東日本大震災の救援活動が進むなか、学校図書館関係者の間でも、さまざまな支援活動が行われるだろう。2004年10月の新潟中越地震のときには、阪神淡路大震災の経験をふまえて、現地の学校図書館を支援する大規模なボランティア活動が行われた。今回も、すでに、被災した子どもたちに本を届ける活動が始まったようだし、図書館関係者にかぎらず現地の非難所などに赴いて読み聞かせを行っている人たちもいると聞く。被害の少なかった学校では、新学期に向けて学校図書館の機能を回復するための支援活動も行われるだろう。
こうした被災地の子どもたちや学校図書館の支援とともに大切なことは、被災をまぬがれた学校における図書館活動であろう。東日本で起こったことを子どもたちが理解するのに役立つ知識と情報を提供することを通して、子どもたちが被災した地域や人々への共感を高め、自分たちにできることを考えるきっかけにもなるだろうし、地震、津波、原発にたいする認識を深めることは防災教育にもつながるだろう。また、災害時に役立つメディアや情報のリテラシーを身につけておくことも大切だ。災害が起こったあと、危機的状況を生き延びるためにも、適切な支援活動を行うためにも、可能なかぎり信頼できるメディアや情報を求め、それを手掛かりに的確な判断と行動ができることが必要だ。その他にも、さまざまな活動が考えられるが、3.11東日本大地震に関して何らかの取り組みを行っておられる学校図書館があれば、ぜひご連絡ください!
2005年1月初めに日本の学校図書館視察団がカナダのアルバータ州の学校を訪問したとき、Sir Charles Tupper Secondary Schoolの図書館では、その10日ほど前(2004年12月26日)にスマトラ島沖のインド洋で起こった震度9.3の地震にともなう津波の被害を取り上げた授業を行っていたそうだ。その時に生徒に配布された以下の3つの資料を私が訳したものが『カナダ・アメリカに見る学校図書館を中核とする教育の展開』(全国学校図書館協議会、2006, pp.50-53)に掲載されている。
【資料3】心的外傷を伴う出来事が起こったときの援助の方法:家族と友人のための資料
【資料4】災害時のTAO(TAOとは、中国の道教で「道」とか「道理」を意味する言葉だが、この資料では災害による喪失によって心的外傷を受けた子どもたちのケアに必要な3つの要素、時間(Time)、愛情(Affection)、楽観主義(Optimism)の頭文字の組み合わせと掛けている。)
【資料5】インド洋津波に関するデブリーフィング(デブリーフィングとは、災害時の体験や感情を話し合う心理療法のひとつのことである。)
カナダ・アメリカに見る学校図書館を中核とする教育の展開 | |
クリエーター情報なし | |
全国学校図書館協議会 |
今回の東日本大地震についても、アメリカの学校図書館に関するメーリングリストSchool Library Media & Network Communicationsで活発な情報交換が行われた。以下は、地震発生から4日後の3月15日までに提供された生徒・教師向けのネット上のリソースの一部である。
・「自然が闘いを挑む」地震と津波に関する児童生徒向けリソース
東京都葛飾区立本田中学校の本山明教諭は、新聞記事を読みあう、被災地が元気になれるプランをつくる授業、立命館宇治中学校の杉浦真理教諭は、チェーンメールやNPOホームページから情報への向き合い方を考える授業をされたそうです。