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公平で公正な思考力を育む(日隅一雄さんのメディア・リテラシー講座)

2012年05月02日 | メディア

 

 政府や東電はパニックを恐れて情報を隠していたのではないか? そもそも、彼らも正確な情報を把握できていなかったのではないか? メディアの報道姿勢に問題があるのではないか?  ・・・ 311以降、政府や東電、専門家、そしてメディアにたいする私たちの信頼が大きく揺らいでいる。ということは、情報の受け手である私たち自身が、メディアが提供する情報をどのように評価し、どのような情報を選択して自らの判断と行動に活かしていくかが問われている。マスコミは信頼できないといいながら、知らないうちに自分たちの判断や行動がマスコミの報道や論調に影響されていることはないか? 自分の気に入ったメディアが大きく取り上げていることに関心を寄せ、ほとんど報道されない出来事は取るに足らないことだと思ってしまっていないか? 世の中の出来事を公平・公正な立場に立って考えたいと思うなら、少なくともメディアの報道や専門家の言説を批判的に読み解く術を身につけておくべきだろう。報道にたいして、まず自分の日常的な生活感覚をもとに率直な疑問をもつこと。そして、どのような前提や立場から情報が収集され編集されているのか、その結果、記事や映像が、どのような含意を含むものになっているのかを見抜くことである。その上で、自分自身にたいしても、何を根拠にして、どのような前提や立場に立って判断しようとしているのかを問うてみなくてはならない。

 一例をあげる。4月26日に東京地裁で小沢一郎元民主党代表の裁判で無罪判決が出た。これにたいする新聞やテレビの論調は「限りなくクロに近い灰色」とか「疑惑は残る」とするものが圧倒的に多い。街頭インタビューやアンケート調査でも同様の判断をしている人がほとんどである。その一方で「刑事裁判の良識をまもった」「八方美人的判決」といった評価や、検察審査会制度の問題点や検察による石川さんの調書のねつ造を問題視する意見もある。田代検事及びその上司が市民団体によって刑事告発されていることを、どれくらいの人が知っているだろう? (「健全な法治国家のために声を上げる市民の会」)だが、そういった動きは、小沢さんの国会での証人喚問や疑惑を説明する責任があるという圧倒的な意見の陰に隠れてしまっているようだ。

 「これまでもずっと疑惑があるといわれてきた人だから今回の件もクロに違いない」「政治家の金権体質の象徴、裏の権力者と言われてきた小沢さんは、法の目をかいくぐって裏で何をやっているか分からい」。そんな前提にとらわれているかぎり、検察庁が起訴しなかったり、検察審査会の強制起訴によって行われた裁判で無罪判決がでても、依然として「疑惑」は残る。「有罪」の証拠が出るまでは、とうてい納得できないということになる。先入見にとらわれていると、それに合わない目の前の事実さえ見えなくなることがある。いったん自らの前提を棚上げにして事実を吟味するのが公平な姿勢というものだ。

 ジャーナリストで弁護士の日隅一雄さんは、ご自身のブログの中で今回の判決を報じるNHK のニュースを取り上げて、この報道を読み解くための問題を読者にたいして出しておられる。

(引用開始)

2012/04/27

小沢さん無罪報道であなたのメディアリテラシー度をチェック!~ニュースをつくると自負するNHKを例に

【無罪判決 小沢氏違法認識と言えず】 というタイトルのニュース(※1)です。

※1 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120426/k10014745551000.html

NHKのニュースの本文(一部のみ引用)は、次のとおり。

【26日の判決で、東京地方裁判所の大善文男裁判長は、「元秘書らは、小沢元代表の巨額の資産や金の出どころが明らかになると、政治活動に不利益になると考えた」と指摘し、元秘書らが収支報告書にうその記載をしたことを認めました。

また、小沢元代表と元秘書らとの日頃の関係などから、「元代表は、4億円を記載しないことなどについて、報告を受けて了承していた」と認めました。

一方で、小沢元代表が元秘書らと共謀したかどうかについては、「共謀があったことを疑う、それなりの根拠はあるが、元代表が具体的な事情を知らなかった可能性があり、違法だと認識していたとは言えない」と指摘し、小沢元代表に無罪を言い渡しました。】

さて、上記部分、私がデスクなら、突き返したと思う。あまりにも、タイトルにふさわしくない内容だからだ。そして、実は、各局の報道も同じ誤りを足並みそろえて行っている。こうなると、誤りなのか、故意なのか、わからないが…。

どこがひどいのか、ニュースだけ読んでいてもわからないかもしれないので、判決要旨を新聞各紙で確認してほしい。ネットでも紹介されているが、一部省略されており、ヒントにならないものが多いようだ。

(引用終了)

 日隅さんは、その日のうちに「回答編」も書いておられるので、各自で参照していただきたい。裁判所による判決要旨も公開されているので、該当箇所を参照しながら日隅さんの回答が妥当かどうかをチェックされることをお勧めします。その後、日隅さんは、この裁判について、さらに詳しい説明を加えておられる。

2012/04/29

東京地裁判決は小沢さん無罪をこのように説明している~判決批判する前に読んでほしい!

「小沢さん無罪判決について、テレビは、「判決が、石川秘書から小沢さんが収支報告書に嘘の記載をすることの説明を受けていたと認定している」にもかかわらず、「判決が、この記載が違法であることについて認識していなかった可能性がある」としたのは、まったく変で、限りなく黒に近い、などと批判しているが、これがまったく間違いであることを、裁判所がマスコミに配布した判決要旨全文を引用して説明します。」

そして、憲法記念日を明日に控えた5月2日の今日、日隅一雄さんは【メディアリテラシー講座】の第2弾を出して、新たなテーマを提起しておられる。

憲法記念日の社説にアメリカの9条改憲要求は説明されるだろうか?

「米軍再編の見直しが行われたばかりのタイミングで迎える憲法記念日、自民党が改憲案を発表していることもあり、各紙は、社説で、安全保障問題に触れるだろう。その際、どういうところに注目する必要があると皆さんはお考えですか? 北のミサイル、中国の台頭、普天間基地の固定化…。私は、米国による9条改訂要求をきちんと踏まえたものとなっているかどうかに着目したい」

 安全保障問題やアメリカの9条愛犬要求といった日隅さんが提起されたテーマに関して新聞各紙がどのような論議をするか、私たちは、明日の朝、その結果を見ることができるだろう。それは、自分の予測や状況判断が正しかったかどうかについて喜んだり反省したりするようなことではない。各紙の出した結果を踏まえて新たな状況の展開に向けた模索を始める、その出発点に立つことになるのである。

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