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ことばと学びと学校図書館etc.をめぐる足立正治の気まぐれなブログ

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『学校再発見!』に学ぶ

2006年11月01日 | 「学び」を考える

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 このところ、学力格差、いじめによる自殺、障害児の就学問題、高校の必修科目の未履修問題など、子どもや学校教育に関するさまざまな問題が一挙に噴き出し、学校、教師、教育委員会のあり方が問われている。おりしも国会では教育基本法改正案の審議が始まった。この時期に抜本的な学校教育の見直しが必要であることに異論はない。しかし、いま政府が行おうとしている「教育基本法改正」「全国一斉学力テストの実施」「学校評価制度や初等中等教育における学校バウチャー制度の導入」などは、教育の現状改善に直接的につながらないばかりか、それによって現状がますます悪化することも懸念される。国が法律で決めて教師が教え込み、誘導することで、子どもたちのなかに真に国や郷土を愛する心や態度が育つというのだろうか。子どもたちに建前と本音の使い分けを強いることにもなりかねない。また、競争原理や到達目標を設定した成果主義による学校評価を導入すれば、教師は効率よく結果を求めることに追われて、時間をかけて子どもの成長の過程を見守りながら、豊かな人間性を育てていく活動がおろそかになりかねない。全国一斉学力テストに取り入れられるというPISA型の思考力を問う問題も、得点を上げる指導をすることは可能だが、果たしてそれが子どもの成長にとって望ましいことであろうか。学校をますます受験志向に駆り立て、学ぶ意欲が高まるどころか、学ぶことの目的が見失われ、地域社会を分断し、子どもを孤立させ、学力格差を拡大することにもつながらないか。

 今、教育基本法を変えなければならない必然性は全くない。子どもや学校をめぐって現実に起こっている多岐にわたる問題に対処するために最優先しなければならないのは、学校の自律性と教職員の専門性を高め、地域と学校が協力して、子どもたちが共に生きている喜びを実感し、学ぶ意欲や動機が湧き上がってくるような教育が行われるための具体的な方策を考えることである。それには、まず学校の現実を知り、そのなかから学校教育に対する希望を見いだすことが大切である。岡崎勝著『学校再発見!』(2006、岩波書店)は、そのためにうってつけの一冊である。「子どもの生活の場をつくる」という副題が示すように、岡崎氏の視点は、現代の学校教育で決定的に不足している、コミュニケーションを通して学ぶ機会を保障していくこと、人と人とのつながりの中で学び合う環境をつくっていくことに向けられている。それはやがて、学校だけでなく家庭や地域社会も巻き込んだ学びの再生につながるだろう。最近、学校や子どもをめぐって暗いニュースが多いなかで、ホッとして元気が出る本である。

学校再発見!―子どもの生活の場をつくる

岩波書店

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