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第二回「学校図書館メディアの構成」に参加して(「司書教諭資格付与科目」授業実践共有シンポジウム)

2016年06月10日 | 「学び」を考える

 

 

二週間も前の話題で恐縮ですが、遅ればせながら報告させていただきます。

 先月末(5月28日)に行われた第二回「学校図書館メディアの構成」に参加した。自分がシンポジウムの企画にかかわっていなかったら、このテーマのために神戸から東京まで足を運ぶことはなかっただろう。いうまでもなくメディアの構成は図書館活動の核である。門外漢の自分は専門的な議論についていけないのではないか。それでも参加したいという魅力をこの科目に感じなかった、というのが正直なところである。そもそも図書館一般の議論には、一利用者として以上の関心がない。だが、この日のセッションで、そんな私の先入観は覆された。
 以下は、三人のパネリストのお話のなかから私が注目した部分を抽出して、まとめたものである。(実際に語られた記録は立教大学の”St. Paul’s Librarian”に掲載される予定なので、そちらをご参照ください)

 まず、吉田右子さんが、ご自身が所属しておられる筑波大学における教育実践の概要について、学部および講習における授業内容、授業方法、教材、さらにディスカッションやミニレポートのテーマとその扱い方などを、端的かつ明快に語ってくださった。この科目の全体像と教育方法を知ることができたことは、他の四科目と関連づけるための手がかりとなる。
 
つづいて、青山比呂乃さんは、千里国際学園におけるご自身の実践を紹介することで、学部の学生たちに学校図書館や司書教諭の役割と仕事を具体的に理解させようとしておられるという。一言でいえば「資料と利用者を結びつける」ということだが、これを青山さんは3つの観点から、それぞれ3つの要素、併せて9つの項目において捉えておられる。
 
まず、図書館の基本的な業務(サービス)として収集、整理、レファレンスを挙げ、これらの業務を遂行する過程で学校図書館専門職(司書や司書教諭)は、利用者を知る、資料を知る、情報リテラシーの育成を行うことが必要だ。総じて学校図書館メディアのコレクション(collection)は、コミュニケーション(communication)、カリキュラム(curriculum)とともに(3Cと呼ばれる)学校図書館活動の主たる要素を構成するというのである。
 
私は、十数年前の第一回のジャムセッションで千里国際学園の図書館を利用して資料探索をさせていただいたことがある。青山さんのお話を聞いていると、あのときの発見や気づきがよみがえってきて、実践の一貫性を再確認するとともに、語られる内容が深まりと広がりをもって伝わってきた。
 
三人目の中山美由紀さんのお話も、やはり実践に裏打ちされていて、具体的な事例をもとに授業を展開しておられる点で説得力がある。たとえば「選書から除籍まで」の一覧表は、実践者ならではの労作である。私は、かつて中山さんにいただいたこの表を「学校経営と学校図書館」の講習や授業で配布して、それぞれの作業過程を具体的に把握した上でマネジメントに活かしてほしいを伝えてきた。
 
また、中山さんは、コレクションの形成が提供の方法とも密接にかかわっていることから、「学校図書館メディアの構成」を「棚の作り方」や空間配置にまで広げてとらえようとしておられた。
 
三人のパネリストは共通して、分類の指導にあたっては、機械的に覚えさせるのではなく、何のために分類するのか、分類の意義や目的を分かって利用すること、利用をとおして理解を深めることを強調しておられた。
 
後半の質疑と討論では、件名や資料の配分比率も話題になった。
 
件名については、情報を絞り込むために使えることや、語彙指導と関連していることはわかるが、具体的に件名をどのように指導していくのかが知りたいところである。
 
資料の配分比率については、私は、かねてから「学校経営と学校図書館」の授業で取り上げてきた。実務者の直観だけでなく、数値を把握して、それがどのように形成されてきたものかを見なおし、具体的な資料と照合しながら経年的に観察・評価していくことでマネジメントに役立てることが必要ではないか。最後に、今回は話題に上らなかったが、学校図書館の予算(その請求と決定、執行のあり方)がコレクションの形成に影響していることも見逃せないだろう。限られた予算を学校図書館の目的を達成するために有効に活用するには、資料の購入計画と優先順位の決定、財産区分(消耗図書と資産図書の割合)などもふくめて、予算の立て方と執行方法に柔軟性をもたせ、その時々の現場の判断と裁量にゆだねられることが重要だろう。

 いま、こうして振り返ってみると、さまざまな問題が呼び起こされ、専門的な技術論に埋没することなく広く視点をひらく拡張性のある議論が展開されたという点で収穫が大きかった。さすがに研究や実践に裏打ちされた、専門家、専門職といわれる人の「目のつけどころ」は、生半可な知識の適用に頼ろうとする素人とは違う。

「これまで、図書館一般の議論を学校向けに適当にアレンジした程度のものだったこの科目を、全面的に学校図書館向けに再構成するべき」

 主催者の中村百合子さんには、そんな思いがあったそうだ。この日のセッションは、はたして「学校図書館の専門性」を確立するための一歩となったのだろうか。

 次回のシンポジウムは下記のとおりです。私は、もちろん参加します。

第3回:「読書と豊かな人間性」

日時:7月30日(土)13:15-16:00

発表予定:朝比奈大作、野口久美子、平井むつみ

場所:立教大学池袋キャンパス(7201教室)

 

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