の意味は劇中でうまく使われているし、相変わらずテンポのいいストーリー展開も抜群におもしろい。そしてアッと驚くどんでん返しもある。他の乙一作品と並べても劣ることがない。乙一には珍しく、探偵と怪盗の話。機会があれば読んで欲しいが、なかなか手に取る機会がないかも。

もう一言→また内容を言っていなかった。内容はコチラ⇒少年リンツの住む国で富豪の家から金貨や宝石が盗まれる事件が多発。現場に残されているカードに書かれていた【GODIVA】の文字は泥棒の名前として国民に定着した。その怪盗ゴディバに挑戦する探偵ロイズは子どもたちのヒーローだ。ある日リンツは、父の形見の聖書の中から古びた手書きの地図を見つける。その後、新聞記者見習いマルコリーニから、「【GODIVA】カードの裏には風車小屋の絵がえがかれている。」という極秘情報を教えてもらったリンツは、自分が持っている地図が怪盗ゴディバ事件の鍵をにぎるものだと確信する。地図の裏にも風車小屋が描かれていたのだ。リンツは「怪盗の情報に懸賞金!」を出すという探偵ロイズに知らせるべく手紙を出したが……。 軽い謎解き感覚で読んでも楽しめる。冒険心溢れる一冊。

9、綿矢りさ「インストール」
→新鮮な才能溢れる、近代青春ストーリー。「蹴りたい背中」で最年少で芥川賞を
受賞した実力が、ストレートに感じ取れる作品。読めば分かるが、さすが芥川賞作家と思わせる文体とストーリー展開である。素人っぽさは全くないなので安心して読むことができる。コンピューターを通じて不登校高校生と、12才の小学生の成長を描く作品。高校生の微妙な感情表現がうまく、リアルな現代の女子高生を描き出している。そこに流れる日常の風景が妙にマッチしていて、孤独と希望の新鮮な世界観が印象に強く残る。

もう一言→この小説は、上戸彩&神木隆之介で映画化された。だがやはり綿矢りさの表現の世界には近づけず、しかしシーンごとに流れる雰囲気や、ストーリーはそのままだったのでよかったと思う。しかし、映画を見ただけでは本当の良さは分からない。やはり、小説を読んでみて欲しい。

10、恩田陸「夜のピクニック」
→今年実写映画化される「夜のピクニック」は、2005年に本屋大賞を受賞した、青春小説である。夜を徹して八十キロを歩き通すという、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」にて、三年間胸に秘めてきたある秘密を打ち明けたい思いでいる貴子。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る―。 そしてある「奇跡」に向かって物語はクライマックスを迎える。永遠に語り継がれる名作とは、このような小説のことである。読んできて飽きない展開と、感動の数々。こんな素敵なストーリーに出会えた事を、本当に嬉しく思う。

もう一言→売りの現場からベストセラーを作ろうと、全国の書店員が自分達が最もお客様にお勧めしたい本を投票でえらぶ「本屋大賞」。今までに大賞作は三作存在している。その中の一冊が「夜のピクニック」であるが、今年の受賞作であるリリーフランキーの「東京タワー」も第一回受賞作である小川洋子の「博士の愛した数式」もかなりおもしろい。本屋大賞がどれだけすばらしい賞なのかが実感できる。受賞に選ばれなかったものでもノミネート作品も名作揃いなので、ぜひ読んでもらいたい。



【和書】伊坂幸太郎「終末のフール」について

2006-05-21 19:03:29 | 
今回紹介するのは、伊坂幸太郎の単行本「終末のフール」についてである。

小説と言うものは便利なもので、実写では表現できない永遠と一瞬という形のないモノを意図も簡単に表現してしまう。
ただし、永遠と一瞬を形にするにはかなりの技術が必要である。
 
世界が終わってしまうという絶望をベースにした、人間の心理の深い部分を見事に表現したのが、この作品である。

そんな絶望の至る所に永遠と言える瞬間と、一瞬だけど大切な瞬間が散りばめられている。

切羽詰ったテーマであるにも関わらず、息苦しさは全く感じられない。

この小説に出てくる登場人物は、誰もが柔軟な考えを持っていて、限られた時間の中で生きる人間の姿が何故か生き生きとしている。

当然ながら随所に混乱した世界の描写も多く出てくるが、それ以上に、決められた時間の中に生きているからこそ覗かせる優しさや、強さや、美しさが妙に安らかに感じてしまうのだ。

伊坂幸太郎作品は凄い。

抜群の発想力と、コミカルな一面も持っているセンスのいい登場人物。

そして、ストーリーのテンポの良さには、毎回感激してしまう。

今回も、いつも通りテンポのいい話の連続であった。

涙を流すようなディープな感動ストーリーではなかったが、どこか爽快でそれでもって人間の特徴をこれまでか、というくらいしっかりと表現した作品であった。

重いテーマだけど、読み終わった後には何処かホッとしてしまう、そんな一冊だ。

話は短編小説8編から成り、すべてが「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」という設定のもとの話である。
命を諦めない強い意志を持った主人公が、いろいろなシチュエーションで残りの人生を生き抜いていくストーリーである。

伊坂ファンにはラストの結末が少し物足りないかも知れないが、まだ伊坂小説を読んだことがない人におススメしたい一冊である。

【小説】東野圭吾「白夜行」について

2006-03-07 21:53:09 | 
今回紹介するのは、今年直木賞作家となった東野圭吾の「白夜行」である。

東野圭吾は本格的ミステリー作家として数々の名作を世に送り出している。

初期の作品は「放課後」「卒業」「眠りの森」と最近の作品の作風とはだいぶ違う作品が多かった。

特に「白馬山荘殺人事件」「学生街の殺人」「11文字の殺人」などは本格的なサスペンスもので、凝った推理小説といった印象であった。

しかし「変身」「分身」「秘密」など、推理小説というよりは感動モノといった作品も彼の作品の中には多い。

彼の心理描写は凄い。

人間の奥にある感情を驚くほど忠実に描き出すその技術は、ただの”ミステリー作家”という肩書きだけでは済まされない。

人間のドロドロした部分、優しい部分、緻密に隠された部分、人間の中にある様々な部分を意図も簡単に映し出してしまう。
それが東野圭吾の小説である。そして何より読みやすいのである。

ストーリー展開の巧みさと、キャラクター設定の分かりやすさ。

局部に渡ってまで丁寧に描かれた背景描写と心理描写。

そのすべてが卓越している。

そして、その東野圭吾のすべての魅力が詰まった作品がこの「白夜行」である。

この作品は東野圭吾作品が行き着いた、一つ目の臨界点と行っていいだろう。

人間の奥に潜む暗闇の部分とその恐怖。

太陽の下で生きていけない悲しい運命を背負った二人に降り注ぐ、恐るべき事件の数々。

全体を通して流れる人間の弱みと恐ろしさに、きっと誰もが驚愕してしまうに違いない。

しかし、この作品は暗闇の部分だけを描いた作品ではない。

もがきながら必死で生きようとする健気な強さと、心から感動できる愛に包まれているのだ。

この捻くれた愛の形が見えてきたとき、そこには真の感動が待っている。

白夜行の並外れたおもしろさは、話の構成と先の読めない展開にある。

そして最後に点線が実線になったとき、読者はすべてを知ることになるのだ。

白夜の中でしか生きられない運命に引き裂かれた真実の愛に・・・

ストーリーは主人公二人の周りの人間の姿によってのみ描かれていく。

つまり、中心となる二人の心理的描写は一つもない、ということだ。

二人の周りに襲い掛かる、残酷な事件を通して二人の心情は語られずともあらわになっていく。

深い悲しみと共に平行線を辿っていく深い愛。

その二つは決して交わらない。

長い話だがスムーズに読めるところが凄い!

ところで「白夜行」は、一月からドラマ化され、話題となっている。

ここで注意して欲しいのが、絶対小説を読んでから、ドラマを見てほしいということだ。

小説を読まずにドラマを見てしまうと、小説のおもしろさが半減してしまう。

その理由はドラマの一話が、小説の大きなネタバレから始まってしまうからだ。

だからといってドラマがおもしろくないといっているのではない。
小説の世界観にはなかなか近づけてないかもしれないが、構成も台詞回しも役者の演技もなかなかうまく、高いレベルのドラマとなっている。
しかし、やはり小説と比べてしまうと劣ってしまう部分が多い。

そんなこんなで、まずは小説を読んでみて欲しい。

ミステリー界の傑作、それが「白夜行」である。

【漫画】クロサギについて

2006-03-07 18:01:14 | 
今回紹介するのは、ヤングサンデーコミックスで連載中の漫画「クロサギ」についてである。

4月からドラマ化ということもあり、次第に知名度も上がりつつあるが、まだ読んでいない人に改めて紹介したい。

”クロサギ”とは人を騙し金銭を巻き上げる詐欺師“シロサギ”のみを標的にする詐欺師のことである。

つまり、詐欺師を騙す詐欺師のこと。

この漫画のおもしろい所は、なんといっても人を騙し上げる詐欺師を逆に騙してギャフンと言わせる爽快感にある。

原案の夏原武は本職が詐欺関係の評論家なので、漫画の中に出てくる詐欺の数々は、かなり詳しく本格的である。こんな犯罪が全国の至るところで行われていると考えると、かなり怖くなるが、詐欺という犯罪に対していろいろと勉強になるのがこの漫画である。
詐欺の様々なケースを知ることによって、事前に詐欺に対して警戒心を持つことが出来るようになるだろう。

そんな社会派漫画と、いっても堅苦しい展開ばかりではない。

劇的な主人公の生い立ちと、様々な登場人物と主人公の絡まりあう関係に対する展開も見所の一つである。

ちなみに4月からのドラマでは、主人公役がNEWSの山下智久、その他、堀北真希、加藤浩次、市川由衣、山崎努などの演技派が脇を固める。野ブタのときとは一味違う役柄の山下、堀北には大いに期待したい。

また、毎回高い演技力を見せ付けている加藤浩次、市川由衣の演技にも注目。

コレは絶対読め!おススメ本紹介

2006-02-15 03:04:19 | 
今回は、おススメ本を紹介する。

名作ぞろいなので、気になる本があれば読んでみるべし。

まず始めにおススメしたいのは、東野圭吾「パラレルワールドラブストーリー」だ。

絶対号泣間違いなしの名作である。
現在と過去が交互に語られていく構成で描かれ、最後にその二つのストーリーがぴったり繋がる。
その時、現在と過去の間の空白の時間に一体何があったのか、その衝撃の真実が明らかになる。

まずストーリー構成がうまい。
最初から最後までだらだらする場面は一つもない。
どこまでもスリリングで感動的な作品なのだ。

そしてラストでは、涙を誘う感動的な展開が待ち受けている。
まず手に取ってもらいたい一冊である。

次におススメしたいのは、乙一「天帝妖狐」である。

この表題作のおもしろさは語りつくせない。
おかしな話であるクセに実に自然に話が進んでいく。段々凶暴になっていく男の、切ない感情に実にリアルに触れることが出来る。

スリル満点である上に、最後に待ち受けている感動の大きさといったらたまらない。
ミステリーファンにも、そうでない人にも、みんなに薦めたい宝玉の一冊である。

続いて紹介したいのは、佐藤多佳子「しゃべれどしゃべれど」である。

この本を読めば、必ず「ちょっといい人」になれる。
それはこの本から放たれる優しいオーラの影響なのか、温かいストーリーの影響なのかわからないが、読者に影響を与える本であることは間違いない。

落語家の話であるが、落語を全く知らない人でも楽しく読むことが出来る。

一人の新人落語家の元に落語を教わりに来たおかしな4人。
この4人がユニークでおもしろい。
感動あり、落語的なセンスのいい笑いもあり。
この本はエンターテイメントの最高峰なのだ。

続いて紹介するのは、三谷幸喜「オンリーミー~私だけを~」である。

もう恐ろしいほど三谷ワールド炸裂である。
おかしなエピソードから、おかしなギャグ・・・
本当におかしなネタ本だ。

三谷幸喜の笑いのセンスに共感できる人はもちろん、彼を嫌いな人も、一度読んでみて欲しい。
実にくだらないギャグも豊富だが、そこがまたおもしろい。
ホンッとに変な本である。

次に紹介するのは、高畑京一郎「タイム・リープ」である。

タイムトラベル系の小説は何冊もあるが、この本はその中でもよくできたタイムトラベル小説である。
物凄く青臭い表現で語られているものの、若者の気持ちを鋭く描き出せた小説であると思うし、うまいストーリーで、ラストがまたいい!

緻密に練り上げられた作品であり、読むものを退屈にさせない展開はなかなか楽しめる。
暇つぶしに読みたい一冊。

続いて紹介するのは、山田悠介「Aコース」である。

彼の作品はあまり好きではないのだが、この作品はゲーム感覚で楽しむことが出来るので、楽しむことが出来た。
あまり好きではないといっても、この著者の読み手を怖がらせる描写技術はかなりのものがあると思う。
小説では視覚的な恐怖が表現できない分、難しいと思うのだが、彼の描写はその恐怖感覚を目の前に綺麗に思い浮かべさせられる。

そこは、さすがっといったところ。この作品も、好き嫌いが綺麗に分かれると思うが、試しに読んでみてほしい。
軽く読み進めることができ、純粋に楽しめたら、彼の他の作品も読むべきだと思う。

次に読んでもらいたいのは、貴志祐介「青の炎」である。

完全犯罪を目論んだ少年を描いた作品である。
この作品に魅かれる理由は、少年の悲しみや憎しみの感情がかなりうまく描き出されているからである。
難しいテーマをここまで綺麗で鮮やかに描いている作品は他にない。

加速していく少年の恐ろしい犯罪と、その犯罪に至らせた悲しすぎる経緯まで、しっかりと描き出されている。
犯罪のトリックもたいへん凝ったものであった。

映画化され、映像となったが、ぜひこちらの原作を読んでから映画を見てもらいたい。
と、今回おススメしたいのはこの七冊である。

好き嫌いはきっぱりと分かれる作品ばかりなので、一度読んでみてもらいたい。

【文庫】 佐藤多佳子「黄色い目の魚」について

2006-02-08 01:52:05 | 
ついに名作「黄色い目の魚」が文庫化されます。
新潮文庫から発売されています。

解説に「高校生の時に読んでおきたかった」っとありますが、まさにその通り。

すごく青臭い作品でありながら、その鋭い心情描写には本当に感動してしまいます。

そのリアルな描写が一番胸に響くのは、中学生~高校生の人たちだと思います。

ぜひとも読んで欲しい一冊です。

そもそも僕がこの本(単行本の方)に出会ったのは、中学生の頃でした。

小説なんかまるで読まなかった僕が、引き付けられるように手にとってしまった本がこれでした。

爽やかな青春時代の美しい話なのかと思いきや、ドロドロした展開もあり、しかしそれを拭い去ってしまう綺麗すぎるラストには驚きました。

少年少女の細かい気持ちをそのまま切り取ったかのような歯がゆいストーリー展開と、短編集のような構成が一つに繋がっていく巧みさ。
本当に完成度の高い作品です。

話は男女二人の主人公のそれぞれの視点から語られていきます。
そして小学生から高校生まで、二人が駆け抜けてきた世界を細やかに描いています。

投げやりだけどどこか緻密な、そんな繊細すぎる青春のアルバムをどこまでもリアルに描いているトコロが憎いところです。

読んで絶対損はしない。

そんなお得な一冊です!!!

【文庫】 東野圭吾「秘密」について

2006-01-25 03:23:34 | 
予感めいたものなどなにひとつなかった・・・

そんな始まりの東野圭吾「秘密」を今回は紹介したいと思う。

今や直木賞作家としてその地位を不動のものとした東野圭吾だが、そんな彼の作品の中で一番の傑作がこの作品だ。

バスの転落事故・・・
娘に乗り移った妻の魂・・・

一見、ありきたりの物語のような展開を見せるが、そのラストには涙が止まらない・・・

まず、この作品で一番重要になるのが、この作品の題名「秘密」の正体である。

この秘密の真の意味を知ったとき、言い切れぬ感動が襲い掛かって来ることは間違いない。

予感めいたものなどなにひとつなかった・・・
そんな言葉で表現された、主人公のごく普通の幸せな生活は、冒頭のバスの転落事故で豹変する。

その事故で彼の妻は、娘を助けた代わりに帰らぬ人となってしまう。
しかし、娘が意識を取り戻したとき、彼女の体に宿っていたのは妻の直子だった・・・様

々な愛が交錯し、辿りつくエンディングの「愛」の形。

どこまでも深く、そして切ない・・・リアルに描かれる感情の裏に秘められた愛の姿に、時に傷つき、時に支えられ、時に涙する。

数奇な運命を辿っていく一人の男の元に訪れた奇跡は、彼をどこに導いていくのだろう。

それは天国でもあり、地獄でもあった。

不可解でファンタジックな現象の中に埋まる”リアル”にはまること間違いなし!

一体何だと言うのか?どうすればこんなに感動的な展開を生み出すことができると言うのか・・・

ただただ唖然としてしまった。

それは巧みに組み立てられたストーリー展開にも、主人公の揺れ動く心理状況であったり、何かに縋り付こうとする人間の弱さであったり、すごく大切な家族の形であったり、限りない愛で包まれた「秘密」の形であったり・・・

とにかくとてつもなく美しいものであった。

迷わずにこの本だけは読んでみて欲しい、途中で読むのをやめるなんてことなく最後までじっくりと。

必ずラストには感動が待っているはずだ。

鮮やかなラスト。
狂おしいまでの犠牲愛
奇跡が生んだ、最後の「山下公園」でのデート
くまのぬいぐるみ形見の古びた腕時計
7053=ナオコサン

すべてが繋がった時、秘密の扉が開くだろう。

そして、運命は、思いがけない結末に二人を導いて行く…。