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それは八ヶ岳の麓、甲斐大泉(山梨県北杜市)にある金田一春彦記念図書館の奥にあった。この地に別荘をもっておられた金田一春彦さんが晩年に寄贈された蔵書約2万冊を保管してあるという。部屋は中央に大きな机があって広々としている。壁いっぱいの書架にびっしりと並べられた蔵書は専門書ばかりでなく多岐にわたる一般書もふくまれていて圧巻であった。この空間にしばらく身をおいていると、これまでに抱いていたイメージとはちがった金田一さんが見えてくるとともに、どこか懐かしい気持ちがこみ上げてくる。私自身が言語学を志した50年近く前の学生時代から近年に至るまでに何らかの形で触れたことのある本、自宅の書棚が狭くなっていつか処分してしまったことを後悔している本、今も書棚の片隅に残っている本などを発見して、どこか近親感をおぼえる。
だが、書架に鍵がかかっていて、ガラス戸越しに眺めるだけに終わってしまったのが残念である。もちろん頼めば開けてくださっただろうが、そうなれば少なくともその日は終日そこに閉じこもっていることになるだろう。一旅行者として旅の途中で訪れた私には、それほどの余裕はなく、この近代的な図書館全体の魅力を味わうだけでせいいっぱいであった。さすがに、資料館以外の開架スペースでも、辞書や辞典、言語に関する蔵書、言語関係の雑誌などが充実している。ここにも金田一さんの蔵書が多く含まれているらしい。明るく快適な館内でテーブルに好みの本や雑誌を数冊積み重ね、広々とした田園風景を眺めながら、ゆったりと過ごす時間は何ものにも代えがたい幸せである。
インターネットに接続されたコンピュータや夜間でも自由に本やビデオが借りられる自動貸出機も備わっている。
私が館内をめぐっているうちに、うちの奥さんがカウンターで何やらおしゃべりしていて、司書さんが二人がかりで対応してくださっている。あとで聞くと、この地で朴歯の下駄を作っている職人さんがいないか尋ねていたそうだが、利用案内に「身近な事柄や、簡単なしらべものについても、お気軽におたずねください」とあるのを知って、図書館が行う当然の情報サービスとして、一旅行者のこのような質問にも誠意を持って対応してくださっていたことに納得した。
神戸の自宅に帰ってきて、困ったことに気づいた。このすばらしい図書館のことをもっと知りたいと思ってインターネットでアクセスを試みたのだが、ホームページ(金田一春彦記念図書館)が見つかっても、どこから蔵書を検索すればいいか分からない。いくつかのキーワードを使って検索エンジンで調べた結果、北杜市の図書館全体の蔵書検索ができるサイト(北杜市の図書館)を発見した。が、「金田一春彦記念図書館」の魅力的な蔵書構成、まして「金田一春彦ことばの資料館」の蔵書を特定して調べることはできない。そういう調べ方をする人はほとんどいないだろうから実際には支障はないのかもしれない。だが、書名、著者名、件名を特定(=限定)しての検索しかできないのは不便だ。別途レファレンスをお願いすれば対応してくださるのかもしれないが、図書館や資料館を特定してフリーワードで調べられるようにしていただければありがたい。私にとって、図書館は、知っている本を手に入れることよりも、館内をブラウジングしながら、自分のニーズを満たし、知的好奇心を刺激してくれる未知の本に出会う楽しみのほうが大きい。ネット上でできるだけ、それに近い環境を提供することは、さほど難しいことではないと思う。きわめて贅沢で身勝手かもしれないが、自分のささやかな要求を満たすことができず、若干の不満が残った。
PS
そのあと、私は「たかね図書館」に向かったのだが、途中で道を間違えて、とんでもない方向に行ってしまった。そこで、たまたま出会ったお年寄りに道を尋ねたら、近くにある長坂図書館と「たかね図書館」への行き方を教えてくださっただけでなく、館内の様子まで詳しく教えてくださったことに驚いた。我が家の近くで図書館への道を尋ねられて、これほどまでに的確に教えられる人はどれくだいいるだろうか。この地で、図書館がコミュニティセンターの一部としての機能を確実に果たしているのを感じた経験であった。
金田一春彦記念図書館(元の名称は八ヶ岳大泉図書館)と金田一春彦ことばの資料館のことは、次の本にも紹介されている。
金田一春彦記念図書館
北杜市の図書館
言葉に関するレファレンス
いずみフレンドネット
金田一春彦記念図書館レポート
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それは八ヶ岳の麓、甲斐大泉(山梨県北杜市)にある金田一春彦記念図書館の奥にあった。この地に別荘をもっておられた金田一春彦さんが晩年に寄贈された蔵書約2万冊を保管してあるという。部屋は中央に大きな机があって広々としている。壁いっぱいの書架にびっしりと並べられた蔵書は専門書ばかりでなく多岐にわたる一般書もふくまれていて圧巻であった。この空間にしばらく身をおいていると、これまでに抱いていたイメージとはちがった金田一さんが見えてくるとともに、どこか懐かしい気持ちがこみ上げてくる。私自身が言語学を志した50年近く前の学生時代から近年に至るまでに何らかの形で触れたことのある本、自宅の書棚が狭くなっていつか処分してしまったことを後悔している本、今も書棚の片隅に残っている本などを発見して、どこか近親感をおぼえる。
だが、書架に鍵がかかっていて、ガラス戸越しに眺めるだけに終わってしまったのが残念である。もちろん頼めば開けてくださっただろうが、そうなれば少なくともその日は終日そこに閉じこもっていることになるだろう。一旅行者として旅の途中で訪れた私には、それほどの余裕はなく、この近代的な図書館全体の魅力を味わうだけでせいいっぱいであった。さすがに、資料館以外の開架スペースでも、辞書や辞典、言語に関する蔵書、言語関係の雑誌などが充実している。ここにも金田一さんの蔵書が多く含まれているらしい。明るく快適な館内でテーブルに好みの本や雑誌を数冊積み重ね、広々とした田園風景を眺めながら、ゆったりと過ごす時間は何ものにも代えがたい幸せである。
インターネットに接続されたコンピュータや夜間でも自由に本やビデオが借りられる自動貸出機も備わっている。
私が館内をめぐっているうちに、うちの奥さんがカウンターで何やらおしゃべりしていて、司書さんが二人がかりで対応してくださっている。あとで聞くと、この地で朴歯の下駄を作っている職人さんがいないか尋ねていたそうだが、利用案内に「身近な事柄や、簡単なしらべものについても、お気軽におたずねください」とあるのを知って、図書館が行う当然の情報サービスとして、一旅行者のこのような質問にも誠意を持って対応してくださっていたことに納得した。
神戸の自宅に帰ってきて、困ったことに気づいた。このすばらしい図書館のことをもっと知りたいと思ってインターネットでアクセスを試みたのだが、ホームページ(金田一春彦記念図書館)が見つかっても、どこから蔵書を検索すればいいか分からない。いくつかのキーワードを使って検索エンジンで調べた結果、北杜市の図書館全体の蔵書検索ができるサイト(北杜市の図書館)を発見した。が、「金田一春彦記念図書館」の魅力的な蔵書構成、まして「金田一春彦ことばの資料館」の蔵書を特定して調べることはできない。そういう調べ方をする人はほとんどいないだろうから実際には支障はないのかもしれない。だが、書名、著者名、件名を特定(=限定)しての検索しかできないのは不便だ。別途レファレンスをお願いすれば対応してくださるのかもしれないが、図書館や資料館を特定してフリーワードで調べられるようにしていただければありがたい。私にとって、図書館は、知っている本を手に入れることよりも、館内をブラウジングしながら、自分のニーズを満たし、知的好奇心を刺激してくれる未知の本に出会う楽しみのほうが大きい。ネット上でできるだけ、それに近い環境を提供することは、さほど難しいことではないと思う。きわめて贅沢で身勝手かもしれないが、自分のささやかな要求を満たすことができず、若干の不満が残った。
PS
そのあと、私は「たかね図書館」に向かったのだが、途中で道を間違えて、とんでもない方向に行ってしまった。そこで、たまたま出会ったお年寄りに道を尋ねたら、近くにある長坂図書館と「たかね図書館」への行き方を教えてくださっただけでなく、館内の様子まで詳しく教えてくださったことに驚いた。我が家の近くで図書館への道を尋ねられて、これほどまでに的確に教えられる人はどれくだいいるだろうか。この地で、図書館がコミュニティセンターの一部としての機能を確実に果たしているのを感じた経験であった。
金田一春彦記念図書館(元の名称は八ヶ岳大泉図書館)と金田一春彦ことばの資料館のことは、次の本にも紹介されている。
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