( leave things ) up in the air

30代後半・既婚・ゲイ。仕事も家庭も人生も全てが中途半端な僕のろくでなしな日々。

蛾のごとく・後編

2006-12-29 | Weblog
Kさんの言うとおりだった。
僕はオトコのカラダが何より好きで、とてもそれなしではやっていけそうにない。認めるしかなかった。そのとおりだった。
でもそうしたのはKさん、あんただ。
僕のカラダをKさんなしではいられないようにしたのは、あんたじゃないか。

「・・あんたのせいだろ」
そう言うのがやっとだった。
「素質があったんだよ。おまえには。」
Kさんは平然と答える。
「オトコとセックスすべきだよ。おまえは。女とはできやしないさ、もう。」

ショックだった。
そこまで言うなんて。
反論したかった。
でも、言葉が見つからない。

車はいつしか海岸まで来ていた。
人気のない夜の海。
僕は車を降りる。

突然、後ろから抱きしめられる。
Kの匂い・・・。
跳ね返そうとしたけど、力が出ない。
「まさる・・・。俺のものになれよ!」
返事ができなかった。
Kが僕の口をキスで塞いだから。
僕は身を任せる。
わかっていたから。
Kと離れられない。
Kが何より欲しい。
街燈に吸い寄せられる蛾のようだ、僕は。

近くのモーテルから帰ったのは明け方。
着替えだけして出社した。

クリスマスは

2006-12-24 | Weblog
やっぱり家族を優先してしまう。
Kさんと一緒にいたくないわけではないけれど、
クリスマスってほんわか、あったかってイメージがあるので、
Kさんとの関係に合わないと思う。
Kさんはどう思っているのか。
前回までのつづきをまだ書いてないけれど、結局Kさんとは分かれることも振られることもできないでいる。
一線を越えるまではこんなことになるとは思ってもなかったけれど、Kさんといるときってやっぱり自分を性的なものとしてみられるスリルがある。まだ、こんな僕でも売り物になるんだ、みたいな。
家族といるときにはやすらぐ反面、もう男としては終わったような気分になる。
とっとと年貢を納めればいいのに、いつまでもぐずぐずしているようで。
さて、今年も残りわずか。どうする?

蛾のごとく・中編

2006-12-23 | Weblog
高速にのり、車は海のある方面にむけてひたすら走る。

130Km/hの車内で突然、Kさんが言う。
「もうやめたいの?」
なにもいえない僕。

「リスクを考えたら怖くなった?」
なにもいえない僕・・・。

「あったかいぬるま湯に戻りたくなった?」
なにもいえない僕・・・・・・・。

「退屈だけど何も心配のない日々に戻りたくなった?」
なにもいえない僕・・・・・・・・・・・・。



「戻れんの?」
どきっとする。
「カラダが退屈に耐えられる?」
はっとする。
「オナニーでごまかしきれるかなぁ?」
ああ・・。
「結局戻ってきちゃうんじゃないのかなぁ?」
僕は・・・。
「好きなんでしょう?オトコのカラダが。ヤリタイんでしょう?オトコと。」
やめてくれ・・・。
「ケツにチンポいれんのがなにより好きなんだろ?ザーメンだって飲んじゃうんだろ?」
Kさん・・・。
「もう一生味わえないぜ?平気なのかよ。」

蛾のごとく・前編

2006-12-17 | Weblog
「もしもし・・・」
「まさる、あれからメールもくれないんだもの。どうしたの?」
「・・・仕事忙しくて・・・」
とっさに嘘をつく。バレバレの。
「これからうちにこないか?」
「んー・・でも・・」
「外で会おうか」
「・・・」
「いいじゃん、少し話すだけだから」
結局断れず、誘われるままに僕はKさんとの待ち合わせ場所に行った。

Kさんが指定してきたのは近くの公園。
ハッテン行為も行われるところ。
理性とは逆に胸がどきどきしてくる。
まるで見ず知らずの人と待ち合わせている気分になる。
・・と、携帯が鳴る。
駐車場に行き、車に乗り込む。

「久しぶりじゃん。元気ないね。」
「・・・・」
「検査していろいろ考えちゃった?」
・・・相変わらずのスルドさ。何もいえない僕。
何も言わずに車を発進させるKさん。黙り込む僕。
何を話せばいいのかわからない。
夜更けの街を車は走る。
あてもなく。

検査を受けて

2006-12-12 | Weblog
検査の結果は陰性だったから良かったけれど、本当にこれからどうしたらいいんだろう。
やっぱり自分の立場ではリスキーな行為は避けたい。
というより避けなければいけないのだろう。

今まで浮かれていた罰なのか。
Kさんに会うのもこわい。
どんな顔して会えばいいのか。
どんな顔をしてしまうのか。

そんなにセックスが大事なのか?
そんなに快楽が欲しいのか?
自問自答する。
僕が大事にしなければならないもの。
僕が大事にしたいもの。
それはなに?

あんな想いまでして
まだしがみつくの?

潮時なのか
自分には無理だったのか
どうすればいい?

電話が鳴る。
時間は11時を過ぎている。
見なくても誰からかわかる。
出られない。
僕は・・・。

別れられるだろうか。
今までと同じか?罪悪感も乗り越えるはずじゃなかったのか?
気持ちが揺れる。
僕がすべきことはなに?

再び電話が鳴る。
どうしよう・・・。
「・・もしもし・・・」


検査を受ける・後編

2006-12-09 | Weblog
こうして検査を受けることになった僕。
できるだけ人目を避けたい。
お金かかってもいいからひっそりしたいといったらKさんが適当なところを予約してくれた。
予定を合わせてKさんと検査をしてくれる診療所へ。
予約時間を少し過ぎた頃、呼ばれる。

プライバシーを守るためらしく、イニシャルを聞かれる。
緊張する。隣にKさんがいるのに。
採血自体はたいしたことなく終了。
結果が出るまでの間、待たされることになった。

Kさんを見る余裕がない。
もし感染していたら・・・。
今までセックスした人たちの顔が浮かぶ。
僕のケツを犯した男たち・・・。
激しいアナルセックス・・・・。
フェラ・・・
ディープキス・・・。
なんで気のおもむくままにしてしまったんだろう。
そして家族の顔が浮かんでくる。
もし・・・
感染していたら・・・
罰として背負って生きていけるだろうか。
僕は・・・

「大丈夫?」
Kさんの声も頭に入らない。
お願いだから今は話しかけないで。
愚かな僕だけれど神様にお願いするくらいはさせてよ。

しばらくたってまたイニシャルで呼ばれる。
過去の性行為について聞かれる。
検査を受けた理由も聞かれた。
検査結果は陰性だった。

・・・良かった。
ほんとに、良かった。
Kさんも陰性だった。
良かった。

僕はKさんに疲れたから家に帰ると言った。
本当は陰性だったらお祝いをするはずだったのだけれど。
そんな気持ちになれなくなってしまった。
こんな気持ちになるなんて・・・。
僕は混乱していた。
「ゴメン、今日は帰るよ。疲れた。」
Kさんの返事も聞かずに僕は歩き出した。

検査を受ける・前編

2006-12-04 | Weblog
ある日の夜。
二人でインターネットを見ているとHIVの記事に行き当たった。
で、ふと思った。
僕達、大丈夫だろうか。
Kさんの過去はわからない。きっとケイケン豊富なんだろうな。上手だし。
僕も、リスキーなことはしている。
検査か?
受けたことないし、Kさんに検査しろっていうの?言いづらいし・・・。
Kさんともリスキーなセックスをしてしまっている。
万が一ってことも・・・
ゼロではないだろう。
ナマでされたときから、いやこの世界に足を踏み入れたときからわかってた。
いつかこの問題にぶち当たることを。

きっとそのときの僕は深刻な顔をしていたのだろう。
「検査・・・受けてみようか?」
「え、いや、その・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「一緒に検査に行こうよ!」
Kさんは言った。
検査・・・受けたことないよ。どうするんだろう。どうすればいいんだろう。
「大丈夫。俺やったことあるし。一緒に行こう!ね!まさる。」
勢いにおされてうなずく。
どうしよう。はじめてだよ。

不安な気持ちをかかえながら検査を受けることになってしまった。