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8月のはじめ、八ヶ岳麓にある甲斐大泉(現在は山梨県北杜市)に滞在していた私は、近くのたかね図書館(北杜市高根)に併設されている浅川伯教・巧兄弟記念資料館を訪れました。浅川兄弟はこの地の出身で、日韓併合の時代にあって朝鮮の文化を深く理解し、民衆レベルの日韓交流の礎を築いた人たちです。とりわけ朝鮮の民衆とともに生き、多くの人々に慕われた弟巧の生涯は、高崎宗司著『朝鮮の土となった日本人―浅川巧の生涯』(草風館)や小説・江宮隆之著『白磁の人』(河出書房新社)を通して知られています。資料館を一巡した後、図書館の入り口で私の目に留まったのは、一冊の本の帯に記された永六輔氏の短いコメントでした。
柳宗悦を知っている中学生がいたら脱帽したい。柳宗悦を支えた浅川巧の評伝を書いた中学生がいるなんて信じられない。この本は奇蹟だ!
椙村彩著『日韓交流のさきがけ 浅川巧』(揺藍社)と題するその本を手にとって奥付をみると、この本のもとになった『韓国の山と民芸を愛し、韓国人の心の中に生きた日本人―浅川巧』を完成させたのは2002年9月と記されてあり、たしかに著者が中学2年生の秋であったことが分かります。小学4年生のときに巧の話を聞いたことが、中学生になって2年生の夏の自由研究のテーマにしようと思ったきっかけになったといいます。『朝鮮の土となった日本人―浅川巧の生涯』や『白磁の人』などの文献を読んで「浅川巧研究ノート」を作成し、その著者たちに会ってインタビューをし、韓国にも赴いて見聞したことをもとにしてノートを完成したといいます。参考文献には、単行本だけでも11冊が挙げられていますが、さらに高崎宗司氏によれば、
圧巻はⅥ「浅川巧の眠る韓国を行く」のうちの「浅川巧を慕う人々」であろう。韓国旅行に同行した日本人の浅川巧に対する感想、韓国の陶芸家・博物館学芸員らの浅川巧に対する評価、在日韓国人の熱い思いなどが十数ページにわたって紹介されている。浅川巧研究に新しい資料を提供してくれたものと言えよう。(序p.5)
とあり、しっかりした調査方法にもとづく本格的な研究であることがうかがえます。
ちなみに、著者が在籍している山梨英和中学校高等学校では、中高6年間一貫教育のメリットを生かして「自由研究」を行っていて、中1から中2の間に生徒一人ひとりが調べたいと思ったテーマを決めて、調べを進める指導をされていることや、それに対する学校図書館の対応が「がんばっている学校図書館レポート」に紹介されています。一生のうちでもとりわけ知的探究心が旺盛になる中学生のときに、自分が関心を持っているテーマについて時間をかけて探究活動を行える環境を整えておくことは、子どもたちのその後の成長にとって大切ではないでしょうか。
著者の研究に学校図書館が実際にどのような役割を果たしたのかは分かりません。しかし、学校図書館が中心となって直接的に関与する部分は少なくても、その学校の教育活動のベースとして、ゆとりある学校文化を開花させ、児童生徒の自発的な学びや教師による創造的な授業が展開される土壌を形成しているとすれば、その機能を十分に果たしているといえるのではないでしょうか。ともすれば予定調和的な学びだけを追及する閉塞的な学校教育のなかに埋没しがちな学校図書館が、その存在意義を発揮できるのは、子どもたちの知的好奇心を刺激し、創造的な学びを誘発するところにあるのではないでしょうか。
最近、また、ひとりの中学生が、政治家にインタビューをして、長谷部尚子著『14歳からの政治』(ゴマブックス)を書きました。
そして、少し前のことになりますが、『四人はなぜ死んだか インターネットで追跡する毒入りカレー事件』(文藝春秋社)の著者三好万季さんも執筆当時中学3年生でした。
中3の夏休みの宿題で史上最年少受賞!15歳の少女がインターネットを駆使して見つけたあの和歌山毒入りカレー事件の「盲点」とは?選考委員こぞって激賞、皇后美智子さまと同時授賞。第60回文芸春秋読者賞。
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8月のはじめ、八ヶ岳麓にある甲斐大泉(現在は山梨県北杜市)に滞在していた私は、近くのたかね図書館(北杜市高根)に併設されている浅川伯教・巧兄弟記念資料館を訪れました。浅川兄弟はこの地の出身で、日韓併合の時代にあって朝鮮の文化を深く理解し、民衆レベルの日韓交流の礎を築いた人たちです。とりわけ朝鮮の民衆とともに生き、多くの人々に慕われた弟巧の生涯は、高崎宗司著『朝鮮の土となった日本人―浅川巧の生涯』(草風館)や小説・江宮隆之著『白磁の人』(河出書房新社)を通して知られています。資料館を一巡した後、図書館の入り口で私の目に留まったのは、一冊の本の帯に記された永六輔氏の短いコメントでした。
柳宗悦を知っている中学生がいたら脱帽したい。柳宗悦を支えた浅川巧の評伝を書いた中学生がいるなんて信じられない。この本は奇蹟だ!
椙村彩著『日韓交流のさきがけ 浅川巧』(揺藍社)と題するその本を手にとって奥付をみると、この本のもとになった『韓国の山と民芸を愛し、韓国人の心の中に生きた日本人―浅川巧』を完成させたのは2002年9月と記されてあり、たしかに著者が中学2年生の秋であったことが分かります。小学4年生のときに巧の話を聞いたことが、中学生になって2年生の夏の自由研究のテーマにしようと思ったきっかけになったといいます。『朝鮮の土となった日本人―浅川巧の生涯』や『白磁の人』などの文献を読んで「浅川巧研究ノート」を作成し、その著者たちに会ってインタビューをし、韓国にも赴いて見聞したことをもとにしてノートを完成したといいます。参考文献には、単行本だけでも11冊が挙げられていますが、さらに高崎宗司氏によれば、
圧巻はⅥ「浅川巧の眠る韓国を行く」のうちの「浅川巧を慕う人々」であろう。韓国旅行に同行した日本人の浅川巧に対する感想、韓国の陶芸家・博物館学芸員らの浅川巧に対する評価、在日韓国人の熱い思いなどが十数ページにわたって紹介されている。浅川巧研究に新しい資料を提供してくれたものと言えよう。(序p.5)
とあり、しっかりした調査方法にもとづく本格的な研究であることがうかがえます。
ちなみに、著者が在籍している山梨英和中学校高等学校では、中高6年間一貫教育のメリットを生かして「自由研究」を行っていて、中1から中2の間に生徒一人ひとりが調べたいと思ったテーマを決めて、調べを進める指導をされていることや、それに対する学校図書館の対応が「がんばっている学校図書館レポート」に紹介されています。一生のうちでもとりわけ知的探究心が旺盛になる中学生のときに、自分が関心を持っているテーマについて時間をかけて探究活動を行える環境を整えておくことは、子どもたちのその後の成長にとって大切ではないでしょうか。
著者の研究に学校図書館が実際にどのような役割を果たしたのかは分かりません。しかし、学校図書館が中心となって直接的に関与する部分は少なくても、その学校の教育活動のベースとして、ゆとりある学校文化を開花させ、児童生徒の自発的な学びや教師による創造的な授業が展開される土壌を形成しているとすれば、その機能を十分に果たしているといえるのではないでしょうか。ともすれば予定調和的な学びだけを追及する閉塞的な学校教育のなかに埋没しがちな学校図書館が、その存在意義を発揮できるのは、子どもたちの知的好奇心を刺激し、創造的な学びを誘発するところにあるのではないでしょうか。
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最近、また、ひとりの中学生が、政治家にインタビューをして、長谷部尚子著『14歳からの政治』(ゴマブックス)を書きました。
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そして、少し前のことになりますが、『四人はなぜ死んだか インターネットで追跡する毒入りカレー事件』(文藝春秋社)の著者三好万季さんも執筆当時中学3年生でした。
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中3の夏休みの宿題で史上最年少受賞!15歳の少女がインターネットを駆使して見つけたあの和歌山毒入りカレー事件の「盲点」とは?選考委員こぞって激賞、皇后美智子さまと同時授賞。第60回文芸春秋読者賞。
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