地理バカ日誌 ☆*:. 地図の園 .:*☆

地理ネタ、地図ネタなど、いろいろ気ままに書いています。

             by まつおか秘密研究所

地形陰影(陰影起伏)図について

2020-01-30 20:33:00 | 学問
 センター試験ネタはちょっと置いておいて・・・とは言いつつ、そのセンター試験の出題でも最近は定番となってきた数値標高データに関連して思いついたことなのですが。

 今年の試験でいうと、地理Aでは第5問、地理Bでは第6問の問2(共通問題)で使われていました。 等高線を読める者から見たら、こんなの“サービス問題”でしょ?という感じですが、その等高線を読むというのがなかなか一般には厄介なのでしょう。 なぜ読めないのか、どうすれば読めるようになるのか・・と常々思っているのですが、私が日々相手をしている社会科の教職課程の学生さんたちだと、試験で簡単な地形判読(一次谷の分水界を線引きする程度)を出題しても、正答率はいいとこ1割。 授業では、おそらく小学校や中学校で扱うのよりも丁寧に(最近はほとんど教えない教員も多いようですが)、あれこれ工夫をしながら説明をしているのですが・・・・

 センター試験で出されたような鳥瞰図(3D地図)を使うこともありますが、ただしそれだと2次元のフツーの地形図から姿が大きく離れてしまうので、陰影起伏図を使うことが多くなります。 最近はQGISなど、フリーソフトでも陰影起伏を解析する機能が備わっていますし、(株)エコリスさんが提供されている「基盤地図情報 標高DEMデータ変換ツール」のように手軽なツールもあり、準備作業が楽になりました。

 その陰影起伏図を、私が自分で初めて作ったのはもう20年以上も前の学生の頃で、当時は大学の研究室に数ライセンス導入されていたArcView3.xを使っていましたが、最初に不思議に思ったのは陰影起伏解析時の「光源方位」の設定がなぜ「315°」(デフォルトで)なのか?というところ。 これ、なにせ、北半球ではあり得ませんから。

 試しに180°反対側に光源方位を設定してみて、すぐに理由はわかったのですが・・・・・凸に見えなければならない山地・丘陵地が凹んで見える!!ってことで。 そのすぐ後で、他大学から地図学の講義に来られた先生から、たまたまこの話についておうかがいすることができたのですが・・・・経験的に、多くの人が315°で設定したときに最も起伏を読み取りやすいと知られているから、とのこと。

 それからずっと、デフォルトの315°でしか作ってこなかったですが、ふとこの話を思い出しまして、試しに光源方位を変えて陰影起伏図を作ってみました。 すると、今は「180°反対側」の135°に設定した陰影起伏図でも、まったく凹んでは見えないのですが・・・・・なぜなんだろう??

  マップ075  光源方位315°
 
 ※ 図の上が北側

  マップ076  光源方位135°
 

  マップ077  光源方位180° (真南から)
 

2020年・センター地理 ④

2020-01-27 22:01:32 | 学問
 一昨日からの勢い(?)にまかせて、今回も2020年度・地理B、「第4問・問3」から。

 

 問題文(一部改変)は、
 東南アジアとオセアニアで行われているプランテーション農業の作物やその加工品は、いくつかの国の特徴的な輸出産品となっている。 図中のカ~クは、東南アジアとオセアニアにおけるコプラ油(*)、サトウキビ、茶のいずれかの生産品について、世界に占める割合を国・地域別に示したものである。 カ~クの品目名は?

 * ココヤシの果実の胚乳を乾燥させたコプラから得られる油。

 ・・というもの。

 これは、もしかしたら、受験生から見るとちょっと難しい?

 まず、図の表現方法としては、一昨日投稿した「第2問・問4」と同様。 ただし、「第2問・問4」は世界全図だったのに対し、この問いでは東南アジアとオセアニアに範囲が限定されています。

 なので、やたら大きい円シンボル(フィリピンは40%前後、インドネシアは30%前後か?)が並んでいる「カ」の生産品は、世界全体のなかでのこの地域のシェアがとても大きいものだと解る。 三つの生産品のなかでいうと、「コプラ油」が該当。 コプラは、フィリピンとインドネシアだけで、二国あわせて70%超が生産されています。

 しかし、そこまで抑えている受験生は少ないでしょうか。

 コプラについて知らなくとも、サトウキビの場合は、ブラジルが40%超(関連事項としてサトウキビからつくるバイオエタノールの話なんかも教科書に紹介されているのでは?)、インドが約20%なので、「カ」のようにはなるはずがない。 お茶についても、中国が約40%、インドが20%超なので、同様。

 サトウキビと茶の区別は難しいかもしれませんが、お茶はベトナムやインドネシアも比較的生産量が多いこと、またサトウキビに比べると生産地域が偏る傾向があることを考慮すると、「ク=茶」、「キ=サトウキビ」かな?


またまたセンター試験ネタ

2020-01-26 09:48:56 | 学問
 今回も、前回からの流れで、大学入試センター試験ネタ、2020年度・地理Bの「第3問・問6」から。
 第3問は私の得意な都市地理分野で、問1なんかも面白いテーマとは思いますが、地図の画的には面白味に欠けるので、またいずれ気が向いたら記事にしようかと。

 で、問6のこの図。

 

 パッと見で宇都宮市だと気づきましたが・・・宇都宮あたりの受験生も気づいたりしたのでしょうか?

 問題文(一部改変)は、
 都市が成長するにつれて、都市内部では機能が分化し、人口構成にも差異が生じる。 図は、人口50万人規模の日本のある県庁所在都市について、その概要と、いくつかの人口に関する指標をメッシュで示したものであり、サ~スは、総人口に占める居住期間が5年未満の人口(*)割合、総世帯数に占める核家族世帯割合および第1次産業就業者世帯割合のいずれかである。 サ~スの指標名は?
 * 出生時からの居住者は含まない。
 ・・・というもの。

 「人口50万人規模で県庁所在地」でもって、「都市の概要」の地図を見ると、市域の全周で主要道路が外へ突き出ていますから内陸の都市だとわかり、宇都宮市しかない。 私は、環状になった道路網の形状に見覚えがあったので、パッと見でそう思ったのですが。
 宇都宮だとわからなくても、県庁所在地で50万人規模の都市がどんなかイメージできるかどうか、もうちょっと言うと、環状の道路網から、この都市の中心部がこの地域のなかで高い中心性を持っている(大都市の衛星都市などではない)ことをイメージできるかどうかがポイント。 もちろん、この都市の中心がどのあたりか?というのも前提になりますが(環状道路の中心、最高地価点のあるところが都心部)。

 でもって、「サ」→「シ」→「ス」の順に、割合の高いエリア(「高位」メッシュ)が都心部から周辺部(郊外)へと移っているのが読み取れます。 「シ」と「ス」の違いは判断つけづらいかもしれませんが、「低位」のメッシュに注目すると「ス」の方が都心部あたりでの拡がり具合が大きいので判別できるかと。

 一方、3つの指標が意味するところは・・・
 「居住期間が5年未満の人口割合」は、これが高いということは、転入者が多い地域だということ。 もうちょっと言うと、最近、宅地化が進んでいる地域か、賃貸住宅が多くて転入転出の頻度が高いような地域。 ただし、郊外に新たに宅地が開発されて人口が増えるような動きは、50万人程度の都市だと以前に比べると低調になっているはずで、「高位」のメッシュはどちらかというと学生や若い単身者向けの賃貸住宅(賃貸のアパートやマンション)も多い都心部に近いエリアにあらわれるはず。 という風に考えると、「サ」がこれにあたることが解ります。

 「核家族世帯割合」は、持ち家に住むことも多いですが、地価が相対的に低い周辺の住宅地で高くなる。 また、「第1次産業就業者世帯割合」の「第1次産業」はここでは農業と考えて差し支えないですが、農地の近くに居を構えることが多いので、さらに周辺部に「高位」があらわれるはず。 と考えると、「シ=核家族世帯割合」、「ス=第1次産業就業者世帯割合」ということに。


 ところで、宇都宮周辺の受験生は、この都市が宇都宮市だと気づいたのかな? そうすると、土地勘があって解答上有利になったりしたのでしょうか。
 上記の通り、宇都宮とわかる必要は無く、「50万人規模の都市がどんなかイメージできるかどうか」というのが重要なポイントだと思いますが、

 そもそも、どれくらいの受験生がそれをできるのか・・・

 というのも、私が日々相手にしている大学生たちについて言うと、自分の出身地(市町村)の人口を概ね正しく知っている者の割合は3割台です。 過去、数千人分、簡単なアンケートをした結果なのですが、酷い場合だと「大阪市の人口が5000万人」だとか、逆に「1万人」なんていうことも(そのような回答は複数あります)。

センター試験ネタでⅡ

2020-01-25 16:21:56 | 学問
 続いては、2020年度・地理Bの「第2問・問4」から、下の図。

 

 問題の難易度としては、かなり易しい方?

 問題文(一部改変)は、
 図中のカ~クは、米の生産量、輸出量、輸入量のいずれかについて、上位12か国・地域とそれらが世界全体に占める割合を示したものである。 カ~クは、それぞれ何を表しているか?
 ・・というもの。

 私が受験生の頃は、コメの貿易といえば、「輸出はタイがダントツで一位(でもって、アメリカが実は二位なんだよ!)」というのが頭に入れておくべき必須事項という風でしたが、最近はインドが一位で、ベトナムとタイが二位争いをやっている感じでしょうか。 それを知っていれば「キ=輸出」とすぐ解かるところでしょうか。

 もっとも、そうじゃなくとも、コメがどういうところで生産されるか(コメはもともと熱帯から亜熱帯の植物で、比較的湿潤な気候である必要性)くらいはザックリでも知っているだろうから、それで十分正解は導けるという問題。

 まず、「カ」は、中東諸国やシンガポールに●がついているところに注目。 中東のような乾燥地域傾向の地域や、湿潤でも国土の狭いシンガポールでコメを世界上位に入るくらいに輸出できるほど生産しているとは思えないので、「輸入」だと直ぐわかる。

 「キ」は、生産量だとしたら、国土面積が広い中国の値が小さすぎ・・・・ということで、「キ=輸出量」で「ク=生産量」。


 ところで、今回この図をとりあげたのは、わざわざこんなことを書くためではなくて、図の表現法に注目したから。

 統計地図は、そこに表現するデータの形から大きく「絶対分布図」と「相対分布図」に分けられますが、両者の違いは第一義的にはデータを何らかの形で相対化して集計地域(国や都道府県など)の面積の違いによる量の影響を排除できているかどうか。 人口密度(人口を面積に対して相対化)とか構成割合(内訳の量を全体の量に対して相対化)、変化率(変化量を変化前の量に対して相対化)など。 この場合も単位は「%」なので相対化してはいますが、それだけで相対分布図だと捉えるのは早計で、元の数量のまま表現しても基本的に図の姿は変わらない。 ただ、世界全体の量に対する構成割合にすることで標準化され、異なるデータ(生産量、輸出量、輸入量)の間での比較がしやすくなる(そのあらわれとして凡例を共通化できる)わけですね。

久しぶりにセンター試験ネタで

2020-01-25 09:30:40 | 学問
 今回は、先日行われた2020年度・大学入試センター試験の「地理B」で出題された主題図から。
 ところで、センター試験は今回が最後、次回からどんな形になるのか・・・・ということで、その移行的な意味で教科によっては従来と少々傾向が異なる出題がされたり、との報道も耳にしましたが、地理についてはどうだったのでしょう?

 私は、ちょうどセンター試験が始まったタイミングで大学受験を経験した世代ですが、そのときも共通一次に比べると実施時期が早まるとか、出題傾向が変わるかも、だとかいろいろ言われましたが。 そんな私から見ると、長期的には、地理の出題傾向もだんだん変わってきてて、ざっくりした基礎知識で十分であって、あとは地図や資料の読解力、論理的な思考力(推論力)がある程度あれば高得点できるという、本来的な好ましい姿になっているように感じているのですが・・・・

 前置きはこれくらいにして、今回は地理Bの「第1問・問6」から、下の図。



 問題文(一部改変)は、
 自然災害の種類やその発生頻度は、各地域の自然環境の特徴や生活と密接に結びついている。 図は、いくつかの自然災害(*)について、南北アメリカにおける2008~2017年の発生数(**)を国別に示したものであり、タ~ツは、地震、森林火災、熱帯低気圧のいずれかである。 タ~ツはそれぞれどの災害について表したものか?

 * 死者10名以上、被災者100名以上、非常事態宣言の発令、国際援助の要請のいずれか一つ以上をもたらしたもの
 **一つの災害が複数の国に被害をもたらした場合は、それぞれの国に発生数が加算される

 ・・・というもの。

 受験生一般には、こういうの、どう見るのでしょう?
 「森林火災の件数なんて、教科書に載ってないよ・・・」とか、思ってしまったりするのでしょうか。 もちろん、この解答のために、そんな情報を細かく知っている必要はありません。

 ところで、画的には、円シンボルのサイズがちょっとデカいでしょ!?と思ってしまいますが、3枚セットなので成り立つという感じか。 その円シンボル、凡例をちゃんと見なければなりません。 サイズが統一されていません。 つまり、災害によって、単位期間(今回は2008~2017年の10年間)における発生頻度が違うということ。 こういう部分もちゃんと読み取る必要がありますし、またそこに意識が向けば、これだけである程度見えてくる部分もある。

 「タ」だと、最大値はメキシコで30回くらい? 「チ」は最大で十数回と見ておけば良いでしょうか。 「ツ」は凡例の最大シンボル(6回)よりは多そうにも見えるけど、メキシコとかペルーで7~8回といったところ? そうすると、10年間とはいえ、死者が10名以上も出たりするような地震が「30回」なんて頻度で起きたんじゃあ、たまったものじゃない。 だから「タ」が「地震」というようなことは、まず考えにくい。

 それから、そもそも3つの災害のうち、森林火災は、一件が及ぼす範囲が格段に狭いですよね。 地震や熱帯低気圧(台風など、この問いの場合はハリケーン)は、一件の発生で、複数の国に影響が及ぶことは多い。 中米のカリブ海あたりには面積が小さい国がたくさんありますから、そこでこれらが発生すると軒並み影響を受けることになる。 加えて、熱帯低気圧は毎年起きますから(地震については、幸運にも大きなのは無い年もある)・・・・なんてことも思い浮かべられるかどうか。

 ・・・と考えただけでも、「タ=熱帯低気圧」、「チ=森林火災」、「ツ=地震」とは見えるのだけど、まだちょっと論拠が弱いか・・・

 ハリケーンは、夏、海水が日射で温められて発生するわけで、そうすると中米、カリブ海からアメリカにかけて影響が大きくなるわけですし(つまりは「タ」の分布と一致)、 森林火災は、乾燥度が高いと起きやすいこと、それからこれ大事なポイントですが、国土面積が広いほど発生回数は多くなりやすい(これ、当たり前のことなのだけど、図からそこまで考えを至らせること、生徒さん、学生さん、一般になかなかできないですよね)のでアメリカとかで多くなる(つまり「チ」と一致)、 地震については変動帯(≒新期造山帯)の分布と関連が深いので(つまり「ツ」と一致)。

 さらに補足すると、森林火災の場合は、森林の近くに街があるかどうか(人的被害が出やすいかどうか)も、この問いの場合には関係あるので、ブラジルの熱帯雨林の場合は、乾燥度が低いのでそもそも発生しにくいが、したとして人口密度が低いのでこの問いの「回数」にはカウントされにくいということに。