いま福島第一原発で起こっていることを私たちはどのように捉えて、これからの判断や行動につなげていけばよいのか。状況を的確に判断するには幅広い情報が必要だが、専門的な事柄については、その情報を読み解き、評価する手がかりも必要である。テレビに登場する専門家にたいして、私は昨日のブログで「人類の生存にもかかわる大問題を憂慮し、科学者・専門家としての責任をふまえて、私たちの安全を第一に考えた発言を望みたい」と書いた。この点で私が信頼を寄せる専門家の一人に小出裕章さん(京都大学原子炉実験所)がおられる。この数日間の小出さんの発言は、下記のサイトで知ることができる。
2011年3月12日
NPO法人「環境市民」のホームページに、メーリングリストへの小出さんの投稿が紹介されている。
2011年3月14日
2011年3月15日
2日ともFM797京都三条ラジオカフェが行っている震災特別番組のなかでの電話インタビュー。ここには京都精華大学の細川弘明さんも登場して、政府やテレビなどのマスメディアによってもたらされる情報にたいして私たちはどのような姿勢で臨めばいいかを考える手がかりを示してくださっている。とりわけ、人々の不安をあおらないという名目で意図的に語られているメッセージが見逃している視点や放射能の安全性に関する誤解を生む表現などを指摘しておられる。たとえば、放射線の人体への影響について即座に直接的な健康被害がないことを強調する一方で、今後、広範囲におよぶ可能性のある長期的な影響について触れないし、事故の規模についてもチェルノブイリとは比べ物にならないほど軽度だと強調するが予想される被害の程度については触れない。被ばく線量をレントゲンやCTスキャンと比較することがリスク選択の視点を無視した議論であることは、冷静に考えてみれば誰にもわかることだろう。
情報に振り回されないで、いま起こっていることを的確に受け止めるために、私たちは、まず自分が何のためにどのような情報を求めているのかを、自らの立ち位置や価値観とともに、はっきりさせておく必要があるだろう。その上で、多様なメディアから得られる情報を批判的に(片寄り、誇張、欠落などを)読み解くことが大切だ。人類の危機に直面している今こそ、私たち一人ひとりのメディアリテラシーが問われているのである。
【関連推奨サイト】
・広瀬隆「破局は避けられるかー福島原発事故の真相」ダイヤモンド社のビジネス情報サイトDiamond Online特別レポート(第140回、2011年3月16日)
・中尾ハジメ「科学にあざむかれた住民たち」(弘中奈都子,小椋美恵子編著『放射能の流れた町』阿吽社、1988より)、中尾ハジメ・ウェブサイト
また、今回の事故は起こるべくして起こったともいえる。その可能性については、原子力発電の原理を理解していれば誰でも想像できることで、これまでの原発を巡る議論でも繰り返し指摘されてきた。要するに核燃料を閉じ込めて冷却し続けることができれば問題はないのだが、スリーマイル島でもチェルノブイリでもそれができなかった。しかも昨年の6月には、福島第一原発の2号機でも発電機の故障で原子炉に冷却水を補給できずに水位が低下するという事故が起こっていた。このときは非常用のディーゼル発電機が起動して事なきをえたが、「結果が良ければすべて良し」としないで、この時の経験を活かしてさらに万全の対策が立てられなかったものだろうか。
以下は、2010年6月18日付、毎日新聞福島版の記事である。(この記事は、現在、ネット上からは削除されているので、安渓遊地さんのAnkei’s Active Homeから採った。)
福島第1原発:2号機トラブル 原子炉水位が低下 11年半ぶり自動停止 /福島
運転中の福島第1原発2号機(大熊町)が17日、発電機の故障で自動停止したトラブルは、原発を安全に停止するために必要な外部からの代替電力の供給が行えず、原子炉の水位が約2メートル低下する深刻な事態だった。東京電力は同日、県と原子力安全・保安院にトラブルを報告したが、復旧のめどは立っていない。
東電によると、同日午後2時50分ごろ、タービン建屋内の主発電機を制御する「界磁遮断機」が故障し、発電機とタービンが停止。タービンを回す蒸気の発生を止めるため、原子炉も停止した。原子炉本体に問題はなく、放射能漏れなど外部への影響はないという。同原発の自動停止は98年11月の3号機以来、約11年半ぶりだった。
原子炉が止まった場合、外部の送電線から発電所内の電力を供給するが、切り替え装置が機能せず、2号機全体が停電。このため、原子炉内に冷却水を給水するポンプが動かなくなった。十数分後に非常用のディーゼル発電機が起動し、代替ポンプで水位を回復させた。
水位の低下は炉心の燃料棒を露出させ、原発にとって最も危険な空だき状態を引き起こす恐れがある。原子炉は停止しても、停止直後の燃料棒には熱が残っているため、重大な事故になる可能性がある。今回も水位の低下が止まらなければ、緊急炉心冷却装置が作動していた。【関雄輔】
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福島第1原発:県、4町立ち入り調査--プルサーマルへ燃料健全性など /福島
毎日新聞 2010年6月18日 地方版
http://797podcast2.seesaa.net/article/190951839.html
小出裕章さんが、約30分間、京都三条ラジオカフェの電話インタビューに答えておられます。
http://www.ustream.tv/recorded/13489796
http://www.ustream.tv/recorded/13657716#utm_campaigne=synclickback&source=http://radiocafe.jp/&medium=13657716
http://www.ustream.tv/recorded/13787729#utm_campaigne=synclickback&source=deniedbyhost&medium=13787729
http://www.ustream.tv/recorded/13851905
http://hiroakikoide.wordpress.com/
http://797podcast2.seesaa.net/article/196636236.html
小出裕章、東京電力発表 事故収束への工程表をどう見るか。
http://797podcast2.seesaa.net/article/196636236.html